どもども…週末昔ばなしやよ〜〜口笛

今回も、チョー定番の話…自粛続きですが、この引きこもりライフを少しでも楽しんでいただけるように、これからもいい話を紹介してまいりますにやり

よろしければ是非、お子さまとご覧くださいませ照れ


https://youtu.be/9wP_4_IJJOc

青森県(新潟県)の話です。
昔むかし、あるところに、それはそれは気のいい爺さまと婆さまが住んでおりました。

こんな爺さま婆さまに、前山(まえやま)のうさぎもすっかり懐いて、毎日のように遊びにやって来ましたが、爺さまも婆さまも、そのうさぎを本当の娘のようにかわいがっておりました。
そこへ、イタズラだぬきがやって来ました。

このたぬき…乱暴者で、おまけに人並み外れた食いしん坊ときておりましたから、爺さまも婆さまもすっかり手を焼いておりました。

この日も、勝手に婆さまの漬けたタクアンをポリポリと…

そして、勝手に爺さまの笠とクワを持って出ようとしていました。

それに気づいた爺さま…

「あっ? コリャ〜〜笠返せ〜〜! クワ返せ〜〜!」

そこで、たぬきはその笠とクワを、屋根の上に放り上げてしまいました。

「あ〜〜この悪たれが〜〜!」
すると、たぬき…今度は、爺さまに向けて、後ろ足で土を掘り起こして、ぶっかけ始めました。

「うわ〜〜っ! この悪たれたぬきがぁ〜〜っ!」
「へへへ〜〜っ」

たぬきは、イタズラそうに笑うと、さっさと山へ帰って行きました。

さて、翌日…爺さまが畑を耕しておりますと、例のたぬきが現れて、畑にある石に腰掛けて、横に爺さまが置いておいた、畑に蒔くための豆の入ったザルを持って、豆を勝手に食べながら、こうはやし立てました。

「アホの爺さま、クワ持って、豆もないのにホイサッサ♪」
「あっコラ‼︎」
爺さまが、たぬきを追いかけようとすると…ボテッ‼︎

さっき、たぬきが腰掛けていた石につまずいてしまいました。

「へへへっ」

たぬきは意地悪そうに笑って、空になったザルを持って、逃げてしまいました。

爺さまは恨めしそうに、さっきつまずいた石を見ていましたが、ふと、ある事を思いつきました。

そして次の日も、爺さまは畑に行って、昨日耕した畑に、豆を蒔き始めました。

するとまた、たぬきが現れて、石の上で爺さまをからかいました。

「アホの爺さま、豆蒔きゃ、たぬきのポン太がほじくるぞ♪」

爺さまは、たぬきに向かって拳を振りかざして叫びました。

「コリャ〜〜‼︎」

そこで、たぬきがまた逃げようとしましたが、足が石にくっついて、離れません。

爺さまは、石の上にとりもちを塗っておいたのです。

たぬきは、手足を縄で縛られ逆さ吊りにされて、爺さまの家へ連れて行かれました。
そして、爺さまと婆さまはたぬきの前で、わざとらしくこんな話をしました。

「婆さま、今夜はたぬき汁としようかのう?」
「はいはい。じゃ、汁に入れる白い団子を作って、待ってましょうのう」

そう言って爺さまは、畑へ出かけて行きました。

たぬきは、その間に何とか、婆さまに縄をほどかそうと考えておりました。

そして…

「(よし、泣き落としの手だ)…え〜〜ん婆さま、オラは何ちゅう罰当たりを…せめて死ぬ前に、今までの罪滅ぼしをして、死にてえ…」

婆さまは聞かぬふりして、せっせと団子作りに取りかかりました。

なあ婆さま、この縄をほどいてくれ…オラ婆さまの手伝いがしてえ…婆さま、お前さまは年寄りだ…オラせめて、婆さまの手伝いしてえ…婆さまの孝行してから、たぬき汁になりてえ…なあ、死ぬ前のたった一度のお願ぇだ…なあ婆さま…」

