秋田県の昔ばなしです。
https://youtu.be/egYau0AnBHs?si=W2XAASGKyaUms-j4
昔むかしの話じゃ。
十和田の湖にな、1人の女神が住んでいたんじゃ。
奥入瀬川(おいらせがわ)に雪解け水が流れ込む頃になるとな、日もあったかだで、女神は機(はた)を織りながら、歌を歌うたんじゃ。
その歌は、ブナの森を通り抜けてな、遠い遠い山々まで流れていったさ。
その頃、秋田の男鹿半島にな、赤神(あかがみ)が住んでいたんじゃ。
赤神は笛を吹くのが好きでな、毎日毎日1人で、男鹿の岬や、二ツ目潟や、八郎潟のほとりでな、笛を吹いていたさ。
そしたら、陸の方から優しい風が吹いてきてな、その風に乗って歌が聴こえてきたんじゃ。
赤神は笛を吹くのをやめてな、じ〜〜っと耳を澄まして、その歌声を聴いた。
そのうち赤神は何だか、その歌声が自分を呼んでいるような気がしてな、岬を上ると、高〜〜い山に登って、その歌の聴こえる方を眺めたんじゃ。
山を越えたず〜〜っとず〜〜っと遠くにな、ブナやカエデの大きな森があってな、その森に囲まれて湖がキラキラ光っていた。
歌は、そっちの方から風に乗って聴こえてくるさ。
赤神は山を下りて、そ〜〜っと湖に近づいてみたんじゃ。
湖じゃあ、女神が機を織りながら歌っていたじゃ。
赤神は、女神を一目見ると、きれいな人じゃあ…って言ってなあ、いっぺんに好きになってしまったさ。
それからっちゅうもの、赤神は毎日、山を越え谷を渡って、女神のところへ遊びに来た。
赤神は、女神の歌う歌に合わせて笛を吹いたり、水の玉なんかで遊んだりしてな、随分楽しくしていたんじゃ。
ちょうどおんなじ頃な、津軽の龍飛には、黒神(くろがみ)が住んでいたんじゃ。
黒神は荒っぽい気性でな、いつでも4頭の龍を従えて、空を駆け回っていたんじゃ。
ある日な、黒神は虫の居所が悪くてな、雲を巻き起こして暴れ回っていたさ。
いくら暴れても、腹の虫は治まんねえ。
そこで、八甲田山に駆け上がると、頂上の頭を蹴り飛ばしたさ。
それでも、腹の虫が治まんねえ。
どうしたもんだろうと、辺りを睨みつけているとな、どこからか、きれいな歌声が聴こえてきたんじゃ。
誰が歌っているんじゃ?
黒神は、耳を澄ましてその歌を聴いた。
すると、腹の虫もたちまち治まってな、何だかうっとりするような、いい気分になってきたんじゃ。
黒神は、誰が歌っているんじゃろう?と思ってな、山を越え谷を越えて、十和田湖までやって来たんじゃ。
湖では、女神が歌っていたさ。
黒神は、女神を一目見るとな、なんてきれいな人だあ…と言ってな、いっぺんに好きになってしまったんじゃ。
それからっちゅうもの、黒神はな、鯨がとれたっちゃあ鯨を持って、猪がとれたっていっちゃあ猪を持って、女神に会いに行ったんじゃ。
黒神は、女神のところに行っちゃあな、荒れ狂った海を渡る話や、渦巻く雲に乗って空を駆ける話をしたさ。
何だかそうしていると、黒神は自分の体ん中に、不思議な力が湧いてくるような気がしたんじゃ。
やがて夏が来てな、湖の水はお日さんの光でキラキラ眩しいほど光った。
でもな、女神の胸ん中は、日を増すごとに暗くなっていったんじゃ。
それはな、この頃では、赤神と黒神が湖で顔を合わせちゃあ、自分の事で言い争いをするようになってしまったんじゃ。
女神は、心の優しい赤神も好きだったし、荒々しい黒神にも惹かれる。
だけどこればっかりは、両方とも好きだって言ったって治まらねえ。
それを思うと悲しくて悲しくて、身が裂けそうになるんじゃ。
そんなある日の事じゃ。
とうとう赤神と黒神は、力を競って喧嘩になっちまった。
赤神は、鹿の群れを飛ばして黒神に迫り、黒神は、4頭の龍を飛ばして赤神に迫る。
喧嘩は、だんだん激しくなってな、そりゃあもう治まるもんじゃねえ。
女神はただ、ハラハラして見るよりしょうがねえ。
地上は山鳴りがゴーゴー音を立て、湖の水は荒れ狂って波立つ…大変な事になってしまったんじゃ。
その事を知った、陸奥(みちのく)の神々はな、この喧嘩を見物しようと、津軽の岩木山に集まったさ。
赤神を勝たせたいと思う神は、山の左手に…
黒神を勝たせたいと思う神は、右手にとな…
2つに分かれて、それぞれを応援した。
こん時、黒神に味方する神の方が数も多くてな、乱暴者ばっかりなもんでなあ…
大声あげて、足を踏み鳴らしているうちにな、あんまり激しくするもんで…
とうとう、岩木山の右肩は踏み崩されて、低くなっちまったというんじゃ。
赤神と黒神の喧嘩は、両方が力いっぱいに争うから、なかなか勝負がつかなかった。
それでも、やっぱり黒神の方が力が強くてな…
