死にゆくヒナ鳥を前にして、、 | 獣医師・宿南章の「愛犬の病気を治す進化犬学 リスクを防ぐ予防原則」

獣医師・宿南章の「愛犬の病気を治す進化犬学 リスクを防ぐ予防原則」

獣医師が 愛犬の飼い方を予防原則と進化生物学の立場から語ります。1960年代にドイツからはじまった予防的取組。アスベスト・狂牛病といった「遅い教訓」への対処概念でEU、WHO、日本の環境省取り組んでいます。また重要な進化医学の視点から解説します。

あと、30分で死ぬ運命の雛鳥。。。

私は高校時代から、野鳥保護活動を行っていたので、見た瞬間に、放置した場合の残された寿命が直感的にわかります。


写真の子は、5月12日(月)の夕方の持ち込まれたスズメのひな鳥です。


何度か食事をとらせたあとの写真ですが、目をつぶり、ジッとしており、病状の重さが感じ取っていただけるのではないかと思います。


夕方に持ち込まれた時には、あと、30分で意識を喪失して、ケイレンを生じて、死に至るという、そういう一歩手前でした。


普通は、各ご家庭で、ケアの仕方をお伝えするのですが、この子は、そのような状態ではないので、こちらがすべて引き受けることにしました。


行ったことは、すぐに30度での加温保護です。


小鳥のケアの最優先事項は「保温」です。小鳥は備蓄エネルギーをほとんど持っていないため、体温低下は信じられないほど弱いです。


この子の場合は、体重が10g。


これは、一般の巣立ち時期のヒナが20g以上に育って飛び立つのに、半分以下の重さです。


このような誕生初期から栄養欠乏が続いていたと考えられる子への薬剤投与はとても危険です。成長期の栄養が半分も満たされていない場合、薬剤の副作用が信じられないほど強く出ます。


ですので、私の場合は、基本的に、スズメのヒナの保護をした場合、ケガをしていても栄養療法で治します。(補:現代鳥類診療を知らないわではないです。鳥類医学の世界最高峰である「Robert Altman Avian Medicine and Surgery]などを理解した上での判断です。)


この子の場合は、日本伝統の「すり餌」でも助けられないレベルなので、ヨーロッパから輸入した特別な栄養を加工して、与えます。


どれぐらいの頻度で与えるかというと、朝6:30から夜の11:30まで、45分~1時間間隔で、食事を与えてゆきます。


これぐらい行わないと助けられる可能性が消えます。

(この子は弱いですので)


保温と、特別な栄養供給で30分後に訪れる最も恐れる事態を延長してゆきました。


幸い外傷がなかったのですが、お尻は便が固まっていて排便できない状態(悪性の下痢が続いていたことを意味)でした。


それを、ピンセットでほぐしてすべて取り除き、排便可能な状態とします。保護したヒナドリは、だいたい2~4日目で、第2回目の大きな危険に見舞われることが多いです。


これは、体内の抵抗力が落ちているため、菌が身体を侵しはじめるからです。


この子の場合は、当初からヒドイ下痢が続いておりましたが、腹部内に膿が溜まっているのが外側からハッキリと見えました。


これらを、善玉生菌、優しいハーブを使用しながら病状が続いても徐々に回復する時間の確保をしてゆきます(繰り返しますが、弱りすぎたヒナ鳥は、成鳥や普通に育つことができているヒナ鳥と同じ治療は行えません)。


この子が育つことができるのかどうかは、わかりません。


ですが、できることを行うだけです、ね。獣医は支えて、ケアすることしかできません。薬は良く効きますが、自己治癒能力まで失うところまで免疫力を失った子には、まずは生まれた時から不足している栄養を補給していくことが第一に必要です。


今日で、この子が来て、1週間となります。


体重は、13gまで増えました。数日で15センチほど飛ぶ(跳ぶ?に近い)ができきるようになり、今日は30センチほど飛べます。



ですが、まだ安心できず5分5分の状態です。


病気の幼鳥は気を抜くと、崖から転げ落ちるように、病気が悪化します。

(たぶん、1回でもごはんを与える間隔を2時間にするとダメになります。それぐらい弱いです。普通の保護したヒナは1.5~2時間おきの食事でケアしてゆきます)


この子が無事に大きくなれるように応援していただければ幸いです。

(o^∇^o)ノ



<追伸>

これからの季節は、落ちているヒナを見かけることが増えます。そのときに役立つホームページを載せておきますネ。


レスキュー&育て方

http://asterisk-web.com/sparrow_club/resq/3.htm




<余談>

余談ですが、根がやさしい獣医師の調べ方って、ご存じでしょうか?


獣医師もいろいろなタイプの先生がいます。


まず、根っから動物のことが好きな先生はほぼ必ず自分でも動物を飼育しています。まあ、家族ですからね。


いまは、ホームページを持っている動物病院が大半と思いますので、そこをノゾイテみると、動物が大好きな先生は、けっこうホームページに載せています。(当然ですが、載せていない先生もいらしゃいますが)自分に合う先生か、判断できる材料になると思います。



あと、お金にならない動物に関する保護活動などをされている先生も、根っから動物のことを愛されている先生である場合が多いです。


これは、どの世界でも言えることだと思いますが、その人の素(す)がでるところは、仕事(収入)以外の、収入のない時間や、その人がお金を使用しているところをみればわかります。



「世のため人(犬)のためだ~」っと言いながら、余暇もお金のモウカルことことばかり打ち込んでいる方は、それはお金がすべてなのです(笑)。


最近、知り合った出版社の社長さんは、日常は激務をこなされています。ですが、時間を作っては、いじめ問題の解決への取り組みや、殺処分される犬猫の保護活動をされています。


私なら、信頼するのは、後者の出版社の社長さんのような方です。このことが分かったのは、私が高校に、『ボランティアクラブ』を創設した時です。


昔ですから不良が多くて、大変でした。粋がった高校生が多く、「ボランティアクラブ~~~」って、感じでした。しかし、いったん始めると、ほとんどの同級生がなんらかの募金をしてくれましたし、協力者も多数あらわれました。いまでも、母校では、そのボランティアクラブが引き継がれています。人って、基本的に「やさしいんだ!!」って、実感しました。



アフリカへの支援のための活動をしたり、手話を学びに行ったり(すっかり忘れてしましましたが)して、社会的な弱者の立場におかれた方々が住みやすい環境を目指しました。


当然、募金活動もするわけですが、、、、



面白いことに、



日ごろ、いいことを言うかどうかと、実際に献身的な行動をする方かどうかは、相関性はなかったです!!!


スゲ~~~~不良が、自分の少ないおこずかいから600円も寄付してくれたり、日ごろ良いことばかり言っている大人の方がイヤイヤ20円寄付されたり、生徒に厳しく嫌われている先生がだれもいないところで1万円を寄付されていたり(私は見てしまったのですが!!(笑))と、表の(∩_∩)と裏の\(*`∧´)/は、全く違いました。


その経験をしてわかりましたが、生徒に嫌なことでも厳しくされていた先生は、生徒が社会人になった時に困らないことまで考えて注意してくれていたということです。


そういうことが、高校2年のときにわかりました。


獣医さんも同じです。ぜひ、裏まで、みていただきたい。


表上は、どんなにぶっきらぼうで、ツッケンドに見えても、犬や猫の幸せ、飼主の負担まで考えている先生もいらっしゃいますね、いろいろです。