気のいい婆さまは、たぬきの話に負けて、縄をほどいてやりました。
そして、たぬきに杵を渡しました。

「ホレ、手伝え」

たぬきは杵を受け取ると、意地悪な目つきで言いました。

「ほんじゃ、つかせてもらおうかの?…さて、何をつこうかの?」

婆さまが驚いて、たぬきに聞きました。
「へ? 粉じゃないのかい?」
「婆さまをつくんじゃい‼︎」
「ええっ⁉︎……あああ〜〜っ‼︎」

そこへちょうど、爺さまが畑仕事から帰って来ましたが、婆さまの悲鳴を聞いて家の前まで行くと、中から出て来たたぬきと鉢合わせ。

「あっ…この悪たれが…婆さまをどうかしたんか⁉︎」
「婆さまは寝とる。もう起きる気づかいはねえや!」
「ええっ⁉︎」

爺さまは驚いて、慌てて家の中へ入ると、そこには婆さまのすっかり変わり果てた姿が…

「婆さま〜〜っ‼︎…婆さま…」

本当に酷いたぬきでありました。

婆さまを亡くした爺さまは、いつまでも婆さまのお墓の前で泣きました。

そんな爺さまを見ていた 前山のうさぎは「かわいがってくれた婆さまの仇は、きっと私がうちます」…と、爺さまを慰めました。
それから、幾日か…うさぎはおめかしをして、山の畑の石の上で、たぬきが出て来るのを待ちました。

そこへ、例のたぬきがやって来ました。

「うさぎどん、何してんだ?」
「アンタを待ってたんだよ」

たぬきは、うさぎが自分を待っていたと言うので、上機嫌です。

そこで、うさぎがたぬきに言いました。

「焚き木拾いをしたいんだけど、オラ、足が痛くて…」
「オラに任せろ。山ほど担ぐでよ…へへへ」
たぬきは、うさぎを自分の嫁さんにしてやろうと思ったんでしょう…騙されたとも知らず、重い焚き木を背負って、山を降り始めました。

