訪問日:2021-05-19,20

 

 

鳴子周辺は優れた源泉が数多く(九種類四百本)、小さな温泉街が散在して宿選びもなかなかの苦労を伴います。
ただその多くは湯治主体で、お湯そのものを楽しむには良いが部屋の居心地や眺望、食事内容となると中々バランスの取れた施設に巡り合えません。


そんな中で多くの温泉ファンに評判の宿がこの「山ふところの宿みやま」です。
やはり前身は湯治宿ですが、その一部をご主人が建築家の本間至氏と構想を練ること4年、「ふるさと快適感響」をコンセプトに、1996年に「雛には稀」なデザイナーズ旅館に生まれ変わりました。(HPより抜粋)
しかし昔ながらの湯治部もしっかりと存続させ、衣食住ならぬ湯食住もバランスの取れた経営を存続されています。


ただ画像と拙文だけでこの宿の魅力をお伝えするのは難しいかもしれません。その理由は、この宿最大の魅力がご主人ご夫婦の接待にあるからなのです。

 

木々に囲まれて

 

外観はご主人の住まいの茅葺屋根の古民家(登録有形文化財)に一般民家風の建物が並ぶ、知らなければ温泉宿とは気づかないような佇まい。

 

茅葺屋根の館主宅と宿入口


しかし中に入って別館に向かう廊下からイメージが一変し、センスの良いデザイナーズ旅館のそれへと変貌します。
デザイナーズ旅館とはいっても箱根伊豆辺りに多い形だけの施設とは異なり、本当に宿泊客が落ち着ける控えめな、それでいて並々ならぬ設計者の意図が感じられる内装となっています。

客室構成は本館(湯治部)五室、「金山杉の別館」五室ですが、「家族経営で手の届く範囲で」と全部で三組の予約が入れば満室にしてしまうとか。

 

二階の意匠

 

別館ラウンジ

 

ラウンジからの景色

 

小窓もお洒落

 

二階ウッドデッキ


今回の部屋は別館二階、窓からは山がかった林と倉庫の廃屋が望まれ、それがまた何とも良い雰囲気を醸し出しています。
一日目は雨、二日目は晴天でしたがどちらの天候もしっくりとする落ち着く空間です。

 

二階客室

 

広縁

 

窓から

 

窓から


風呂は木造りの小さ目なもので、鳴子では珍しいモール泉がかけ流しされています。
泉質は単純泉(低張性弱アルカリ性高温泉)43.9度、pH8.0。どこも高温泉の鳴子にあって、39度の使用温度を保っているのはぬる湯ファンには嬉しいところです。

 

浴室


そして別室でいただく食事が素晴らしい。
多くは宮城の山の幸を使った郷土料理をセンス良くアレンジしたもので、きらびやかな豪華食材を使った旅館料理に食傷気味の年配者には喜ばれる内容でしょう。
なかなかこうした旅館料理を提供する施設は少なく、想起されるのは大鹿村「右馬乃丞(うまのじょう)」、佐野「梅庵」、鹿教湯「三水館」、廃業してしまった大町温泉「あずみ野河昌」くらいでしょうか。

 

筍と小女子の煮つけ・空也豆腐

ほや酢の物・ブルーベリー酒

 

岩魚田楽

 

大根餅

 

鶏饅頭


地酒も取りそろえ、今回は栗原市綿屋(わたや)特別純米酒(左)。控えめながら旨味の強い酒です。

 

綿屋(わたや)特別純米酒(左)

 

山菜天婦羅

こしあぶら・たらの芽・山独活の芽・こごみ・干し柿

 

だらだらお酒を飲んでいると、追加の酒菜をもってきていただきました。

これが旨くてまたお酒を追加w

 

こごみ砂糖醤油煮

 

蕨お浸し

 

おむすび・饅頭麩の汁物・香の物

 

晩柑ゼリー


朝食も地味ながら充分満足のいく内容です。

 

朝食膳

 

施設・お湯・食事とも文句のつけようがない内容ですが、先述したようにこちらで特に素晴らしいのは何と言ってもご主人夫婦のお人柄。
つかず離れず、客目線で何とか「ゆっくりしてもらおう、楽しんでもらおう」という気持ちが伝わってくる接待です。
「仏作って魂入れず」といった内容の、形ばかりのデザイナーズ旅館は数ありますが、こちらはしっかり魂の入った施設だと思います。

鳴子温泉郷川渡(かわたび)温泉「山ふところの宿みやま」公式HP
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