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昔…富士の裾野に、松五郎(まつごろう)という人がおった。
松五郎は、たいへん力も強く心も優しかったので、誰からも好かれておったが、どういう訳か今日まで嫁の来手がなかった。
松五郎は毎日毎日、炭を焼いては暮らしを立てておった。
風のない日など、炭を焼く煙は、富士の山よりも高くまで立ち上った。
その煙は、遠く都からも眺められたので、都の人々は不思議に思い…
ある日、天子様の娘である皇女様が、占い師を呼んで尋ねられた。
「東の空に立ち上る煙は、何であろう?」
すると、占い師の言う事には…
「はい…私の占った限りでは、あの煙は皇女様の婿殿になられる方が立ち上らせる煙ですぞ」
「なに…わたくしの婿殿になられるお方…?」
「左様…あれほどの煙を立てるかまどなら、一度に炊く米は10石(こく)に下りますまい。おそらく、東国のお金持ちでありましょう。京の金持ちなど、比べものにはなりますまい」
今まで縁遠かった皇女様は、お供に乳母を連れて、あの不思議な煙を頼りに、婿殿を訪ねて旅立って行かれた。
来る日も来る日も、皇女様と乳母の2人は、あの煙を目指して、東へ東へと歩き続けた。
「今日もまた上っておる。見事な煙じゃ…」
そうして、明日はもう煙の立ち上る火元に辿り着くというその日に、どういう訳か…
急に、煙が上らなくなった。
というのも、ちょうどその時、松五郎は何かの用事で、故郷の明日見(あすみ)というところへ帰っていたからじゃった。
「昨日まで、あの辺りから上っていたのに…どうした訳でしょう?」
そんな乳母の声をよそに、皇女様は今来た道を振り返り言った。
「婆や…ちょっと見てごらん。なんという美しさでしょう?まるで遠く、京まで見えるようじゃ…」
さすがの皇女様も、故郷を思って涙を流した。
そしてこの峠を越えたら、もう二度と涙は流すまいと心に誓った。
それから暫くすると、人が通りかかったので尋ねてみた。
「この辺りに、竜巻のような煙を出すお屋敷はございますまいか?」
すると、その人は答えた。
「お屋敷はござらぬが…あの煙を出すのは、松五郎どんじゃ」
「おおっ…その松五郎殿じゃ!」
「松五郎どんの小屋なら、ほら…あそこじゃ」
その人が指差した先には、とても人が住めそうもない小屋が1軒あった。
「おお…なんと変わったおうちでしょう?」
「熊でも住んでおるんかいな?」
2人は、暫くその小屋を眺めておったが、再びその人に尋ねた。
「して、ここの主は?」
するとその人は…
「明日見にござっしゃる」
と答えて、去って行った。
2人は、その人の言っている意味がよく分からなかった。
「あすみ…に?」
「明日、見に来いという事でしょう?」
「なんて…勿体ぶったお方じゃのう?」
2人は小屋に近づくと、そっと入り口から中を覗いてみた。
「お留守のようですよ。中は真っ暗で、人影が見えませんもの」
「仕方がありません…今夜は、富士を枕に寝る事に致しましょう」
その夜、2人は富士の裾野を枕に、野宿したのじゃった。
そして、次の日の朝…
「姫様…今日もまた、真っ暗ですよ。一体どうした事でしょう?姫様…京へお帰りになるなら、早い方がよろしゅうございますよ?まったく、何が東国一のお金持ちでしょう…こんなところに、どうやって住めるのでしょう?」
「わたくしも今、それを考えていたところですよ…」
そこへ、昨日と同じ人がまた通りかかった。
「どうしただ?」
「ああ…これは、昨日のお方…ここの主は?」
するとその人は、昨日と同じ事を言った。
「明日見にござっしゃる…」
「まあ…また明日、見に来いと仰るか?」
2人は「明日見」を「明日見に来い」と間違えていたのじゃった。
「その見識が頼もしい…明日まで待ちましょう」
皇女様は特に気にするでもなく、そう言った。
そして、3日目の日にやっと、松五郎に会う事ができた。
その印に、小判を2枚贈った。
2人は、今までの事を松五郎に話した。
すると、松五郎は笑いながら言った。
「ハハハ!ワシとて、あそこには住めません」
というのも、あの小屋はあくまでも仕事場であって、住居は別にあった。
松五郎は、2人を自分の家へ招いた。
「この家も、それほど大した屋敷とは思えぬが…」
乳母は、少し不満げではあったが…
松五郎は、そんな事など微塵も気にせずに話した。
