金曜日「登場人物」と言う物語 51 エイズと言う束縛 ⑫　フィラデルフィア

2023/12/15

金曜日「登場人物」と言う物語 51

エイズと言う束縛 ⑫ フィラデルフィア

フィラデルフィア

ベンジョムシからHIV感染をカミングアウトされて少し後、この映画が発表されたのである。それは、トムハンクス演じる主人公がエイズに感染し、オフィスか何処かで排泄をコントロール出来なくなるシーンだった。トムハンクスの演技力は冷徹で、未だにあの虚構の中のトムハンクスがトラウマになっている。

このシーンは僕がベンジョムシからカミングアウトされていなかったら、映画ファンとしてのみ感動した遠い世界のシーンであった。だがレンタルヴィデオで借りたこの映画は、カミングアウトにジャストタイミングであった。まだ、インターネットのないあの頃、僅かな情報で想像していたHIV感染と発症は、僕の頭の中で限り無く膨らみ、真実を求めていた。そこに、フィラデルフィアである。

フィラデルフィアとは。

『フィラデルフィア』（Philadelphia）は、1993年のアメリカ映画。〜中略〜

アンドリュー・ベケット（トム・ハンクス）はペンシルヴェニア州フィラデルフィア市随一の大規模法律事務所のシニアアソシエイトである。彼は同性愛者でありエイズ患者であることを同僚に隠している。彼は事務所にとり大変重要な案件を任される当日に、同僚の一人が彼の額の病変に気付く。彼はラケットボールによる傷だと説明するが、実際はカポジ肉腫によるものである。

〜中略〜

作品の舞台がフィラデルフィアなのは、その名がギリシア語で「兄弟愛」を意味することと、アメリカ合衆国の最初の首都だったことに由来する。フィラデルフィアの風景が何回か流れる中で、シティ・ホールの頭頂にフィラデルフィア市の父、ウィリアム・ペンの像を撮影したシーンがある。ペンはイングランド生まれだがキリスト友会徒（クエーカー）になり、裁判にかけられるという逆境に立たされたが、陪審員は「無罪」の評決を下した。その後ペンは北アメリカに新天地を求め、アメリカ合衆国憲法に大きな影響を与えた。」Wikipedia

フィラデルフィアと言えば、パンにつけるチーズしか思い浮かばなかった僕にとっては、これがアメリカの地名である事すら知らなかった。映画「フィラデルフィア」により毎日、想像を膨らませていた厳粛なるHIVの事実は、形を持ち、人生でほぼ初めてと言っていい死の恐怖、絶望の淵に立たされた。

むしろ、僕から見ればベンジョムシの態度の方が余程気楽な感じであった。カミングアウト時も、カミングアウトの話題が終われば次の話題と言う様に、まだ発症していないからだとは思っていたが、意外なほどサバサバしていた。今思えばサバサバして当たり前だ。この物語で彼女が行った最大の演技、妄語だったのだから。

HIVの症状

ベンジョムシは、多分カミングアウトから数ヶ月後に発症した。それは風邪の症状から始まり、嘔吐、排泄異常に展開している様だった。

「感染から2 - 4週で、無症候（症状がない）や、インフルエンザの様な症状などを起こしてから、5年から10年の症状のない潜伏期間に入る。」Wikipedia

でも、ベンジョムシは感染後の無症候状態はとっくの昔に終わった筈である。何故なら彼女が感染したのは、北部チェンマイのカラオケバーだと彼女自身が認識していたのだから。

「後に風邪によく似た症状や、全身の脂漏性皮膚炎を呈し、その後、多くの感染症にかかるようになる。感染経路は、コンドームを用いない性行為のほか、注射器の打ち回しといった血液感染や、母子感染が主である。感染しているかの検査には血液検査が用いられる。」Wikipedia

僕は何度となく、彼女を叱責した。

①何故、僕を待っている間、待てなかったのだ？

②何故、カラオケバーなんかで働いたのか？

それら全てを許すとして、

③何故、避妊具を使わなかったのか？

この解答として彼女から得たのは、

①お金が無かった。

②お金が沢山はいるから。

③チップ(お金)が沢山はいるから。

である。ところで何故このようにお金が必要なのか？

それは彼女の家族構成を見れば分かる。

父→農家

母→農家

姉→農家

姉の夫→農家

兄→ボクサー(行方不明)

弟→学生、家手伝い

姉の長女→小学生

姉の次女→小学生心臓病

姉の次男→幼稚園

数えれば9人だ。この人々の生活がベンジョムシの双肩にかかっているのだ。この9人が生きていくためならば、ベンジョムシはなんでもしたであろう。カラオケだろうが、避妊具つけなかろうが、HIV感染すら拒まなかろう。僕の求めている情欲とロマンとはレベルが違う。このベンジョムシのいた北部のこの地域は、売春で有名な地域だった。女は春を鬻ぎ、男はアラブ、イスラエルに出稼ぎに行った。同情して然るべき点はある。そこに火にいる夢見がちの夏の虫が悪いのだろう。でもベンジョムシの褒賞はそんなちっぽけなものでは無かった。正に恐るるべきはフィラデルフィア、兄弟愛であろう。

売春に対するタイ人の見解

「多くのタイ人女性は売春婦が存在することで強姦を減らす効果があると考えている[1]。タイで売春は社会構造の一部として広く受け入れられている[1]。元売春婦と結婚することをためらわない男性もいる[12]。タイの平均給与は日給8.59ドルであるが、セックスワーカーは顧客1人あたり85ドルを稼ぐことができる[4]。」Wikipedia

児童買春

「タイ王国保健制度研究所は18歳以下の未成年売春婦が売春婦全体の40%を占めると推定している[13]。家族の借金を返済するためなどに売春を強いられる未成年売春婦も多い。」Wikipedia

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ネタバレはほぼ無し。

なるべく偏りが無いようにはしているが、

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