2024/7/12

金曜日「登場人物」と言う物語 76

責任の所在(トーションバー最終回)

 

ここでその会社の悪口を並べる訳ではない。

だからノンフィクションのこの物語では匿名とする。

それは日本の大手自動車会社だ。

かつて、僕の就職活動の時には新卒人気NO.1だった。

ラリーで一時代を風靡した会社と言っても、

今の若者には分からない筈だ。

その会社がある日ある時、

我が工場へ乗り込んで来たとしましょう。

そして、責任者を出す様に要請したとしましょう。

その自動車会社は日本でも、

本社営業部の大得意先だったとしましょう。

そして案の上責任者の田中所長は不在だとしましょう。

その貧乏くじを引いたのは課長の善さんだとしましょう。

その不在の田中所長が乗っていたのも同社の車で、

田中所長はその車でゴルフに行っていたか?あるいは、

田中所長はビビって表に出てこなかったとしましょう。

 

アルティマとは

「ultimate. 〔製品などの質が〕最高の、究極の・This console is also the ultimate amplifier for music. : このゲーム機は最高の音楽プレーヤーでもある。」

ultimaの意味・使い方・読み方 - 英辞郎

 

と言う素晴らしい謳い文句の自動車会社の社用車数台が、

熱処理工場に現れたのです。

品質管理の担当者が、こんな凄い名前の車で現れ、

絶対弱者の僕等をこれから、

締め付けようとしているのです!

これは究極の恐怖です。

 

もう一度おさらいします。

 

①同社の車に乗っていた僕は、

ある日100km/時速以上の走行時にボンネットが空き、

前方が見えなくなり危うく大事故になるところでした。

その事故は某国のローカル自動車部品会社、

サミットの丁度工場の前でした。

本件はしかし僕が気が弱い事もあり、

お客様と言う事もあり泣き寝入りしました。

大体メーカーにクレームしよう、

と言う話も出ませんでした。

 

②それから数ヶ月後、

我が熱処理工場がサミットから受けて熱処理をしている、

トランクの蓋を跳ね上げるトーションバーで、

問題が起こったと連絡があり、

彼等は乗り込んで来たので来ました。

 

もう一度言うが、

①僕のクレームはボンネットで、

②先方のクレームはトランクであった。

僕のクレームは走行時に開いてしまう事で、

先方のクレームはバネが働かず、

トランクが閉まってしまう事であった。

熱処理温度は正しいか?と言うクレームだった。

 

ここから先の会議での詳細には触れない。

❶自動車会社と、

❷ローカル部品メーカーのサミットと、

❸僕等熱処理工場の打ち合わせは、

最初は如何にも我々が劣勢の様であったが、

最終的に彼等は自分の会社に帰って行った。

サミットの担当者が非を認めたからだ。

僕等はサミットに言われた通り処理したに過ぎない。

そう僕等に非は無かったのだ。

僕等は無罪だった。

ついでにボンネットの件も言おうかと思ったが、

辞めた!

勝った!

そしてこの件は忘却の彼方へ。

でも一体何ヶ月も処理をしたトーションバーはどうする?

 

それから数ヶ月後、

僕はボンネットの壊れた車を新車にして貰った。

全く同じ型で少しマイチェンした車だった。

色は緑から青に変わった。

最初は分からなかった。

やっぱり新車はいいなと僕ははしゃいだ。

でも、その異常は家内を田舎に連れて行った時発覚した。

つまり、それまでは、運転手が発見して知っていたが、

こんなもんだろうと思い日本人に報告しなかった。

 

家内の荷物を、

積んだ時は分からなかった。

が、降ろした時に分かった。

そう僕の車のトランクは、

トーションバーが機能しなかった。

手で押さえていないと、

トランクは勝手に閉まるのだ。

 

これは究極の泣き寝入りだ。

 

合掌

 

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