今回はリメイク作品ではありますが、
ネタバレに十二分、気をつけなければ
ならない作品ですのでいっさいのネタバレを
しない方向で………イケんのかっ!? 型、
無差別DVD観賞感想ブログ記事
蒲田の呑兵衛の看板背負って
歩いてみせますキネマの天地
そう、ヤツの名はDVD・アウトロー
これほどまでにネタバレしないで書くのに苦労するテイの作品はそうそうはないと心底、思えてしまう今回綴る映画はコチラ。
『オリエント急行殺人事件』
1974年に公開された阿笠博士………否、アガサ・クリスティのミステリーをケネス・ブラナーの監督&主演でリメイク。
ジョニー・デップ
ミシェル・ファイファー
ジュディ・ディンチ
ペネロペ・クルス
デイジー・リドリー
ウィレム・デフォー
………………………もう、挙げてたらキリがないくらいの豪華キャストなんですわ。
では、肝心のあらすじから
フランス行きの寝台列車オリエント急行で乗客の誰かが何者かに刺殺される。
教授・執事・伯爵・伯爵夫人・秘書
家庭教師・宣教師・未亡人・メイド・呑兵衛
セールスマン・医者・公爵夫人・車掌
という、目的地以外は共通点のない乗客と車掌の14人が殺人事件の容疑者となる(⇦ひとり不適切な人物がいます)
この列車に偶然、乗り合わせていた自他共に認める名探偵エルキュール・ポアロは列車内という動く密室で起こった難事件をスケボーに乗ったり、時計に仕込んだ麻酔針かなんかを駆使して解決に挑む(⇦かなりのウソを書いてます)
こんな感じのあらすじでゴザイマス。
ホントにねぇ、どこまで書いたらネタバレになるのかっていうな。
「犯人は “オマエ” だっ!」………って、威風堂々と言えりゃどんだけ楽になれるかっていう、ね。
要するに、豪華キャストのうちの誰かが殺されるワケだ(⇦ココは見てなくとも知っている人は多いとは思うが、あえて書かない)。
まず、1974年に公開されたリメイク元のほうの『オリエント急行殺人事件』(⇦オレが1歳の時ですよというどーでもいー駄文)
このリメイク前を今回の記事では〈前作〉とこらからは書かせて頂戴。
この前作は当然、リアルタイムでは知りはしないワケですが、オレが尊敬してやまない淀川長治さんの名解説でお馴染みの日曜洋画劇場にて、それはもう何度も放映されていまして、その都度テレビにかじりついていたので結構、鮮明に今でも覚えていたりする。
軽く結論から申せば、前作の知識がまったくない状態であり、ミステリー映画好きな人は今作をまだ楽しめるとは思います。
前作を見たコトのある人ならまず驚かされるであろう〈オチ〉が有名な作品なワケだ。
この〈オチ〉は3〜40年前の当時としてのミステリーやサスペンスといった類の映画としてはチョイと掟破りってか、斬新すぎるであろう犯人像なのは間違いない。
どれぐらい斬新だったか?
『猿の惑星』の猿が支配している世界は未来の地球だった!!………ほどではない。
『シックス・センス』のブルース・ウィリスはその実、あの冒頭で死んでいた!!………ほどでもない。
まあ、今作には関係のない映画のネタバレは平気でするという、なっ!?
衝撃度でいうと?
『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』のダース・ベイダーはルークの〈アレ〉とか、ヒッチコック監督の『サイコ』の〈真犯人〉や『ユージュアル・サスペクツ』で誰が〈カイザー・ソゼ〉だったのかってくらいには匹敵するであろうインパクトのある〈オチ〉だとは断言できますわな。
今作の本編とは関係のない話をクドクドとしてとるが(⇦いつもか?)オレは正直、この〈オチ〉をはじめて知る人の気持ちっていうのがわからないし、逆に羨ましかったりもするワケだ。
〈知らない状態には2度と戻れない〉
その意味では、後に学ぶという落差があってからこそなんだけど〈知らない〉状態は真に貴重なコトなのだというのを声高に言いたいんですよ、ハイ。
前作や今作の〈オチ〉を知っている、オレは知らない人の気持ちを想像するコトしかできやしないので、そこを踏まえて言わせてもらえば、だ。
「やっぱり、このオチはいま見てもかなりビックリできる………………ハズです」
その前作での有名なオチを知っているオレのよう人でも今作は楽しめるのかどうか?
監督と探偵ポアロ役を兼ねているケネス・ブラナーがどのようにして、この極上のミステリー素材を料理してくれるのか?
