訪問日:2010-10-20,21
 
 
少なランプの宿として知られる青森県黒石の「青荷温泉」。
実は今回私としては、ここで胸を張ってご紹介できる宿ではありません。
しかし私の好みには合わないながら多くの人が満足してリピートもしているという事実から、宿の評価というものは人のよって千差万別あり、個人の好みで一概には否定・肯定しかねる好例としてここにご紹介することにしました。
 
ではど一体どこが好きになれないのか。
確かに風呂は素晴らしいし、施設・食事・雰囲気など総体的に見たら少なくとも平均点以上の宿なのですが、如何せんそのコンセプトが私の感性と全く相いれないものだったというのがその理由です。 
 
その詳細は最後にまとめて書くとして、まずは宿のご紹介を。
 
「青荷温泉」へは弘前から約30キロ、車なら1時間弱、公共機関利用なら黒石「道の駅・虹の都」から宿のシャトルバスが出ています。
ただし豪雪のため冬期間(12月1日~3月31日)は自家用車不可。
 
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宿への山道から望む「青荷温泉」(画面中央)
 
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茅葺きの残る宿入口
 
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ランプの灯った通路
 
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囲炉裏のあるラウンジ
 
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ランプ小屋
 
部屋は本館・離れの計32室。
秘湯宿としてはかなり大規模な宿と言えます。
今回は吊り橋を渡った離れへ宿泊です。
 
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吊り橋を渡って離れへ
 
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部屋
 
まずは一番新しい「滝の湯」へ。
露天内風呂とも滝を望む絶好のロケーションです。
泉質は単純温泉45.5度、掛け流し。
 
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滝の湯・内湯
 
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滝の湯・露天
そして混浴露天風呂。
なかなかの風情です。
 
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混浴露天
 
そして一番気にいった「健六の湯」。
総ヒバ造りで昔ながらの湯治場の風情が残ります。
 
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健六の湯1
 
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健六の湯2
 
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健六の湯3
夕食は広間で。
団体客が常にあるようで、ギュウギュウ詰めの大変な混雑です。
飲み物は自分でカウンターに買いに行くシステム。
料理は作り置きで冷めています。
 
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夕食
 
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夕食の様子
 
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朝の健六の湯
 
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御用の済んだランプ達
 
「え、どこが気に食わないの?なかなか良い宿じゃないか」と思われる方も多いかと思います。
では私が好きになれない理由とは?

①実は電気が通じている(2キロ上流のダムより供給)。
これは「ランプの宿の看板に偽りあり」と問われても仕方のないところでしょう。
部屋・廊下などはランプながら、非常灯・トイレの照明(しかもウォッシュレット)などは通夜点灯。
しかもドライヤーの使える洗面所も一か所あります。
但し宿の名誉のために加筆すれば、供給量は最低限で、もし各部屋にコンセントを設けて朝一斉にドライヤーを使用するようなことがあれば、すぐにブレーカーが落ちるということでした。
しかし部屋に蛍光灯位は設置できるはずで、実際電気が通じているのにランプのみで読書もできないような「我慢大会」状況は如何なものでしょう。
実際電気が通じた際、消防署の要請が強くて現状にせざるを得なかったといのが宿の弁なのですが・・・
 
②演出過多とサーヴィス不足
宿への道中、電柱全てに方言のメッセージが。
スタッフも全て方言で対応(それが少々鼻につく)する。
ツアー客受け入れが常態化しており、部屋も良いところはツアー客優先。
食事は修学旅行なみにギュウギュウ詰めの大広間で頂く。
ドリンクは順番を待って自分で買いに行かなければならないし、岩魚・天麩羅などももちろん冷たくなっている。
それに布団敷きはセルフサーヴィス、これらは不便さを理由にした人件費節約としか思えなません。
 
要するにこちらは「手軽にランプの秘湯の雰囲気が味わえる宿」であって、この日記でご紹介している岐阜「渡合温泉」や苗場「赤湯」などの真の「ランプの宿」とは似て非なるものと言えると思います。
しかしこうした宿がネットの口コミで高得点(じゃらんで5点満点中4.4点)を獲得するところが、現在の温泉ファンの嗜好の実態をあらわしているということでしょう。
コンセプトとしては、「ランプの宿」を売り物にしたテーマパーク温泉的な石川県の某旅館に類似したものを感じます。
 
しかしそうしたニーズが圧倒的多数ということは、この宿の経営方針が営業的には間違っていないことを示している訳で、私などの少数派が何を言おうが馬耳東風で一向に構わないということなのでしょう。
こうした事実は寂しいことですが、時代の流れとして受け入れるしかないのは残念な事実です。

私は二度と訪れることはないと思いますが、80年代から青森の湯治場で残った只二つのランプの宿(もう一つは廃湯になった「田代元湯」)の一つとして憧れていた宿だけに、現状は寂しくてなりません。
 
最後に美点を述べれば、屋外の川沿いにある「健六の湯」湯小屋の風情、深山の香り一杯のロケーションでしょうか。
 
 
(「青荷温泉」了)