氷で研いだ剣を振り上げて、力の弱った赤神の鹿の群れの中に龍を飛ばして、一気に突っ込んだ。
そして鹿を片っ端から、天高く吹き飛ばしてしまったんじゃ。
赤神も、黒神の剣に突き刺されて、怪我をしちまったさ。
赤神は、傷から落ちる血でな、地上を赤く染めながら、男鹿の半島に逃げて行ったんじゃ。
勝った黒神は、大声で勝鬨(かちどき)を上げるとな、龍に乗って天高く舞い上がった。
やがて、空の雲も去ってな、湖の水も静かになったさ。
黒神は、これで女神は俺のもんだって思ってな、湖に降りてきたんじゃ。
だけど、湖のどこにも女神の姿はなかった。
女神は、喧嘩に負けて傷ついた赤神が可哀想だと言ってな、男鹿の半島に赤神を追って行っちまったんじゃ。
黒神は、それを知るとな、くたびれた重い足を引き摺りながら、仕方なく津軽に帰っていった。
もう津軽じゃ、雪が舞い始めてなあ…
黒神は、龍飛に辿り着くと、ドス〜〜ンと腰を下ろしてしまったさ。
そして、大きな溜め息を何度もついた。
あんまりにも、その溜め息が凄いもんでな…
黒神の足元の地面が、ミシッミシッと裂けてしまったんじゃ。
こん時から、津軽と蝦夷(えぞ)は2つに裂けて離れたという事じゃ。
その間の海が、津軽海峡になったという話じゃ。
おしまい。
この話は、私が物心つく前に放送された話やったから、少し大きくなってからアニメ絵本で初めて読んで、その後テレビの再放送で見た話でした
とはいえ、まだ小学生の私にはイマイチ意味が分からんかったねんけど
しかしまあ、今またこーやって改めて見てみると、女神も罪な人ですよね…両方好きなんて
まるでこのCMみたい
画像は拝借した。
ほんで、なかなか決められへんから
画像は拝借した。
こーなってしまった…なんちゅー贅沢な悩みやろう
すいませんちょっとフザけてしまいました←悪気ゼロか🤣
にしても、神とは名ばかりとゆーか、随分人間っぽい感情を持った神たちですな
まあ…女神が赤神を追って行っちゃったのも分かる気がするけど
勝ったのに取り残された黒神って、一体…
なんか妙に不憫でないかい
つまり「負けるが勝ち」とゆーか、力だけでは勝てないって事なんでしょうね
てゆーか赤神そんな流血して…ありゃ致死量やろ
それとも神様はあれぐらいでは死なないのかな😅
結論
画像は拝借した。
って事か
KANさ〜〜ん見てるかな😆?
アナタの言葉は正しかったんですね😊
それはさて置き
今回の話は、その土地の由来話
太古の神々の仕業
?で、その土地が成り立つという話は、日本のあちらこちらにありますよね
昔ばなしにも、土地の由来話が色々あります
きっと世界にもあるでしょうね☺️
その殆どが、神様の仕業やったりします
今回は、津軽海峡の成り立ちの話でしたが、そっか〜〜黒神の仕業やったんやな
黒神がもしあの時勝っていたら
←いや実質勝ってるんですけどね🤣
溜め息なんかつく事もなかったやろうから
じゃあ石川さゆりさんのあの名曲も、誕生しなかったかもね
ちなみに「津軽海峡冬景色」は、この昔ばなしが放送された翌年の1977年にリリースされたそうです
←調べた😁
そっか、昔ばなしのほうが先やったんか〜〜そりゃ知らんかったわ
また、赤神は男鹿に住んでいるから、鹿を従えていて
黒神は龍飛に住んでいるから、龍を従えていたんでしょうね
ところで余談ですが、今回の話は全て、常田富士男さんのナレーションのみで展開されています
常田さんの語り、何とも味があってええよね
市原さんの語りも好きやけどね😚
かと言って、市原悦子さんの出番がなかった訳ではなく、でも最初の女神が歌う歌声だけの出演なんよね
それって2人ギャラ同じなんかな😅←って下世話か😁
もひとつ言わせてもらうと、女神さん…機を織っているとゆー事ですが、私にはどーしても竪琴を弾いているようにしか見えないんですけど
また今回の話は、絵がちょっと洋風な感じのせいか、あまり日本の話っぽくないな〜〜なんて思ってしまいました
ちなみに、今回の話の作画を担当された馬郡美保子さんは、他にも「安珍清姫」「耳なし芳一」「地獄めぐり」など、作画の担当を多数されています
切り絵やちぎり絵のような、美しい画風が特徴の人ですね
馬郡さんの絵の時は、殆どが静止画で、カメラワークだけで動きをつけているような作風が多いんですが
それに慣れているからか、逆にあの絵がアニメっぽく動いたほうが、なんか違和感があるような気がします
馬郡さんの絵のお話は、来年の昔ばなしにもいくつか予定しています
2024年の昔ばなしのお話予定リストができました
よかったら見てねん
来年も昔ばなしを宜しくお願い致します
以上、本日ここまでどす🙇♂️
訪問がアホほど遅れております…毎度ゴメンやす
では〜〜明日もご安全に〜〜