「まあ、都のお屋敷ほどではないけれど、ひとり暮らしにはちょうどいいのですよ。さあ、今度は庭を案内しましょう」
と、連れて行かれた先は…
「まあ…これが、松五郎様のお庭ですか?広々として、気持ちがいいわあ…」
するとそこへ、鴨が2羽飛んできた。
「あの鴨を食べさせてやるで」
松五郎は、鴨に狙いを定めると…
「やあっ!」
と言ったその瞬間、さっき手渡されたばかりの2枚の小判を、鴨に向かって投げつけた。
その2枚の小判は、鴨を2羽とも仕留めていた。
それを見た皇女様は、大いに喜ばれた。
「見事!」
「なんて事…」
乳母は、せっかく贈った小判を鴨に投げつけた松五郎をたいそう怒ったが…
皇女様は、その鷹揚さがお気に召して…
やがて2人は、夫婦(めおと)の契りを結ばれた。
皇女様がその時かぶられた冠は、瓔珞(ようらく)の冠といって、美しい飾りが垂れ下がったものじゃった。
それから、松五郎は名高い炭焼き長者となり、2人は富士の裾野で、何年も不自由なく暮らした。
ところが、ある日の事…
「姫!」
皇女様は、急に重い病に罹られた。
松五郎の必死の看病にもかかわらず、病は日に日に重くなっていった。
ある日の事…
「私が死んだら…あの瓔珞の冠を、峠の上に埋めてくだされ…」
それから7日後に、皇女様は亡くなられた。
悲しみに暮れた松五郎は、遺言通りに瓔珞の冠を峠の上に埋めた。
そこは、皇女様が松五郎に初めてお会いになる数日前に、都に向かって最後のお別れを告げた場所であった。
「あんなに…元気じゃったのに……どうして死んだんじゃ…」
それからの松五郎は、ぼんやりと山を眺めて暮らす事が多くなった。
季節は巡って、次の年の春…
松五郎は、あの峠の上に登ってみた。
すると、そこには驚いた事に…
あの瓔珞に似た美しいつつじが、吊り下がって咲いておった。
松五郎はその花を見て、思わず涙を流した。
そして、その場に倒れて…
皇女様の後を追うようにして、死んでいった。
その時、松五郎の最期の目に映った景色は、皇女様が最後に都に向かって別れを告げた、あの景色と同じじゃった。
それ以来、土地の人々はこのつつじを「瓔珞つつじ」と呼ぶようになったという。
おしまい。
小学生の時に見た話です…なんや妙に悲しい話で
ず〜〜っと心のどこかに引っかかっていた話でした
最近動画を見つけて、改めて見直してみると、再び悲しみのどん底に突き落とされました
まあ…皇女様が亡くなられたのは仕方ないにしても、何も松五郎まで亡くなる事ないやん
と、ずっと思っていたから
まさかあんな早死にしちゃうなんてね🥲
きっと松五郎さん…皇女様が亡くなった事で生きる気力まで無くして、ろくに食事も睡眠も取ってなかったんやろな😓
でもまあ、この2人は…てゆーか、松五郎さんは勿論の事やろうけど、皇女様も身分を捨ててまで松五郎さんと一緒にいるほうが幸せやったみたいやし
それを思えば、あの占い師の予言は当たってたのかもね
そうでも思わんかったら、2人共報われへんやんわ〜〜〜ん
それともうひとつ気になったのが、なんで皇女様ともあろう身分の高いお方が…野宿なん
どこか、宿を借りるとか出来たやろうに…なんで
ま…まあ、この話が実話か逸話か御伽話かは知らんけど
ただこの「瓔珞つつじ」についての言い伝えは、実際に山梨県の天子ヶ岳(てんしがたけ)という場所にあるようです
が、かなり何通りもの伝説があって、やっぱり謎です
一説によると、皇女様は生まれつき病弱やったとも書かれてありました🤔
ところで、皇女様が婚礼の時に被られたという「瓔珞」ですが、昔は雛人形などに飾られていたみたいですね
画像は拝借した。
他にも能楽とか神楽とか伝統芸能の道具(被り物?)にもあったような気がします
けど、なんやちょっと重そうやな
今回の話は、松五郎さんが皇女様の瓔珞を埋めた場所から、その瓔珞に似た花が咲いたという話でしたが
画像は拝借した。
残念ながら、私はまだ一度も見た事ないけど
鈴なりになっていて、かわええですなあ
機会があれば一度、実物を見てみたいもんです
ところでこの花、天子ヶ岳以外でも見られるんかな☺️
次回は
「あいつ」に出会わないために、必死のパッチで山道を急ぐ牛方さんの話ホレ急げ急げ💨
以上、本日ここまでどす🙇♂️
訪問がボケるほど遅れております…毎度ゴメンやす
では〜〜明日もご安全に〜〜
おーきにです〜〜ほなね〜〜