それこそ〈前作のオチをそのまんまヤルのかヤラないのか?〉………そんなところも含めて、お手並み拝見とばかりに、楽しさ+期待も込めて観賞するに至る、と。
てなワケで、今作のお手並み拝見と相成ったんだけれども、前作の話を同時にすると、ミステリー映画なのは言わずもがな、なによりもまずはその浮世離れした優雅さがあり、そここそを楽しむというような方向性&趣向が非常にウケてその後も名探偵・ポアロシリーズとして『ナイル殺人事件』『クリスタル殺人事件』『地中海殺人事件』が公開されております。
今作も前作と同様に豪華キャストを揃え、見ているだけで優雅な気持ちになれるであろう衣装や美術のクオリティーだけで満足される方もいるとは思いますよ、ええ。
今作の特に序盤は前作にはない勢いの良さを押し出していたりして、基本的なある種の優雅さみたいなものは当然とばかりに受け継いでいるようなフシもあるっちゃある。
その上で、大きなアレンジも加えている。
例えば、列車が雪で足止めを喰らうトコなんてド派手に〈盛られている〉し、その足止めの最中にポアロが容疑者の乗客たちに尋問をしていくんだが、その尋問の場所も列車内だけにあらず、列車の外にも舞台をどんどん移していく。
あるいは、外での逃走劇風なアクションシーンもあったりする。
前作はすべて列車内で完結する話なので、そこは現代版として足し算的に盛っている。
そして、メガ盛りかのように盛られているの絶対的主人公であるケネス・ブラナー演じる名探偵エルキュール・ポアロ。
今までのポアロ像と比べるとかなりのアレンジがされている。
今までのポアロってのはまん丸でタマゴ型の頭をした人の良さそうなおじさんなワケなんだが、ケネス・ブラナーのポアロは颯爽としていて、普通にカッコ良さげである(⇦前作のポアロも他のポアロと比べるとルックスは今作寄りであると補足しときます)。
その分、口髭はヤリすぎだろってツッコミたくなるほど極端に強調されている。
で、アクションシーンまでヤラかす始末(⇦某・頭脳は大人、体は子供の彼に対抗してか否か?)
さらに、今回のブラナー=ポアロは昔、恋していた女性の写真を部屋に飾って感傷に浸っていたりする(⇦男って浸る生き物なんよ)
終盤ではかなり激しく感情を表に出して〈悩んで〉いたりする。
いわゆる〈人間味の溢れるキャラクター〉に大きくアレンジされている。
まあ、すべての発端となる重大事件にポアロ本人がチョイと関わっているという前作にはない設定を加えてまで〈ポアロの人間味〉を足していたりもする。
さあて、こっからがネタバレには触れないように気をつけなければならない箇所であり、オレからの大苦言なんですが、ミステリーとしての謎解きの要素はその実、ひとつとてつもなく大きな謎解きの部分を削除しているなどという、あってはならないコトを監督&主演のケネス・ブラナーは過剰に〈ポアロの人間味〉に重きを置いてしまったがためにヤラかしてしまっている。
ミステリー要素が薄すぎるのだ。
もしかして、オチは有名だからミステリー的なところに重きを置いてもあまり面白くならないでしょ?………なんて、考えが働いてしまったのかもしれないが、それは大失敗。
有名であろうが何だろうが、オチを知らずに見る人だって必ずいるのだから、重要な謎解きを削除するのなんてのはもってのほか。
この大苦言の続きは後に回すとして、俳優陣の感想でも書いていきますか。
名前を出すと大きなネタバレになるんで具体的な俳優の名は出さないが、前作にて〈ローレン・バコールが演じていた役〉を演じている某女優さんが、もちろんローレン・バコールの貫禄も素敵でしたが、この役はクライマックスにて〈劇的な変身〉をする役なのだ。
この辺りはシリーズ続編にあたる『ナイル殺人事件』『地中海殺人事件』のクライマックスも同じ構造を持っている。
その劇的な変身という意味では今作の女優さんの見せ方や演じ方のほうがよりドラマチックに見せていて、新旧でいえば今作に軍配が上がると思いますよ、ハイ。
また、新スターウォーズの主人公レイを演じているデイジー・リドリーは………まあ、スキじゃないから割愛。
忘れてはならないのがジョニー・デップ演じるラチェット。
生々しく、ギラギラギトギトとしたゲスさや上品さを保てない雰囲気とかをちゃんと醸し出していて、流石はハンサムなだけが売りの俳優さんではないんだな、と、感心したんだけれども過去にあんな酷い事件………あっ、こっから先は本編を見て確認して下さいな。
俳優さんと役柄について言及するとネタバレに到達してしまうので他の話にしときます。
演出の話をすれば、容疑者たちが食堂車で話しているところをドアのガラス越しに見てみると、姿が二重になって見える。
要するに、彼らの二重性を映像的に暗示しているってな、演出は映画的で良いのだけれども、他の演出ではマズイところもある。
ポアロが現場の捜査をする時、その真上からのショットでみせるんだが、それがまた長くて人の頭しか見えないショットがずーっと続くんですな。
しかも、都合2回………それって、中途半端じゃねえか?
