入ってみたい建物

 

死ぬぞ、と決心するのは本当に簡単だ。

今日を起点に1週間後に死ぬと決めた。

まずは腹拵えをしなくては、とラーメン居酒屋に昼から行った。

富山ブラックラーメンの店によく通っていた。店長が日本人だったが、全く話しかけて来ないいけ好かないオッサン、こんな時は、返って都合が良かった。

ラーメンとアヴォガドのサラダ🥗とアサヒビールDRYを飲みながら、携帯と相談をする。

携帯は飛び降りが、手っ取り早いと言う。

誰でも出入り出来て、人の少ないところと言えばショッピングセンターではないか?ショッピングセンターは一見人が多いように見えるが、駐車場がビルの横に独立して立っている場合、ビルの階を偶数階とすれば、奇数階の、ビルに直結していない階はあまり車を止めないので静かだ。しかも上に行けば、上に行く程、誰もいない。

次の日から、ショッピングセンター通いが始まった。

大体1か月だろう。決心は少し延期された。

ありとあらゆる都内のショッピングセンターを周り、朝から夕方まで駐車場で過ごした。何度も同じ店に行くと怪しまれると思ったが、話しかけられることはなかった。高くても20階ぐらいだろうか🤭?

萌音には、仕事を探しに行くと言ってあって、

信頼しているのか一緒に来ようとはしなかった。

そしていよいよ、決行をしようと考えた時、

車の中は汗でビッショリだ。

待てよ。

こんな低い階で死ぬことが出来るのか?

螺旋状に登ってくるパーキングウェイは、確かに、ここに飛び込めれば死ねそうだ。だが、死ななかった場合、ただの障害者じゃあないか?

確実な方法を考えてくれ。

いい加減なのは絶対ダメだ。障害者じゃ困るんだ。

「何してんのよ」

ふと気がつくと萌音が車の外で携帯電話を掴んでいた。

知らず、自宅のアパートの駐車場に帰っていた。

そろそろ怪しまれたか。

ショッピングセンターは失敗の確率が高く投身場所の変更となった。

僕は、萌音に嘘を並べながら次の投身自殺の場所を思いついた。

そうだ。

マンションだ。

コンドミニアムだ。

あそこなら30階、40階もある。

だけど部外者では入れない。

どうするんだ?

 

借りるんだ。

契約するんだ。

どうせ死ぬんだから、

何ヶ月もいなくても契約は成立する。

 

「仕事はあったの?」

 

萌音はイライラしていた。

 

失敗を恐れていたのか?

死を恐れていたのか?

私は何を恐れていたのか?

 

お陰で、今は障害者1級だ。

 

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