訪問日:2011-06-29,30
 
 
山梨県の中央道・富士吉田線沿線には鹿留・法能・葭之池・明見・滝入・殿入など多くの小さな温泉宿が点在していますが、それらが温泉ファンの話題に登ることはほとんどありません。
その理由はそれらが低温泉であり、どの施設も加温・循環方式を採っているために、現在の源泉掛け流しが主流の温泉ブームのかやの外に置かれているということでしょう。
もちろん源泉掛け流しが最高なのに異論はありませんが、低温泉でも魅力ある泉質やロケーションを持ち、料理の美味しい宿を無視するのはもったいない話。
今回ご紹介する湯の沢温泉・渓山荘もそんな宿の一軒です。

こちらが全く話題に登らないのもやはり単純泉を加熱・循環・消毒という源泉ファンが忌み嫌う給湯方法を採用しているためで、確かに温泉そのものの魅力は乏しいと言わざるを得ません。
しかしこの宿には首都圏では稀な素晴らしいロケーション・眺望に美味しい料理という魅力があり、その欠点を補って余りあるものがあります。
どうか食わず嫌いにならず、こうした宿にも目を向けてみて頂きたいと思います。
 

中央道都留ICから富士吉田に向かう途中、東桂の市街地から並走する富士急行の踏切を越えると景色は一変してのどかな田園風景になります。
そこから更に車一台がやっとの細い道が崖下の川まで続いています。
その崖のそこかしこからは道にまで富士の湧水が溢れ、杉林の中には紫陽花(あじさい)が群生するという涼感満点のドライヴの終点が湯の沢温泉・渓山荘です。
周辺はもちろん、傍らを流れる柄杓流川(しゃくながれがわ)の先にも人家は皆無。
正真正銘の一軒宿です。

 
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宿への道・溢れる湧水1
 
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宿への道・溢れる湧水2
 
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宿への道・溢れる湧水3
 
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杉木立の中に宿が見えてくる
 
人懐こい猫に迎えられ、1998年に宿泊したのと同じ二階の角部屋「富士」へ案内されます。
当時は気さくな女将さんが切り盛りしていましたが、現在は娘さんと息子さんが跡を継いでいます。
こちらは片側に柄杓流川、正面に滝を望む絶好の眺望で、周辺はただ鬱蒼たる森林のみ。
窓の下には紫陽花が咲き乱れ、草木の間には蝶が舞って山鳥が鳴き、時には猿や狸も現れるという別天地です。
例年なら6月下旬から周辺で源氏蛍の乱舞が見られるということですが、今回残念ながら観賞することは叶いませんでした。
 
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宿玄関・猫がお出迎え
 
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「富士」の間
 
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部屋からの景色1
 
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部屋からの景色2
 
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部屋からの景色3
 
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部屋からの景色4
 
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周辺風景1・吊り橋と宿
 
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周辺風景2・柄杓流川
 
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周辺風景3・群生する紫陽花
 
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周辺風景4・蜻蛉
 
風呂は渓流に沿った趣ある岩風呂ですが、前述したように温泉そのものは加熱単純泉を循環したもので魅力に乏しいものです。
しかし川の流れと深い緑を眺めながらの入浴は何ともいえない風情があります。
終夜入浴可能。
 
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岩風呂
 
夕食は部屋に運ばれます。
宿の近くで栽培される山葵(わさび)がまるごと供され、鯉の洗いや鮎の塩焼き・山野草の天麩羅など地物を使った料理が順番に運ばれてきます。
 
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甲州ワイン・湯葉刺身・茶豆
 
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鯉の洗いと宿の近くで栽培する山葵
 
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鮎塩焼き
 
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鯉唐揚・甘酢餡かけ
 
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山野草天麩羅(雪の下・タラの芽・山椒・ササミ煎餅など)
 
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甲州牛すき焼き
 
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ご飯・鯉こく・香の物
 
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デザート
 
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朝食
 
朝の水気を含んだ木々の美しさはまた格別で、部屋からの眺望は見飽きることがありません。
朝食は自家製の鮎の甘露煮を中心としたものですが、これがまたあっさり味で美味。
五匹1,050円でお土産にできるということで、早速注文しました。
食後入浴して周辺を散歩しても、夏日とは思えない涼感ただよう環境に時間を忘れる思いです。
訪問は真夏でしたが、二ュースで首都圏の気温は30度を超えるという報道があり、去りがたい気分でこの別天地を後にしました。
 
 
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(湯の沢温泉「渓山荘」了)