いま一番願ってることは?
▼本日限定!ブログスタンプ
七夕の日
韓国映画の女優にハナと言う女性がいる。
ハナは韓国映画のステータスがどれほどの人か知らない。
でも、あの顔を見ると、何かが揺すぶられる。
何故かな?
それは20年前のあの子を思い出すからに違いない。
僕が家内との日々に嫌気がさし、そんな時現れた
10歳年下のあの子。
あの子は、
唇の上の、鼻の膨らみとの間の肉が、限りなく柔らかく、
少し頬っぺたから落ちている。
白い肌が病的なほど、いくら渇いてもなお滑りそうだ。
何の化粧をしている訳でも無い。
クリーム一つ塗らない。
時々、薄い、オレンジ🍊の口紅💄を塗った。
それだけで十分だった。
決して美人では無い。
でも溺れるに充分だった。
いつも黒いジーンズを履き、
時々、人に隠れて、タバコを吸った。
名前はハナと呼んでおこう。
僕は何度かハナのアパルトマントに行ったが、
いつも入り口の警備の前で帰され、
それ以上は許されなかった。
僕はハナの日常を思い、
その全てが欲しくなり、
ハナの日常の中にいる僕を思い、
彼を羨ましく思った。
何度となくデートをし、
何度となく家に帰れと言われ、
しかし、ある日、
僕はハナに許された。
「きっと貴方は私に飽きるわ」
そんな前書きがついていた。
でも、僕はハナの全てを手に入れた訳ではなかった。
ハナと出会うのはいつも同じホテルで、
アパルトマンの部屋は相変わらず秘密だったのである。
ある日、同じ様にホテルに行った時、
情事の後、シーツに沢山の血がついた。
僕は、我に帰り、
ハナをハナの行きつけの病院に連れて行った。
病院の看護婦が言った。
「あなた、どうして、今頃きたの?」
ハナは、子宮頚がんだった。
去年、小さい内に見つかって、精密検査に来る様に、
言われていた。
ハナによれば、
「お金が無い、」
「多分大丈夫だろう。」
「怖かった。」
子宮頚がんは、医者が言うには、
既に直径30mm 程になっていた。
こうした場合、一度放射線治療をして小さくし、
その後、手術で切るそうである。
医者はハナが転移をしていないのはラッキーだと。
しかしそれなりの費用がかかるのは間違いない。
「あなた誰?」
先生は、僕に聞く前にその素性を聞いた。
「親しい友人です。」
僕は、ハナの人生に深々と入りこみ、
自分が願ったハナの全てを
こんな形で手に入れた事を悟った。
その日からハナは、通いで、
放射線治療を行った。
10回くらいだろうか?
幸い、ハナの副作用は少なく、
放射線治療の前のハナと代わりなかった
そして、手術の日も決めた。
久々に2人で食事に出かけた。
食事をして🍽、屋台に行く事になった。
夏真っ盛りだというのにハナは上から
カーディガンを、
羽織っていた。
アイスのコーンを使った金魚スクイが出ていた。
ハナが、
「日本では、今日はお祭りでしょ」
そうだ、今日は七夕だったんだ。
翌週、長い手術があり、ハナの身体の中には、
ガンがなくなった。
でも、その姿は昔のハナではなかった。
数日後退院して、
ハナは泣きながら電話をしてきた。
家に帰りたい。
たった1人のお父さんといたい。
多分もう都会には🏙住めない。
ごめんなさい🙏……と。
僕は何故か、涙も出ず、
ハナがやりたいことをしてくれ、と答えた。
ハナは家に帰った。
そして数ヶ月後に亡くなった。
何度か電話したが、
湿った様な声で「大丈夫」と答えた。
後でお父さんに聞いたところ、
1日中、電話の前に布団を引いて、
電話を取っていたらしい。
僕は、そうして待っていた電話に、
僕以外の男からの電話があったかどうかを尋ねない、
意外に冷静な自分に気付き、
僕の人生には、
もうハナがいないんだなと思った。
000000000000000
00000000000