関西でも雪が積もる、この冬一番の寒い2月初めの土日イベントに参加した。

 

「テーブルCROSS」とは、県内外の人々がイタリア野菜の食卓(テーブル)でつながる(CROSSする)体験型イベント

東京2020オリンピック・パラリンピックの際、矢掛町はイタリアチームのホストタウンとなった。所沢で合宿していたイタリア選手団に矢掛町の野菜を送り、大変喜ばれたという。

そのご縁をきっかけに、新たな挑戦として栽培を始めたイタリア野菜は、「矢掛町=イタリア野菜」というイメージとともに、日本各地のレストランシェフの間にも広まりつつある。


●日本初のアルベルゴ・ディフーゾとして認定された矢掛町
江戸時代中期に宿場町として栄えた街並みが残る矢掛町は、近年古民家再生による店舗や宿泊施設により当時の街並みを取り戻し、日本初のアルベルゴ・ディフーゾとして認定された。
**アルベルゴ・ディフーゾ(Albergo Diffuso)**とは
イタリアで生まれた「分散型ホテルの仕組み」


●宿泊 やかげ一譚
古民家をリノベーションした宿泊施設。宿泊だけでなく、地域の飲食店としても利用されている


中庭


●やかげ一譚でセミナー
イタリア家庭料理研究家の山中律子さんが司会をしてくださり日本における「テリトーリオ」紹介の第一人者であり、イタリア建築・都市史を専門とする陣内秀信先生にイタリアの食文化と地方創生についてお聞きする機会をいただく。




::::::印象に残ったお話::::::
1970年代まで、日本とイタリアは共に高度経済成長のピークにあったが、その後異なる道を歩んだ。イタリアは地方分権へと転換し、歴史的街区の再生や中小企業が牽引する地方の活性化に成功。都市(アーバニティ)と農村(ルーラリティ)が調和した発展を遂げた。一方、日本は一極集中を加速させた。

イタリアは1985年の景観法制定と1986年のスローフード運動開始が大きな転換点となり、地域の景観や食文化への意識が高まった。

1980年代、「テリトーリオ」という概念が意識されるようになり、人々は自分たちの地域の料理や暮らしに自信と誇りを持つようになった。「テリトーリオ」とは都市とそれを取り巻く農村が、互いに支え合い一体として機能する広域の共同体

::::::::::::::::::::::::::::


1970年といえば、前回の大阪万博が開催された時代。中学生だった私たちも、新幹線や高速道路の整備によって、東京も大阪も地方も“都会”になり、その発展こそが幸せにつながるのだと思い込んでいた。

あの時、もし立ち止まり、「地方からの発信」「中小企業の底力」「地域の自立」という視点がもっとあったなら、日本の風景は少し違っていたのかもしれない。

令和になり、若い世代が「この街が好き」と言って地方に移住し、地域の産業を掘り起こし、発信している。それは高度成長とは違う、もう一つの豊かさのかたちなのかもしれない。昭和世代が見えなかったというより、時代そのものが、そこに目を向ける余白を持てなかったのだろう。

今もなお、全国のスーパーマーケットや市場で買い物をすると、地方ごとの食文化の違いがはっきりとわかる。味噌の色も違えば、並んでいる魚の種類も違う。それは、消費者の舌が「地域」に馴染んでいるからだ。

チェーン展開の店が増え、日本全国が均一化しているとも言われる。しかし、大手メーカーのカップ麺でさえ東西で味付けを変えているのだから、食文化にはそう簡単には変わらない部分がある。

今ならまだ間に合うのではないか。そんな思いを抱きながら先生のお話を聞き、考えながら大阪に帰ってきた。私たちにできる手助けは、何があるのだろうか。

●矢掛町圃場にてイタリア野菜収穫体験
イタリア野菜部会長高月周次郎さん達に、イタリア野菜についてご説明を受けながら収穫。圃場で別れる時には「また矢掛町に来てくださいね」と手を振ってくださった。

参考】矢掛町のイタリア野菜がおいしい理由


●フェンネル(ウイキョウ)
葉・茎・根元を食することができる。イタリアレストランのメニューや野菜売り場でみかけることはあったが畑で育っている姿は初めて。遠目からでも美しい!と思った。






●フェンネルのパスタ
収穫したフェンネルは持ち帰り、さっそくパスタを作った。見た目はセロリのようで、生のままサラダとしても食べることができる。サッと炒めるとアニスのような爽やかで甘い香りが立ち、料理の用途も広い野菜だ。レストランだけでなく、家庭でも使っていきたいイタリア野菜だと思った。

 

●マルシェ(JA晴れの国 岡山 矢掛支店駐車場)
圃場での収穫体験の後は、JA、矢掛町、地元の住民、中学・高校生が一体となって開催しているマルシェへ。私たちのように地域外から訪れた客にも、皆さんが温かく声をかけてくださる。

矢掛町長も、最初の挨拶だけでなく最後までマルシェに滞在し、住民と直接言葉を交わしておられた。

大きすぎない、こぢんまりとした町だからこそ、こうして皆が力を合わせて取り組めるのかもしれない。





 

●「イタリア野菜」カリーノケール,リゾット米,カーヴォロ・ネロ,満点リーキ,フェンネルも販売

●リゾット米とリーキでリゾットの試食
イタリア家庭料理研究家の山中律子さんが試食提供をしてくださった

 

●地元の中学生もキーフォルダー製作担当

自分の押しイタリア野菜「フェンネル」を指名したら、作ってくれた




●野菜の説明付き


●道の駅 山陽道やかげ宿
岡山県出身である水戸岡鋭治氏デザイン
清潔なトイレ休憩はできるが、飲食・物産コーナーはない。商品の展示、購入先の案内はあるので、町の中で買うという仕組み。

●矢掛町内の観光と物産の紹介コーナー



●アウトドアヴィレッジやかげ

今年の春には、モンベルの直営店のオープンに加え、イタリア野菜を楽しめる飲食ブースや、河川敷のオートキャンプ場なども整備される予定だという。アウトドアと食を組み合わせた新しい拠点として、今後さらに注目されそうだ。

今回のツアーでは、矢掛町地域活性化起業人の橋本慶子さんが案内役を務めてくださった。さらに、イタリア家庭料理研究家の山中律子さんやレストランのシェフなど、地域づくりを支えるキーマンの存在の大きさも感じられた。

これまで知らなかった町・矢掛町だが、大阪から車や電車でも3時間弱。宿泊、レジャー、歴史ある町並み、そして食の魅力を体験できるエリアとして、もう一度訪れたい。