そのような見せ方をもっと全体でするのならまだしも、そこだけ急に見づらいショットを入れられても、「なんだかな…」としか思えないんだよなぁ。
先述したように前作とは違い今作は列車の外側にも舞台を移していくような作りをしているんですが、コレも映画的といえば映画的で特にクライマックス。
故・森田芳光監督の『家族ゲーム』をつい思い出してしまうような俳優の横並びで座っている状態からのクライマックス。
そこからはじまる、いかにもシェイクスピア役者丸出しなケネス・ブラナー=ポアロの大熱演説大会。
その重々しいセリフ回しには確かに相応しい舞台立てではあると思う。
ただし、コレはもう好みの問題になってくるんだが最終的にポアロは2つの結論を出す。
「私は2つの結論を出しました………みなさんはどちらを選びますか?」
有名なクライマックスである(⇦ん? コレってネタバレかっ!?)
今作のポアロは人間味を増して、感情面を強調して描くのが狙いだったとしても、露骨に湿っぽすぎてオレは口アングリ状態になりましたよ、ええ。
しかも、今作のポアロの最終結論。
色々・散々と熟孝した挙句、最終結論は前作のポアロと同じところに結局は着地する。
今までのポアロ像を根底から変えた意味がまったくないのである。
ココで先ほど後回しにすると言った大苦言を書きますか。
〈ミステリーとしての謎解き要素の大事なひとつを削除している〉………そんなようなコトを書いたハズ。
前作ではあって、今作では削除されている箇所なんでココは具体的にブッちゃけますぞ。
〈被害者の殺害時刻は何時だったのかをポアロに錯誤させるトリック〉が今作では根こそぎ削除されているワケだ。
ポアロはずっと「殺害時刻は◯時だ」と、思い込んでいる。
だから容疑者のアリバイが中々崩せなかったんだけども、「本当の殺害時刻は◯時ではなかったと推理すると、こういう風な事で全ての説明がつく」………って、感じ。
つまり、最後にポアロがこういう事だという風に最後の謎解きに至る、直接のキッカケがこの殺害時間トリックなんですわな。
ある意味、1番重要なトリックを大胆にも削除してしまっている。
結果、ポアロの推理ではなく〈推論〉だけで話が進む感じが強まるだけなのだ。
ひとつの大きな謎を論理的に解くという肝心な箇所を抜いてしまったがために「全部、オマエの推論でしか話が進んでねーじゃねーかよっ!?」ってな、感じが強まるだけの大変残念な結果になってしまっている。
逆に犯人側からいうと結局、この殺人計画の1番のトリックは〈嘘をつく〉だけという、ミステリー映画とは思えないトホホな話。
まあ、チョイとだけ際どいコトを言わせてもらいますが〈寄ってたかってポアロに嘘をつく〉だけなんですよ、ええ。
前作での重要なトリックを抜いたのは百歩譲るとしても、それに変わるようなトリックを出すどころか〈嘘をつく〉だけなんだから、推理もへったくれもない平凡な群像劇になっちまっているって、印象しかないんだよなぁ〜。
ワリと急に派手な逃走シーンがあったり、銃を使ったシーンがはじまったりだの、派手なシーンの〈取ってつけた感〉がより際立っていて、違和感でしかないんだよな。
誰が今作にそんな意味のない派手な演出を求めようか?
面白さの中にロジックありきの謎解きミステリーを楽しみたいのではあるまいか?
ふたたび、列車が動き出すシーンでも列車は謎解きの間は止まっていて、また動き出す時の復旧作業の過程みたいなのを、ちゃんと見せずにテキトーなセリフで片付けているのも頂けねえな、と。
前作では、除雪の列車がだんだん雪の間を当然CGなどではなく、実際の雪の間を近づいてきて、連結して引っ張るシーンがある。
今作は「あらっ?………いつの間に列車を線路に乗ってたのっ!?」てな、感じになっちまっている。
登場人物たちの人生を象徴するように、止まっていた列車が事件の解決と共に動き出すというカタルシスも減っている。
列車が舞台の映画なんだからオリエント急行自体の描き方も雑に済まされているような感じになってしまっているのも残念・無念。
ではでは、最後は苦言ばかりになってしまいましたがこの『オリエント急行殺人事件』は☆10コ満点で?
☆ ☆ ☆ ☆
まあ、オレが前作を知らなければ☆を1〜2コは追加していたかも知れません………いやぁ、それもねえかっ!?
帯に短し襷に長し………そんな微っ妙〜なリメイクになってしまいましたな。
だがしかし、前作を未見で〈オチ〉すらも存じ上げない人には前作も今作も結果はまったくおんなじですし、その〈オチ〉にビックリするコト請け合いなのでオススメだけはしときますぞ。
