「寺山鉱泉」(立ち寄り)
 
訪問日:2007-03-07,08
 
 
今回は「今時こんな鄙びた宿があるのか」と驚くくらいの素朴な湯治宿をご紹介しましょう。
 
赤滝鉱泉へのアプローチは東北道 矢板I.C.から県道30号・56号を約15キロ、大きな土蔵の立ち並ぶ田園風景を見ながら山間部に差し掛かって「赤滝・小滝鉱泉」の看板を林道に入るとすぐに専用の駐車場に到着します。
「ここからは4WD車でなければ降りられません」とというサインを見ながら、なるほど急な坂を200メーターほど下ると目指す宿の赤い屋根が見えてきます。
宿は谷底の小さな平地に建っており、すぐ傍らには幅2,3メーターほどの清流が望まれます。

建物は江戸末期の物ということですが、同じ栃木の北温泉が当時の温泉旅館そのままの形で残っているのに対し、こちらはまるで農家そのもの。
あまり整頓もなされているとは言い難く、温泉のある農家に民泊させてもらう、といった趣です。
 
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木立の中に宿の赤い屋根が見えて来る
 
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赤滝鉱泉
 
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宿玄関
 
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鉱泉の由来
 
一般客は二階、湯治客は一階に宿泊するようで、当日はお爺さんと中年の女性が一人ずつ一階に滞在するのみ。
二階の造りは昔の湯治宿らしく、嘗ては中々凝った物であったろうとも思わせます。
廊下の木の手すりもそれらしい雰囲気ですが、今は雨戸の替りにサッシになってしまっています。
 
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館内1
 
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館内2
 
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部屋1
 
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部屋2
 
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部屋からの景色1
 
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部屋からの景色2
 
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部屋からの景色3
 
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部屋からの景色4
 
浴室は一つ、二,三人が入れば一杯になってしまう小さな物で、多客時は声を掛け合って順番に入るようです。
泉質は単純鉄泉15度、浴用加熱。
浴室の隣に大きな貯水槽があり、そこから浴槽に満たした鉱泉を五右衛門式で加熱します。
鉄鉱泉の常として、冷たいままでは透明ですが、暖まると赤く濁る私の好みの泉質。
 
燃料はいまだに薪を使用しており、宿に近付くと薪のいぶる懐かしい匂いが郷愁を誘います。
脱衣場には火鉢が置かれていました。
入浴は夜9時まで。
 
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浴室
 
宿は気さくな女将さんと娘さんが切り盛りしており、こんな山の中にいると独り言が多くなるのか、女将さんが階段を登る時に「一、二、一、二」と掛け声を掛けながら上がってきたり、いつも何か喋りながら仕事をしているのが面白い。
 
早速入浴してから庭を撮影がてら散歩していると、湯治客のおばさんが人懐こい飼い犬の「トラ」と遊んでいるのに遭遇。
燃料の薪を蓄えた小屋の周りでは数羽の山鳥が忙しく動き回っています。
 
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宿の前の祠
 
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燃料の薪が保存されている
 
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人懐こい「トラ」
 
食事はやはり湯治食。
地の物は蕗の薹の天麩羅くらいしかないのはちょっと寂しいですが、宿の雰囲気と川音が何よりのご馳走です
 
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夕食
 
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夜の館内
 
朝は6時から入浴可能。
川音で目覚めて早速一番風呂へ。
朝食も素朴な物ですが、夜中に珍しく飲まなかったので食欲旺盛、美味しく頂きました。
 
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朝食
 
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日向でくつろぐ湯治客
 
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遊びに来ていたお孫さんと女将さん
 
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自炊用炊事場
 
露天風呂もなく洒落た食事も供されない素朴な宿ですが、こんな宿に一泊して世俗を忘れるひと時を過ごすのもなかなか乙なものではないでしょうか。
 
HPなし、一泊二食七千円、チェックイン・アウトは随時
 
近くには「寺山鉱泉」「小滝鉱泉」があり、かつてはどちらも昔ながらの鄙びた湯治宿でした。
しかしアプローチ・ロケーションは申し分ないのですが、いずれも建物は新しくなってしまい、いささか風趣にかける外観になってしまったのは残念です。
 
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寺山鉱泉
 
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寺山鉱泉浴室
 
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小滝鉱泉
 
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寺山鉱泉近くの「一休」の石挽き十割蕎麦
 
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寺山鉱泉近くの道祖神
 
(矢板「赤滝鉱泉」了)