2024/12/11
128右半身初期健康詩集14
㉖リハビリ⑴
朝の勤行が終わると、
昼食前、週に3回リハビリがある。
1日1回、一日20分施術される。
あると言ってもどの日にあるかは、
リハビリ担当者の気分に従う物なのか、
リハビリ担当者のリハビリ方針による、
戦略的な決定かは分からず、
リハビリと言うと痛いので、
いつ担当者が来るのかと言う警戒心と猜疑心、
でも回旋の進化はして欲しいと言う思いが、
千々に乱れ交錯し我が心拍を乱す。
倒れて8カ月入院した某総合病院は、
日本で10本の指に入る大病院であった。
入院時のリハビリはほぼ毎日で、
それはどうやら法定の決まり事であるようだが、
1日3回、一日3時間施術された。
体育館の様に大きなリハビリの部屋は、
窓から富士山が見えて夕陽が綺麗だった。
其処のリハビリの装置はまるで、
子供の頃見たジャイアントロボの様に、
僕の身体を釣って荷重をかけると言う、
大きく、大袈裟で、大層な代物だった。
彼等は苦しむ僕を見て言った。
この短い術後の機会を逃せば、
あなたは一生麻痺した儘だ。
頑張れ。チャンスは今しかないのだ。
僕の呻き声は他の患者より数オクターブ高く、
僕の呻き声は他の患者より数デシベル高く、
僕のリハビリが始まると部屋の戸は閉められた。
これだけのリハビリを受けたにも関わらず、
その時点での半身麻痺は回避できなかった。
でも、彼等には感謝している。
リハビリを受ける僕はその時、
車椅子に乗った重たい肉片であった。
それが今では肉片が立ち上がる迄にはなった。
手摺を使わず数分間立てる様にはなった。
リハビリの必要性を身に染みて感じた僕は、
この施設に来てもリハビリに期待をかけたが、
前出の様にその法定時間は極端に減った。
二足歩行のジャイアントロボは、
車椅子に乗るロボコンだった。
それでも、リハビリ担当者の若者は、
この割り当ての少ないリハビリ時間を
有効に使う為に僕にリハビリを行う日を、
前もって言わない事によって、
心理的リハビリの施術時間を増大させた。
心理的リハビリの見た目の延べ日数を増大させた。
おかげさまで身体は順調に柔らかくなり、
二足歩行へ日々努力を繰り返す。
毎日毎日変化はある。
それは側から見えない変化であり、
当事者が詳細を説明するのに窮する変化だ。
僕は一体何処に行くのだろう?
それとも何処にも行かないのだろうか?
或いは何処にも行けないのだろうか?
そう考えながら、
今日も来るか来ぬか知れぬ、
リハビリの若者を待つ僕である。
彼は言われているそうだ。
この男を決して甘やかさない様にと。
㉗リハビリ⑵
リハビリの先生が来ると、
僕はベッドに仰向けに寝る様に言われる。
病気をしてこの方、
うつ伏せになって寝た事は無く、
仰向けに寝るのはお安い御用である。
そうして、
先生はベッドの右側に上がって来る。
先生はベッドの右側に乗り込んで来る。
そうして、
まず右手のリハビリが始まる。
僕の右手は自然な定位置としては、
仏様の転法輪印の、
膝に下ろしている印相に似ていて、
掌は常に上を向いている。
見ていると蓮の花を置いて見たくなる。
股の内側に沿って流れる様に靡く姿が美しい。
先生はこの右手に若干の予備運動をした後、
手全体を上に向かって大きく曲げ、
頭の右横の限界点まで倒す。
そうして、
これを数回行い、
今度は右横に倒していた手を、
左手の方に斜めに倒す。
これも数回行う。
数回とは10回を越えない程度と言う数回だ。
特にこの斜めが痛い。
痛みに耐えながら注意深く観察すると、
手は曲げられた時こそ痛いが、
曲げられた後徐々にその姿に慣れて、
痛みが和らぐ。
だがすぐ反復運動を行うので、
痛み自体は無くならない。
そうして、
ひとつひとつの狙った静止点で、
グリグリと関節の蝶番を小さく回す。
これら一連の右手のリハビリの中で、
リンパ腺の音がカリカリカリカリと聞こえる。
手は非常に複雑な動きをする為、
回復には難しい手続きを要する、
と病院のリハビリのお医者さんが言っていた。
転法輪印(てんぽうりんいん)(Dharmachakra Mudrā)
「釈迦如来の印相の1つで、両手を胸の高さまで上げ、
親指とどの指を合わせるか、
病院では指そのもののリハビリもやっていた。
しかし指のリハビリは非常に時間が長く、
今のリハビリには時間を割くのは無理な様だ。
これら一連の右手のリハビリを終え、
次は右足に入る。
右手に比べて右足のリハビリはそれほど痛くない。
手に比べて足の方が毎日立ったり座ったりして、
部屋での自習時間が多いからだ。
しかも1日3回、
トイレでの自習もある。
トイレの椅子は車椅子より更に低い。
だから右足は日々弾力性を得て、
立ったり座ったりが楽である。
健常の左足の立ち上がりのトルクを、
最近は右足の起重が、
油圧プレスの様に補完している。
後は僕がどれだけ右左のバランスを、
コントロールするかに掛かっている。
右に荷重をかけ過ぎると倒れそうになり、
左に荷重をかけ過ぎると左足が痛くなる。
荷重をかける方法は、
身体だけでなく視線で荷重先を表現する事だ。
右手足のリハビリは、
このコースを終わると終了かと思いきや、
僕はこの後、手羽先となる。
リハビリのメニュー全体の中で、
最も痛い締めのメニューだ。
これは次回に持ち越す。
全メニューは未だ半分も終わっていない。
続く
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