そして後ろを振り向くと、うさぎがうずくまっています。

「どうした?」
「足が痛いの…」
「よ〜〜しよし…よっこいしょっと」

たぬきは、うさぎを焚き木の上に背負ってやると、また山を降りて行きました。

「フフフ…今にうさぎを、オラのもんに…」

たぬきは、そう思いながら山を歩いているうちに、何やら後ろの方で、カチカチという音がします。

「おい、うさぎどん。カチカチいうのは何事じゃ?」

すると、うさぎはたぬきに言いました。

「カチカチ山のカチカチ鳥が鳴いたんだよ」
「そうかい、そうかい…」

実は、うさぎが火打ち石で、たぬきの背負った焚き木に火をつけようとしていたのです。

やがて、火打ち石から火が出て、たぬきの焚き木に火がつきました。

すると今度は、たぬきの後ろの方で、何やらボーボーと音がしています。

「おい、うさぎどん。ボーボーいうのは何事だ?」
「ボーボー山のボーボー鳥が鳴いたんだよ」
「そうかい、そうかい」

やがて、たぬきの背負った焚き木は、勢いよく燃え始めました。

そして、うさぎはそっと焚き木から降りて、向こうへ逃げてしまいました。

そうこうするうちに、たぬきは自分の背中がやけに熱いのに気づきました。

「何だか熱いなあ…?」

そしてだんだん、背中がジリジリと…

「うわあっ‼︎ あちゃちゃちゃっ…あちゃ〜〜っ‼︎」
気がついた時には、たぬきの背中は大火事…一目散に谷川めがけて飛び込みました。

ザッパ〜〜ン‼︎

背中に大火傷を負ったたぬきは、這々の体で山を降りました。

そしてまた、次の日。

「今度あのうさぎを見つけたら、タダじゃおかんぞ〜〜?…ありゃ?」

たぬきはそう思いながら歩いていると、早速うさぎを見つけました。

うさぎは、スリコギで何かを一生懸命作っています。

「この〜〜っ! …よくもよくも…」

ところが、うさぎはキョトンとして、たぬきに言いました。

「どうしてあたしをぶつの?」
「はぁ?」

そしてうさぎは、こう言いました。

「人違いしないで。あたしは…」
「前山のうさぎじゃろ?」

うさぎは、続けてこう言いました。

「前山のうさぎは、前山のうさぎ。あたしは中山(なかやま)のうさぎだよ」
「えっ…中山のうさぎ?…ホントかや?」

うさぎは、たぬきを騙すと、すました顔でこう言いました。

「アンタ、火傷しているようね? このすり味噌は火傷の薬よ。ピッタリ治るよ」
「おう、こりゃありがてえ…塗ってくれや、中山のうさぎどん」

待ってましたとばかり、うさぎは、カラシの入ったすり味噌を、たぬきの背中にベッタリと塗ってやりました。

「ぐぐ…ギャ〜〜っ‼︎ しみ…しみ…しみるぅ〜〜っ‼︎
そしてまた、一目散に谷川めがけて…ザッパ〜〜ン‼︎

そしてまた、次の日…背中の火傷にカラシ味噌をすり込まれた たぬきは、もうフラフラになって…

「今度、うさぎの奴を見つけたら…ありゃ?」

たぬきが見ると、うさぎはノコギリで板を切っておりました。

「この〜〜っ! よくもよくも…」

するとまた、うさぎはキョトンとして、たぬきに聞きました。

「どうして、ぶつの?」
「はぁ?」
「人違いじゃない? あたしは…」
「中山のうさぎだろ?」

そこでうさぎは、また…

「中山のうさぎは、中山のうさぎ。あたしは後山(あとやま)のうさぎだよ」
「後山のうさぎ?…ホントか〜〜?」
「あたしは、あたしよ」

うさぎはまたも、たぬきを騙しにかかりました。

「な、たぬきどん。アンタ魚食べたくない?」
「魚…? 食いて」
「じゃ、船を作るのよ。あたしはこの板で板船を作るの。そして谷川を漕いで行って、大きな魚取るの」
「オラも作るだ。魚食いてえだから」

そこでうさぎは、たぬきに言いました。

「軽いうさぎは軽い板船でも、重いたぬきどんは重い泥船でなきゃダメよ」
「泥船? ナルホド〜〜泥船ならすぐ作れるぞ」

騙されているとも知らないで、魚が食べたいばっかりに、たぬきはせっせと泥の船を作り始めました。
そして、出来上がった泥船を川へ浮かべました。

すると、うさぎが泥船を突いて言いました。

「さっ…魚取りよ。それ行け〜〜っ‼︎」
「うわぁ〜〜っ⁉︎」

泥舟に乗せられたたぬきは、川の中へと入って行きました。

でも、泥の櫂(かい)は水に濡れると、ドロリと溶けてしまいました。

「どうした? たぬきどん⁉︎」

うさぎは、持っていた櫂で、たぬきの泥船を川の向こうへと押していきます。

「うわぁ〜〜やめてくれぇ〜〜っ‼︎」
「それ、もっと深いところに行かなきゃダメよ⁉︎」

そのうち、泥船に水が染みて来て、そのため底が抜けて、たぬきの足がズボっと突き出てしまいました。

「うわ〜〜どうしよう⁉︎ 助けてくれぇ〜〜っ‼︎」

そしてうさぎは、たぬきに向かって叫びました。

「婆さまの仇…思い知れ〜〜っ‼︎」
「ああっやっぱりお前は、前山のうさぎかっ⁉︎」
「知れた事…さぁもっと深いところに行って、魚を取れ〜〜っ‼︎」

そして、うさぎはまた、櫂で泥船を川のもっと深いところへ押しやりました。

「うわぁ〜〜許してくれぇ〜〜っ‼︎」

そしてとうとう、泥船はザックリと砕けて、たぬきは溺れて、川の底へ沈んでしまいました。

うさぎは、婆さまを殺したたぬきを許す事ができなかったのです。

カチカチ山のお話…これでおしまい。
(語り 市原悦子)

バイバイ照れ音符