訪問日:2007-05-30,31
 
 
毒沢鉱泉「神の湯」は老若男女の参拝が引きもきらない諏訪大社下社春宮裏の鬱蒼とした森林の脇を進み、人家の途切れた町外れの急坂を登りきった山中にあります。
市街地からそんなに離れてはいませんが、廻りに人家は一切なく、山鳥が鳴き深山幽谷の趣がある素晴しい立地です。
 
かつては金が産出されたため、村民が近寄らないようにと恐ろしげな命名がなされたこの温泉は、信玄の隠し湯の一つでもありました。
昭和9年になってこの宿の初代が医者に見離された子供を救おうとこの温泉をわかして療養させたところ完治、以来宿を開いて噂を聞いて訪れる人々に霊験あらたかなお湯を提供してきた、ということです。
 
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  宿外観      
 
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民芸調のロビー
 
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ロビーに祭らる祭壇と弁天様
 
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ロビーからは新緑が
 
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二階通路
 
整体士でもあった先代の時代は若干宗教がかった鄙びた田舎の湯治場、といった趣でしたが、四代目の当主が継いでからは少しずつ現代風にイメージチェンジし、2004年前には全面改装してモダンな湯治宿に生まれ変わりました。
館内は民芸調に、暗く狭かった浴場も別棟に大きな窓の開放感溢れるネオクラッシックな様相になり、静養目的や一般客にも充分対応できるようになりました。
 
一見マツケンを思わせる精悍な感じの現館主はまだ40代半ばで、薬剤師・鍼灸師・温泉療養指導士の資格を持ち、その宿造りや食事には「現代風な湯治のあり方」に対する並々ならぬ熱意とセンスをうかがわせます。
今回泊まったのは森林を望む新館の一室。
民芸調の六畳一間ですが、色調や照明も渋く、窓からの景色とあいまって落ち着いて滞在できます。
 
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新館客室
 
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宿泊棟(新館)外観
 
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部屋からの景色
 
風呂は渡り廊下を渡って大きな木造の別棟にあり、男女別の浴室は大きな窓と木を組んだ古風な造りで、これも深い森林を眺めながらゆっくりと温泉を楽しむことができます。

泉質は含鉄(アルミニウム)硫酸塩令鉱泉10度、源泉槽もあり、飲泉所も設けられています。
沸かし湯は若干熱めですが、源泉と交互に入浴を繰り返せば何度でも入浴が可能。
またこの源泉は昭和12年に鉱泉としては長野で初の売薬許可をとった(現在自然湧出物の許可制度は廃止)という優れもの。
味はレモンを絞ったような柑橘系です。
 
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浴場外観
 
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浴場入り口
 
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浴場
 
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浴場からの景色
 
食事は一階の食事処で頂きます。
まず夕食ですが、大きなざるに盛られた品々は野菜と魚中心で、いずれも薄味の湯治食。しかし素材や味付け、彩りも巧みでここにも館主のセンスが感じられます。
 
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夕食膳
 
 
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食前酒と煮物
 
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岩魚甘露煮と前菜
 
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ピーナッツ豆腐、里芋饅頭、うなぎ肝煮
 
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スモークサーモンとオニオンスライス、山菜炒め煮
 
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蕎麦の実卵とじと鮭の鍋
 
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地酒「真澄」純米吟醸
 
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漬物が美味
 
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夜中にやってきたムササビ
 
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食事処と朝食
 
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朝食
 
やはりこの宿で目につくのはそこかしこに祭られた神仏像です。
弁天様や竜神様は水の関係の神様なので納得ですが、観音様から蘇民将来まで、歯に衣を着せずに言えば節操がないという気もしますが、本来日本の民間信仰は神仏混合で状況に応じて適応した対象を拝む、といった信仰体系が伝授されてきました。

医療の完全でない時代、不治の病に侵された人々は薬草や温泉に頼りつつ、神仏にすがって治癒を祈るしか方法はなかったということでしょう。
 
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ロビーの祭壇
 
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ロビーの弁天様
 
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蘇民将来
 
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浴場入り口の観音様
 
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敷地の最奥に祭られた竜神様
 
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販売用の源泉ペットボトル
 
験あらたかな諏訪大社奥の仙境という立地で効能優れた霊湯に使っていると、体の内側から浄化されるような思いがします。
と時には世俗から離れ、雑念を払って「神宿る秘湯」で体や心の病、ストレスを拭い去る時間を持つのは如何でしょうか?
 
 
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諏訪大社春宮1
 
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諏訪大社春宮2
 
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諏訪大社春宮3
 
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諏訪大社春宮4
 
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老舗の菓子店「新鶴」
 
  (毒沢鉱泉「神の湯」了)
 
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