栃木県の昔ばなしです。
https://youtu.be/hcnfK0a7c6Y?si=14U_EaYDMAhE2Aed
昔…栃木県の喜連(きつれ)川と馬頭(ばとう)を結ぶ「馬頭街道」と呼ばれる道は途中、家一軒ない深い山の中を通っておりましたそうな。
その山また山の寂しい街道から、少し南へ下がったところに、平野(ひらの)という村がありました。
「わ〜〜い!」
「いたいた!いたど〜〜!」
「そっちだい!そっちだ!」
「わ〜〜!」
「そ〜〜れ!入ってる入ってる!」
「いっぱい取れただな?」
川で魚をたくさん取った子どもたちは、意気揚々と帰り道を急ぎました。
「夕げのおかずは魚にしよ!」
「ほいさ!ほいさ!」
するとその魚を狙って、キツネの親子が草むら越しに、子どもたちの後をつけています。
「あれ?…キツネじゃ」
「はは〜〜ん?これを狙ってるだな?」
「そ〜〜ら!食べれ!」
子どもたちは、惜しげなく取った魚をキツネの親子に分けてやりました。
「また来いや〜〜!」
村は、小さいながらも豊かな自然に恵まれて、人々も山の動物たちも、それは平和に幸せに暮らしておりましたそうな。
ところが、ある時…
村に近い街道の二ツ道に分かれた辺りに、追い剥ぎが住み着いたのです。
追い剥ぎは、岩穴の中で聞き耳を立てて、人が通るのを待っている様子…
すると、外から足音が…
「フン…フンフン…来たな?へへへ…ここなら、どっちの道を来ようと見逃しっこねえ。挙げ句が、近くに家一軒ねえとは、全くもっておあつらえ向きだぜ…」
「へへへ…来た来た…何も知らずに来よるわい。へへへ♪」
そこで追い剥ぎは、岩穴から飛び降りて、通行人を脅しました。
「待て〜〜!荷物を置いてけ!」
「うわあっ⁉︎」
驚いた通行人は、慌てて逃げようとしました。
ところが、追い剥ぎに引きずり戻されてしまいました。
「待て!おとなしく言う事を聞かねえと、命をもらうぞ!」
「いやあ〜〜っ!」
通行人は無理矢理、荷物やら着物を剥ぎ取られて…
「あ〜〜助けてくれ〜〜!」
命からがら逃げて行きました。
「フフフ…こいつは、こたえられねえぜ♪ハハハ!」
翌朝…
「恐ろしい事になったのう…」
「これじゃあ、野菜や薪を売りにも行けんぞ…」
親子のキツネは、村人たちをたいそう気の毒に思いました。
そしてまた、今夜も…
「身ぐるみ脱いで、置いてけ!」
「きゃあ〜〜っ!」
追い剥ぎは、相手が女だろうが子どもだろうが、容赦ないのでした。
「い…命だけは助けて!」
そして親子は、着物を剥ぎ取られて、逃げていってしまいました。
「いやあ〜〜っ!」
「へへへ…♪」
キツネは、追い剥ぎを懲らしめる手立てはないものかと考えるのでした。
それから2〜3日経った、雨模様の夜の事です。
岩穴の中の追い剥ぎは、外が雨だとは知らず…
「フフフ…酒が美味いのう…どれ、今夜はひとつ、金めの物を頂戴するか…」
すると、岩穴の入り口から雨の雫がポツリ。
「ん…雨か?」
ところが、こんな雨の日でも、通りかかる者がいたのです。
「ほう…3人連れか。しかも、とびきり上物ときたぞ♪」
3人の親子は、追い剥ぎのほうへ近づいてきました。
「待て〜〜!」
追い剥ぎは飛び降りて、母親の持っている提灯を切り裂いてしまいました。
「あ〜〜っ?」
驚いた母親は、思わず悲鳴を上げました。
「よう来た…身ぐるみ、ここへよこせ!」
「あれ…あれ…あれ〜〜っ!」
そして…
「助けて〜〜っ!」
親子から着物を剥ぎ取った追い剥ぎは、意気揚々と穴の中に引き揚げました。
「よっと…!へへへ…明日は、たんまり金が入るってわけだ♪」
追い剥ぎは、親子から剥ぎ取った着物を手拭いで束ねると、それを枕にして眠りました。
そして翌朝…
「へへ♪……えっ?…ありゃ?」
追い剥ぎが目を覚ますと…
