「はちとあり」(初回放送1983年8月20日)
語り(常田富士男)
ハチどん・村長(市原悦子)
アリどん(常田富士男)
秋田県の話です。
https://youtu.be/3_1AX2drEuA?si=gXME1MIIMu5b_ywz
むか〜〜し、秋田の男鹿半島に、ハチとアリが住んでおった。
「フフフ…オラの体を見ろ!彩りきれいな縞模様…なんという美しさじゃろう?それに、薄く透き通った羽は、天女の羽衣のようだべ?オラは、この村で一番美しいんじゃ〜〜♪」
隣に住むアリは、いつも同じところで、泥まみれになって働いておった。
「えっさ!ほいさ!」
そこへ、ハチが現れた。
「よう!」
「やあ…」
ハチは、アリに言った。
「なあアリどん、働くだけが能じゃねえべ?たまには海でも見て、英気を養ったら?」
「なんだ…うみ?うみ…って、なんだ?」
ハチは、呆れて言った。
「海知らんのか?ほれ、すぐ近くにあるによう?」
「知らん」
そこでハチは、海について話した。
「海は、塩辛〜〜い水が青く光って、ドドドド〜〜ン…ドドドド〜〜ン!と波打ってるだ」
「おもしろそうだなあ?」
「海に、何があると思う?」
「知らねえ」
「魚だよ。魚がいるだ」
「その、さかな…って、なんだ?」
ハチは、また呆れて言った。
「魚も知らんのか?魚は食うと、うめえもんだあ」
「食うと、うめえ?さかなを食ってみてえ」
そこで2人は、魚を獲りに行く事になった。
「オラは、羽でひとっ飛びすれば海に行けるが、アリどんは出来んなあ?」
「オラは、ハチどんの後を追って行くだ」
すると、ハチはひと足先に飛び立った。
「早くついて来いよ〜〜!寒風山(かんぷうざん)を越えると、海だわや〜〜!」
「海だかやあ?」
そして、アリも出発した。
ハチは、アリを置いてさっさと飛んで行った。
アリは、ハチの後をえっちらおっちらとついて行った。
やがて、ハチは海に到着した。
「海の香り!す…す…素敵だなあ…」
と、暫くすると、波間にキラキラと光るものが見えた。
「やややっ?…ニシンの群れでねえか?」
それはそれは、たくさんのニシンが飛び跳ねておった。
「おお〜〜っ?こんなにいちゃあ、目移りしちゃうなあ!じゃが、せっかく獲るんだ。うんとでっけえのを獲るべ」
そして、特別大きなニシンに目をつけ…
「こいつだあっ!」
と、そのニシンに、自分の針でプスっと刺して捕まえた。
「それ!へへ〜〜捕まえた〜〜!捕まえたぞ〜〜!」
そして、獲ったニシンを岩の上に置いて、アリが来るのを待った。
「お〜〜い!のろまのアリど〜〜ん!オラもう、でっけえニシンを見つけたぞ〜〜っ!」
その頃、アリはまだ山越え谷を越えて、海を目指してえっちらおっちらと必死で歩いておった。
「お〜〜い!オラもう、ニシンを撮ったど〜〜!アリどんが着くまでに、魚は逃げちまうぞ〜〜!」
やがて、アリもやっとの思いで、海にたどり着いた。
「あ〜〜っ?」
アリは、初めて見る海に、大感激!
「ひゃあ〜〜たまげた!こいつが海かあっ?凄え〜〜!凄え〜〜!海って、でっけいんだなあ?凄え〜〜!これじゃあ、100万両出しても買えねえずらあ〜〜!」
そして、波打ち際で遊んでみた。
「アリぃ〜〜♪…ありゃあっ!アリぃ〜〜♪」
と、その時…
海の中から、大きな真っ赤な魚が!
