制服を来てランドセルを背負った小学生が


泣きながら電車に乗ってきた。


空いていた席にちょこんと座り、鼻をすすり続ける。


隣に座っていた三越の紙袋を持ったおばさまが


「どうしたの?」 と声をかける。


「電話をしたのに、誰も出ないの・・・」 と少年。


差し出されたティッシュで鼻をかみながら


「おうちの人、いないんじゃないの?」 という問いに


「居るのにでないの・・・」 と小さく答える。


「もう一度かけてみる? 携帯持ってる? 貸してあげようか?」


おばさまから携帯を借りた少年が電話をかけようとすると、


おばさまの反対側に座っていたお兄さんが


「(電車が)走っている時は通じませんよ。駅に止まっているときでないと」


と声をかける。駅についた時に少年が電話をかける。


「あっ、おじいちゃん?! 2時5分の電車に乗ったからね! じゃあね!」


嬉しそうな顔で電話を切ると、電車が走り出した。


「おじいちゃんがいたの~、よかったわね~!」


照れくさそうに少年が笑う。しばらくしておばさまは


別れを告げて電車を降り、少年とお兄さんが残された。


制服のベルトがこわれているのに気がついた少年は、


直そうとするが、なかなかできない。


お兄さんが、「やってあげようか?」 と申し出て、


少年が筆箱からはさみを取り出し、本格的なベルトの修理が始まった。


しかしものの5分でベルトは直り、少年はしっかりと


「ありがとうございました!」 とお礼を言う。


それから僕が電車を降りるまで、


2人は楽しげに会話を楽しんでいたのでした。