2024/8/23

金曜日「登場人物」と言う物語 81

射抜きピン

 

射抜きピンと言うのは、

ダイキャスト金型にとって消耗品だ。

ピンと言うからにはピンなのだ。

以前にパンチの話をした。

見た目は似ている。

パンチと言うからには相手のプレス部品に、

穴を開けるのが主な用途だ。

あなたも良く書類に2つの穴を開けているあれとだ。

射抜きピンも穴を開けるのだが、

始めから穴が無いところに穴を開けるのがパンチで、

ダイキャストがアルミニウムに形状を作る時に、

その中に隠れていて、一緒に穴の形になり、

その後素早く身を引くのが射抜きピンだ。

 

金型はどんな製法でも複雑であり、

簡単に表現するのは難しいが、

パンチの方がミスミなどの標準品も多く、

仮に何か不良を起こしても予備品が手に入れやすい。

射抜きピンはおおよそそ自動車メーカの特注品で、

標準品などは殆ど無い筈だ。

例えばこれから語る自動車メーカでは、

このピンが欠品すれば日本のマザーファクトリーに、

取りに行かねばならなかった。

 

梅毒と言う会社はそもそも、

特殊鋼の専門商社であるので、

本来であれば金型鋼(或いはその他)を、

切って売るのがこの会社の専門だった。

しかしながら、例えば日本で言えば、

金型を作るお客さんは全国に散らばっている。

鋼を作るメーカーは余りにも巨体過ぎて、

細かい顧客のニーズに応えることが出来ない。

鋼を使うお客さんは材料切断だけで無く、

❶熱処理、

❷表面処理、

❸或いは付加価値のある加工、(工具、ジグ)

を必要としており、

なるべく早く、

なるべくきめの細かい対応を求めている。

だから鋼の専門商社は地方に事業所を持ち、

体力があれば❶❷❸の加工が出来る様にしているのだ。

梅毒はいち早くその付加価値対応に対応した結果、

この特殊鋼の業界では大手になったのである。

僕の働いていた熱処理工場が、

某国で初期に対応したのがそれだった。

 

僕が営業に出てから、

熱処理の営業のみならず、

表面処理を始め、(表面処理の話はいずれ)

それに加え加工品も始めた。

こうゆうのを梅毒は付加価値の追求と呼び、

コンペティターから見れば、

梅毒は全てのソリューションを抑えたので、

大阪の言葉でボロ儲けと影も表口を叩かれた。

でも❸の加工は自社で出来ない分リスクが大きい。

 

僕はこの頃ローカルの営業マンを4、5人抱えていた。

女性営業マンは知り合いのツテで集めた美人揃い。

男性の営業マンは、

元々配送の運転手から抜擢した叩き上げだ。

最初から居る営業マンは予想外に頑張り、

コミッション制だったので、

遂にはピックアップを買うに至った。

それで他の配送運転手も営業マンになった。

今回の事件はその一人が持って来た仕事だった。

彼はアナンと言って、

最初は配送の運転手から、

次は僕のショーファードライバー、

そして営業マンに華麗なる転身をした男だった。

この新人が自動車メーカーの仕事を持って来た時、

僕はチェックが足りなかった。

と言うか私生活が忙しく、

ノーチェックであった。

 

ではそれはどのようなミスだったのだろう。

 

先ず一つは納期遅れである。

 

このダイキャスト金型は、

二輪のエンジンだったと記憶している。

こうゆう仕事は当たり前だが納期が厳しい。

こうゆう仕事は当たり前らしいが、

納期がメーカーの会議の度に減少して行く物らしい。

こうゆう仕事は当たり前らしいが、

必ず仕事は徹夜体制になる物らしい。

こうゆう仕事は当たり前らしいが、

コストがメーカーの会議の度に減少して行く物らしい。

そして求められるのは当然高品質だ。

買い叩かれて短能期、

そんな状況で納期遅れを出したら、

何を言われるかわからない。

 

次に品質。

 

別な言い方をすれば外注先の技術不足である。

以前話した「マイペンライ 」である。

「マイペンライ 」は大丈夫と言う意味なのだが、

僕はこの某国人の頻出辞書にもう一言書き加えたい。

「ダイ」=出来る。だ。

何でもかんでも「ダイダイ」とゆうのである。

そうしてやって行く内に雲行きが怪しくなり、

最後にはこんな筈じゃ無かったと、

雲隠れするのである。

今回のケースは正にそれだ。

 

今でもあんな事をしているのだろうか?

あの自動車会社のある部署では、

平均寿命が短いと評判であった。

次回その原因となる徹夜体制をご紹介しよう。

もう15年も前の事だ。

 

以上

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