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七夕の日

 

韓国映画の女優にハナと言う女性がいる。

ハナは韓国映画のステータスがどれほどの人か知らない。

でも、あの顔を見ると、何かが揺すぶられる。

何故かな?

 

それは20年前のあの子を思い出すからに違いない。

僕が家内との日々に嫌気がさし、そんな時現れた

10歳年下のあの子。

 

あの子は、

唇の上の、鼻の膨らみとの間の肉が、限りなく柔らかく、

少し頬っぺたから落ちている。

白い肌が病的なほど、いくら渇いてもなお滑りそうだ。

何の化粧をしている訳でも無い。

クリーム一つ塗らない。

時々、薄い、オレンジ🍊の口紅💄を塗った。

それだけで十分だった。

決して美人では無い。

でも溺れるに充分だった。

 

いつも黒いジーンズを履き、

時々、人に隠れて、タバコを吸った。

名前はハナと呼んでおこう。

 

僕は何度かハナのアパルトマントに行ったが、

いつも入り口の警備の前で帰され、

それ以上は許されなかった。

 

僕はハナの日常を思い、

その全てが欲しくなり、

ハナの日常の中にいる僕を思い、

彼を羨ましく思った。

 

何度となくデートをし、

何度となく家に帰れと言われ、

しかし、ある日、

僕はハナに許された。

「きっと貴方は私に飽きるわ」

そんな前書きがついていた。

 

でも、僕はハナの全てを手に入れた訳ではなかった。

ハナと出会うのはいつも同じホテルで、

アパルトマンの部屋は相変わらず秘密だったのである。

 

ある日、同じ様にホテルに行った時、

情事の後、シーツに沢山の血がついた。

僕は、我に帰り、

ハナをハナの行きつけの病院に連れて行った。

病院の看護婦が言った。

「あなた、どうして、今頃きたの?」

 

ハナは、子宮頚がんだった。

去年、小さい内に見つかって、精密検査に来る様に、

言われていた。

ハナによれば、

「お金が無い、」

「多分大丈夫だろう。」

「怖かった。」

 

子宮頚がんは、医者が言うには、

既に直径30mm 程になっていた。

こうした場合、一度放射線治療をして小さくし、

その後、手術で切るそうである。

医者はハナが転移をしていないのはラッキーだと。

しかしそれなりの費用がかかるのは間違いない。

「あなた誰?」

先生は、僕に聞く前にその素性を聞いた。

「親しい友人です。」

僕は、ハナの人生に深々と入りこみ、

自分が願ったハナの全てを

こんな形で手に入れた事を悟った。

 

その日からハナは、通いで、

放射線治療を行った。

10回くらいだろうか?

幸い、ハナの副作用は少なく、

放射線治療の前のハナと代わりなかった

そして、手術の日も決めた。

 

久々に2人で食事に出かけた。

食事をして🍽、屋台に行く事になった。

夏真っ盛りだというのにハナは上から

カーディガンを、

羽織っていた。

アイスのコーンを使った金魚スクイが出ていた。

ハナが、

「日本では、今日はお祭りでしょ」

そうだ、今日は七夕だったんだ。

 

翌週、長い手術があり、ハナの身体の中には、

ガンがなくなった。

でも、その姿は昔のハナではなかった。

 

数日後退院して、

ハナは泣きながら電話をしてきた。

家に帰りたい。

たった1人のお父さんといたい。

多分もう都会には🏙住めない。

ごめんなさい🙏……と。

 

僕は何故か、涙も出ず、

ハナがやりたいことをしてくれ、と答えた。

 

ハナは家に帰った。

そして数ヶ月後に亡くなった。

何度か電話したが、

湿った様な声で「大丈夫」と答えた。

後でお父さんに聞いたところ、

1日中、電話の前に布団を引いて、

電話を取っていたらしい。

 

僕は、そうして待っていた電話に、

僕以外の男からの電話があったかどうかを尋ねない、

意外に冷静な自分に気付き、

僕の人生には、

もうハナがいないんだなと思った。

 

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