一話にまとめようとしたお話の後半戦です。
前回から2日しか経ってないので、ここに書くことが思いつきませんの。
しいて言えば、あれですか。
月曜に忘年会があったわけですよ。
月曜から忘年会ですよこんちくしょう。
久しぶりにビール一気飲みとかしてました。
二日酔いにはならなかったけど、週初めの飲み会はきくね…うん。
今週、働きたくないですw
てなわけで、gdgdですが、どうぞ↓
樹も流石に耳を疑った。
「…事故ではなく、故意だったのか?」
まぁ、と銀子は悪びれる様子は無い。
元々感情が読み取りづらいせいかもしれないが、それでも飄々と言う。
「正確には、樹の食事に薬を混ぜて、
毒きのこは後から食事に混ぜたんですけどね。」
確かにあの感じは、薬品のような感覚だった。納得だ。
「…あの少年は?あれは演技だったのか?」
「いさみの力は本当です。確かに、いさみには事前に説明しましたけどね。
流石に自分の拾ってきたきのこが毒きのこだったなんて思ってしまえば、
あの子にとって酷い心の傷になるでしょうし。」
腕を組んでうなずく。
「そうか、それはよかった。それで、何故わざわざそんなまねをした?
殺すための毒じゃないな、あれは?」
銀子の表情が少し歪む。まいったな、という表情に見えなくもない。
「雫を、救って欲しかったからです。」
どうやら、悪意を持ってやったわけではなさそうであった。
無論、勘にすぎないが。
「何か事情がありそうだな。説明してくれないか?」
そうですね、と銀子は軽いため息をついた。
外で話しませんか、と言う銀子に従い、部屋の外に出る。
寝ている雫を一人部屋に残し、樹と銀子は外に出た。
銀子の表情が心なしか堅く見える。
ひょっとしたら彼女の内面は、もっと豊かな感情に溢れているのかもしれない。
推し量ることしか、今は出来ないけれども。
「紡が亡くなってから、雫自身はは隠していつもどおり振舞ってはいましたが、
私からすれば、もう抜け殻のようだったのです。」
「希望を失ったような?」
「そうですね、彼女が気持ちを打ち明ける相手が紡以外にいませんでしたから。」
そして、と銀子は改まる。
「事を思いついたきっかけは、
紡の息子であるあなたが、島に渡ることだったのですが。」
銀子は少し考え込んでいた。どう話すものか、整理しているのだろう。
窓の外を少し眺めてから、また口を開き始めた。
「とりあえず、雫はどこまで話しました?」
「火事で両親を失い、妹とも別れて居場所を無くしたこと、
その時母と出会って暮らしはじめたこと。大きくその二つかな。」
生徒の答えを聞く教師のように、うんうん、と銀子はうなずく。
「雫にとって紡は、生きる意味も同然でした。母親代わりでもあり、生きる居場所でもあり。」
「そして、唯一自分を打ち明けれる人物だったのか。」
「そうです。そして雫は、その紡を亡くしました。
先ほど言ったように、抜け殻、です。」
「成る程。それを救うのに、私に白羽の矢がたったと?」
「直感と独断でしたけどね。紡の肉親なら、と思ったのです。」
「おおよその意図はわかった。」
事情は納得した。しかし、行程は納得はいかない。
「何故君自身が、私の母の役割をしなかった?」
銀子は真剣なまなこですぐに返す。
「逆に聞きましょう。何故私に、その役割ができると思いました?」
少し返答には戸惑った。あくまで推測だからだ。
「単に、親しそうに見えたからだ。
最初に雫に会ったときに思ったが、ある程度の交友があったから、
チャイムも押さずに縁側から寝室に踏み込んだのだろう。
そして食事の時に手伝いをしていたところを見ると、
家の勝手まで知っている仲、そう考えただけだ。」
銀子は感心する。
「素晴らしいですね。確かに雫とは交友があります。しかしですね。」
その笑顔が少し、寂しげにも見えた。
「私には、人の感情を汲み取れる人間性は備わっていないのですよ。」
少し考え込む樹。