「ありゃあ〜〜っ?」
一方のハチは、アリがなかなか来ないので、待ちくたびれて、様子を見にやって来た。
「お〜〜い!のろまのアリど〜〜ん!オラもう、ニシンを獲ったど〜〜!」
そしてようやく、アリを見つけた。
「オラもう、ニシンを……あっ?ありゃりゃ…?」
アリの目の前にあったものは…
「ありゃりゃ……なんと…」
ハチは驚いて、その場にヘナヘナと降り立った。
「アリどん、でっけえタイを拾っただなあ?」
「これ、タイ…というだか?」
ハチは、羨ましそうな目をして言った。
「うんだあ…煮ても焼いても、味は天下一品だあ…」
それを聞いて、アリは嬉しくなった。
「冥利に尽きるだ。ところで、ハチどんの方は、魚を見つけただか?」
ハチは気まずそうに、岩の上を指差して言った。
「も…勿論だとも!ほら、あの岩の上を見ろ。とっくの昔に、ニシンを見つけただあっ!」
「さすが、ハチどんじゃなあ?じゃが、ニシンよりタイの方が、もっとでっけいし、赤くて美味そうだな?」
アリにそう言われたハチは、少し悔しかった。
そして、こんな事を言い出した。
「なあ、アリどん…オラは、見た目にもきれいだし、姿もいい。そのタイは、オラの方に似合うだあ」
ハチのその言葉で、何やら嫌な予感がしたアリは、タイを担いで逃げようとした。
「オラ、とりかえっこは断る…」
ハチは、アリの後をついて行く。
「なあ〜〜友だちのアリどんよう…この真っ赤に染まったタイの鱗を見てみろ?キラキラ光っとる。このオラの美しさには、この赤いタイがちょうどお似合いさ。だから、オラがタイをもらうのがちょうどいい。お前の汚れた黒っぽい色と、このニシンの青黒く汚れた色は、ちょうどよく似合う。だからお前に釣り合うだ。オラの言う事、筋道が立ってると思わねえか?」
ハチの言う事に納得がいかないアリは、とにかく断った。
「思わん。とにかく、タイはオラのだ」
ところが、ハチはしつこい。
「アリどんはニシンじゃ!」
「ハチどんがニシンだ!」
そして、とうとう言い争いになった。
「業突くアリ〜〜っ!」
「見栄バチ〜〜っ!」
こうして、ハチとアリは埒が開かず…
村長の裁きを受ける事になった。
「ど〜〜れ?それなる者、名はなんと……ま、こんな小さな村の事じゃ、知らん訳はないんじゃが、まあ型通りという事で……して名は?」
「オラは、ハチどんと言うだ」
「オラは、アリどんと言うだ」
「双方の諍いは、何が何して何としただ?」
そこでハチとアリは、海での出来事を事細かに話した。
「オラのように、美しい姿をしたのが、タイの持ち主にふさわしいだ。だから、黒っぽいニシンには、黒っぽいアリどんがよく似合う」
ハチの話を聞いた村長は、今度はアリに聞いた。
「ふん…アリどんの言い分は、何と?」
「オラの獲ったタイが、変な理屈でハチどんのものになるというのが、腑に落ちねえだ」
村長は、2人の話を静かに聞いておったが…
「ふんふん…ふ〜〜ん…?」
「んだら、裁きをつける!2人とも、耳をかっぽじいて聞くがいい!」
「は…」「へ…」
村長はまず、ハチに言った。
「まず、ハチどんよ…おめえは、九九を知っとるか?」
「へえ。にいちがに、ににんがし、にさんがろく…でがしょう?」
「その次は?」
「にしんがはち!」
「それよ。にしんがはち、というじゃろうが?じゃから、ニシンはハチが食え」
ハチは、冷や汗をかいた。
「あああ…にしんがはち…?ニシンが…ハチ……」
次に村長は、アリに言った。
「次に、アリどんよ」
「へい…」
「人にものをもらったら、何と言うだ?」
「…ありがてい?」
村長は、首を傾げた。
「ん?もう一度…」
「へへへ…つい地が出ちゃって…ありがたい、です」
アリが言い直すと、村長が言った。
「そうよ…ありがたいじゃ。じゃからアリは、タイを食え」
「ありがたい…?アリが、タイ…ははは♪」
「これによって、アリが獲ったタイは、アリのもの。ハチが獲ったニシンは、ハチのものという事じゃ!友だち同士でも、ケジメをつけにゃあいかん」
「へえ…」「へい…」
そして、裁きは終わった。
「これにて、一件落着!」
それを横で聞いていたイタチどんが、ポツリと一言。
「当たり前の事じゃないの…?」
じゃが、アリはハチと友だちじゃったので、タイは2人で分けて食べたという事じゃ。
「やっぱり、タイは美味いわい♪」
ずっと、昔の話じゃった。
おしまい。
いや…村長さん
ダジャレで解決してしまった
ま…確かに何故か知らん間に現れたイタチどんの言う通り、当たり前の事かも知れんけど
その人が獲ったものは、その人のものやよね
いくら見た目がいいからって、人のものを横取りするのはおかしいよね
「自分は美しいから、美しいタイが似合う」って、アンタ…ナルシストか
それに「黒っぽく汚れたアリは、黒っぽいニシンが似合う」って、それ…人を見た目だけで
なんかそれ…ちょっと差別的な発言にも思えるな〜〜
ゆっとくけど、ニシンも結構美味しいで
京都のニシンそば最高やで😚
この話を初めて見た時は、まだ小さかったし、特にそこまで考えが及ぶ事はなかったけど、今改めて見ると何故かそんな気がしてしまいました
ちょっとダジャレは気になるけど
親しき仲にも礼儀あり…まあ今回の話は、そんな道徳的な意味も含まれた話でしたね
にしても、アリどん…結局タイは半分ずつって、人が良すぎるなあ
まあ友だちやしね…たとえハチが間違っていたとしても、あれだけ欲しがっていたタイがもらえないと分かった時、あんなガッカリしていたし
ちょっと可哀想に思ったのかな
まあハチどんも反省したみたいやし、これからはお互いを思い遣って、仲良く暮らしていけてたらええよね
ところで今回の話は、秋田県男鹿半島が舞台でしたね
この話に出てきた「寒風山」って、どんなところかなと調べてみると
画像は拝借した。
こんなところでした…壮大やねえ
次回は
何だかのんびりしたお話
以上、本日ここまでどす🙇♂️
訪問がアホほど遅れております…毎度ゴメンやす
では〜〜明日もご安全に〜〜
おーきにです〜〜ほなね〜〜