「な…な…なんじゃこりゃ⁉︎」
どういう訳か、枕にしていた着物が、いつの間にか木の枝の束に変わっていたのでした。
「おのれ…キツネの仕業だったのか?道理で惜しげもなく…忌々しいキツネめ…」
地団駄踏んだ追い剥ぎは、夜が更けるのを手ぐすね引いて待ち構えました。
「ゆんべは、まんまと騙されたが…今夜は断じて騙されねえぞ!……おっ?」
すると向こうから、何やらピカピカ光る物体を持った男がやってきました。
「なんじゃ?あの光る物は…またキツネかも知れん。用心用心…」
と思いつつも、追い剥ぎは男の前に降り立ちました。
「待て〜〜っ!」
そして用心しいしい、男の周りを見渡してみました。
「シッポもねえようだし、太っちょだし…どうやらキツネじゃなさそうだな?」
「こりゃ!その担いでるもんを置いてけ!」
ところが、男は一向に動じず…
「冗談こくでねえ!こりゃあ世にも珍しい七色の石だ。渡せねえよ」
追い剥ぎは、一瞬ポカンとしましたが、気を取り直して…
「やいやい!渡さねえと、命がねえぞ!」
ところが、男はやっぱり…
「何てったってダメだ!長者屋敷で、大金と換える約束だで…ちょっとどいてくんろ!」
男はそう言うと、追い剥ぎを力づくで押し除けて行こうとしました。
「うわっ⁉︎やったな〜〜…やあっ!」
頭に来た追い剥ぎは、男に飛びかかりましたが、簡単に跳ね返されました。
「どわっ!…おのれ……やあ〜〜っ!」
ところが、男が「ほれ!」と、ひらりと翻って回避したので、追い剥ぎは前につんのめりました。
「えっ…ありゃ⁉︎」
「あたっ⁉︎」
「よ〜〜し……やあ〜〜っ!」
岩の上から、男に突撃しました。
ところがその努力も虚しく、男が持っていた光る石にぶち当たって、持っていた刀が真っ二つに折れてしまいました。
「あれ…?」
丸腰になってしまえば、さすがの追い剥ぎもただの男です。
その無様な格好を見た男は…
「とんまなやっちゃ…ほれよ!」
と言って、持っていた石を思い切り地面に叩き落としました。
その物凄い地響きに驚いて…
こうして、追い剥ぎはたいそう痛めつけられて、ほうほうの体で、どこか遠いところへ逃げていってしまいました。
そして男が去ると、ピカピカ光る石も、ただの石になってしまいました。
「ほら、あそこだ!」
「また跳ねたど〜〜!」
「おるど!おるど〜〜!」
「それ、いたぞ!」
ようやく平野の村に、平和が帰ってきました。
村の人たちは、安心して街道を通れるようになった事を、たいそう喜びました。
けれど、それがキツネの親子の働きによるものとは、誰も知りませんでした。
おしまい。
この話ホンマ大好きで
わざわざキツネの手柄という事は言わなくても、自ずとキツネが村を救ったって事が分かるような、とても秀逸な演出やなと思います←とりあえず元アニ研部らしい感想言ってみた😁
キツネさんも、日頃から村人たちと仲がよくて、魚をもらったり親切にしてもらっていたから、恩返しの気持ちもあったのかもね
しかも、人知れず村を助けるなんて、カッコイイ
こーゆーのがホンマの正義の味方なんやろなと思います
ちなみに、この話を小学生の時に見た私は、この話で「追い剥ぎ」という言葉を知りました←けど既に時代遅れな存在やよね😁
ところで、この話が実話かどうかは分からへんかったけど、その昔栃木県には実際に「馬頭街道」と「二ツ道」という道があったそうです
その後、その場所はゴルフ場に開拓されたため、道は無くなっちゃったみたいですけど
そのゴルフ場も、現在は廃業して存在しないそうな…時代と共にそーやって景色も変わっていくんですね
さて〜〜次回は
お婆さんが見た、不思議な世界のお話
以上、本日ここまでどす🙇♂️
訪問が騙されるほど遅れております…毎度ゴメンやす
では〜〜明日もご安全に〜〜
おーきにです〜〜ほなね〜〜