「私も偉そうには言えないけどな。
大切なのは出来るか、出来ないかじゃなくてやるか、やらないか、だとは思う。」
と、いうか思った。と、一瞬付け加えかけて、やめた。
そうですけどね、といぶかしる。
「ご立派ですが、実際には難しいものですよ。」
「そうだな、確かに。」
自分のさっきの行動は、随分勇気がいったよな、と少し前の記憶を反芻した。
そして、と樹は質問を続ける。
「薬を入れたのは、きっかけづくりか?」
「まぁ、そうです。早急かもしれませんでしたが、
ああいうきっかけが無いといつまでも進展しそうにありませんでしたし。」
「過激なやり方だな。」
「ええ、申し訳ありません。」
まぁ、と樹は言った。
「結果的には君の望むところだったんだな?」
「そう思っていただければ幸いです。むしろ」
銀子は仰々しくかしこまった。
「予期していた以上にしてくださり、この三河屋、感謝の言葉もありません。」
皮肉ととれなくもなかったが、樹は苦笑する。
「私も君と同じように、人の気持ちを汲むのは苦手だけどな。
たまたまうまくいっただけさ。」
「よかったですね、今日はついてる日で。」
銀子は変わらずに飄々としている。
「あ、ほら樹。」
銀子は窓の外を指差した。さっきまでの豪雨は、嘘みたいにやんでいる。
「雨があがりましたよ、雫が泣き止んだのですね。」
晴れやかに銀子が笑った。
作り物に見えた今までの笑顔ではなく、
この笑顔が銀子本来の表情なのかもしれない。
樹は、少しそれを眺めてから言った。
銀子の表情を、じっと観察しているように。
「ところでさ。」
「うん?なんでしょう。」
「雫の妹は、その後どうしたのだろう?」
少し迷ったように、間を開けた。
「さあ?それがどうかしましたか?」
「妹がその後どうなったかは君は知らないのか?」
「存じませんね、何か気になるのですか?」
知らないのか、とぼけたふりかは判断できない。
いや、と一呼吸置いて樹は続けた。
「雫がトラウマを抱えてるように、
同じ体験をしたその妹も同じ痛みを持っているんじゃないかな、そう思って。」
「心配なのです?」
「かもしれない。」
青空が見えはじめた窓の外の空を眺めて樹は言った。
「雫が雨を降らせるようになったのは、火事以降らしいな。
大切なものを守ろうと必死に火を消そうとして芽生えた、
本能的に身についた力なんだろう。
逆に言えばそんな力が芽生えるくらい、大きな出来事だったわけだ。」
「そうなのかもしれませんね、無論確証は無いですが。」
「そうだな。あくまで、推測だ。」
「案外いい線かもしれませんよ?名探偵さん。」
銀子は茶化したが、樹は、表情を変えない。
銀子も気にしない様子でそのまま続ける。
「それで、その妹がどうかしましたか?」
ああ、と樹は語る。その姿勢は変わらなくそびえている。
「その、同じ体験をした妹は、別の家に引き取られた後、どうしたんだろう?」
銀子の笑顔は変わらない。
「私は知りませんし、十年前のことですから、
島の人間でも知ってる者は少なくなってきてるんじゃないですか」
随分とご執心ですね、とやや呆れるように付け加えた銀子。樹は銀子を見据えた。
「これも推測なんだ。間違ってたら否定してくれていい。」
「推測が好きな日ですね、まだ何か?」
銀子は腕組みをし、微笑んだままだ。
樹は自分の考えを続けた。
「君が雫を救えない、と思った本当の理由は、ここにあるんじゃないかと思って。」
「…どういうことでしょう?」
ふーっ、と息を吐き、真っ直ぐ銀子の黒い瞳を見る。
「君が、雫の妹なんじゃないか?銀子。」
銀子の笑顔が消え、確かに動揺を見せた。
少しだが、びくっと体が震えたように見えた。
銀子はうつむいて沈黙した。
少しした後、深くため息をつく。
「…何故、そう思われました?」
顔をあげて、ゆっくりと開いた彼女の瞳は、紅に染まっていた。
燃え上がるような、美しくも眩しい紅に。