CAP

 

毎日寝る時間と睡眠の質を計っている。

もう、この先美しい女性と寝る事も無いだろうが、

思えばあの頃は睡眠の質も良かった。

 

CAPとは1週間に、

一回は訪ねていき、

彼女と食事をし、

パブに行き、

歌い、

踊り、

夜2時くらいには、

彼女の部屋で、

眠れないなら体を交え、

眠たくなればそのまま抱き合って寝た。

 

翌日彼女より早く起きて、

接吻をし家に帰った。

彼女は僕の事を細かく聞かず、

僕も彼女のことを細かく聞こうと、

しなかった。

駐車場が屋上にあり、

そこから眺める朝日が素敵だった。

 

自慢では無いが、

彼女の体は大柄でスタイルが良く、

胸が大きく形が良かった。

そこに埋もれて寝る眠りは、

質が良かった。

僕の性器は、

不思議なほど彼女に従順で、

彼女の乳房に隠れ、

黒く柔らかな感触と、

胸間の深い谷に、

いつしか

匿われてしまった。

誰も見つける事の無い谷底へ。

 

僕等のあの、

未来なき有情は、

一体なんだったのだろうか?

好きか?と尋ねられれば、

彼女との時間が好きだった。

彼女は、何一つ僕を拘束しなかった。

彼女のお陰で大勢の、

この国のミュージシャンを知った。

彼女には全く欠点が無かった。

何故、僕は彼女を去り、

それきりにしてしまったのか?

 

永遠に生きるなら、

彼女から去る必要はなかった。

こんな身勝手は女性には失礼なのだろう。

童貞の僕には気遣いが足らなかったのだ。

 

あれから10年以上、

僕から彼女に、

SNSで連絡が出来て、

というか「友人では」欄で見かけたので、

彼女が初老の日本人と一緒に、

日本にいる事を知った。

結婚しているとは書いていなかったが、

赤ん坊を抱いていた。

彼女は相変わらず、

さっぱりとしていた。

 

大柄の彼女の小さな幸せを願った。

というか、それなら連絡するなよと、

我が身の身勝手さをを叱った。

童貞の僕には気遣いが足らなかったのだ。

 

合掌