9月20日は時代小説作家・白石一郎の命日です。
白石一郎:1931年(昭和6年)11月9日 - 2004年(平成16年)9月20日)

 

 


子供の頃に読んだ「海洋冒険談」。
見知らぬ海外で様々な体験をするヒーローに、幼ごころに血湧き肉踊る体験をされた覚えは誰にでもあるのでは?
そんな気持ちを想起させてくれるのが、今回ご紹介させて頂く小説家、白石一郎の作品群です。

プロフィールはこちらを。
https://ja.wikipedia.org/wiki/白石一郎

「海洋時代小説」の第一人者として知られる作者の代表作品群は、もちろん直木賞受賞作「海狼伝」(第97回・1987年)や「戦鬼たちの海-織田水軍の将・九鬼嘉隆」(第5回柴田錬三郎賞 )「海王伝」(「海狼伝」続編)「海将」「サムライの海」「風雲児」など海を舞台にした胸のすくような時代小説の数々です。
山田長政(風雲児)、小西行長(海将)、九鬼嘉隆(戦鬼たちの海)、三島笛太郎(海狼伝/海王伝)、トマス・グラバー(異人館)など水軍の将や海の商人、海賊の頭目などを主人公にしたその作品は、一般的な時代小説とは異なった視点から戦国・江戸時代を俯瞰して、読む者に新鮮な発見と感動を与えてくれます。


特筆すべきはどの作品にも共通する「爽やかさ」と「わくわく感」とも言うべき魅力で、それが暗い内容や結末であっても決して悲壮感を感じさせません。
また「海の夜明け」(日本海軍前史)といった史実小説的な作品でも、単に歴史事実を追うのみならず、そうした感触感覚で一気に読ませるのは作者の持ち味と力量なのでしょう。

そして作者のもう一つの作品群、それは「火炎城」「鷹の羽の城」「銭の城」「天翔ける女(あまかけるひと)」など主に九州や周辺の島々を舞台にその地の武将(大友宗麟など)や商人達(大浦お慶など)を描いた作品群です。
いずれも壱岐・長崎で育った作者(生まれは韓国釜山)の郷土愛を込められた、地域的特色の顕著な作品群といえると思います。

また得意の「島」物や、本格的な時代小説の短編も秀作が多く、作者の力量を伺わせてくれます。
私の特に好きな短編作品集は以下の通り。



まずは得意の「島」のエピソード連作「孤島物語」。
佐渡・八丈・対馬などでの鉱夫や流人(後者は宇喜田秀家)の生活を描いています。

 



猛将・福島正則の寂しい晩年を描いた「弓は袋へ」も、表題作をはじめとして優れた作品を網羅。


20代の作品を収録した「風来坊」も既に短編巧者としての下地が確立されており、充分な読み応えが。

「天上の露」「秘剣」も著者ならではの、一風変わった視点から武士や庶民の生活を描いた優れた作品集です。



私の好きな長編作品の粗筋と私見も簡単に記します。


海洋時代小説ではまず「海狼伝」「海王伝」。
村上水軍(瀬戸内の海賊)の一人であった三島笛太郎達が、海賊行為を経て信長との海戦などに関わった後に、憧れだった南蛮貿易を目指して海外に旅立って行く痛快な物語を描いた直木賞受賞作。


「海将」は関が原の西軍首脳の一人小西行長の、商人から秀吉に認められて一国の主となる前半生のストーリー。
行長の関が原以前の姿を描いた作品は少ないですが、これは商人でクリスチャンという特異な武将であった主人公を魅力を余すところなく語っています。


また「風雲児」も伊勢の神主でありながら御朱印船でシャム(タイ)に渡り、アユタヤの日本人街の頭領を経てついにリゴール国王というタイの王族にまで上り詰めた山田長政の夢と冒険談。
これも作者得意の同分野の一作品に位置づけられると言えるでしょう。

 



九州を舞台とした作品群ではまず「火炎城」。
一時北九州を席巻した大友義鎮(宗麟)の、猟色と権力欲の権化の半生の後クリスチャンとなり、耳川の合戦で敗北して隠居に到るという破天荒な生涯の物語。



「銭の城」は壱岐の百姓の息子・右近が博多で島井宗室や神屋紹策 (いずれも当時の博多の豪商)と関わりながら、同地で有数の卸商人にのし上がって行く姿を描いたサクセスストーリー。


「天翔ける女」は幕末の長崎に生きた女交易商人、大浦お慶の波乱に満ちた生涯を描いて感動を呼びます。

冒頭にも記しましたが、幼い時代の「わくわく感」を想起させ、しかも優れた時代考証と独自の視点を併せ持った作家、それが白石一郎です。
未読の方は是非「海狼伝」「海狼伝」あたりからこの稀有な作家の作品に触れてみることをお勧めします。

 

私の蔵書です

 

 

 

(shunちゃんの読書日記2*白石一郎 了)