SLEEPTALKER - シュウの寝言 -16ページ目

 

 COVID-19の陽性反応が出たから、試合はキャンセル。

 そんなことが最近のUFCでは多発してますけど、どれだけの頻度で検査をしているのか?そして陽性反応が出た人は、その後どうなるのか?
 このことに関してはあまり詳しく報道されていないようですから、ここで簡単に記したいと思います。

 まず初めに、現在のUFCで行われている検査の流れについて書きます。

 選手もセコンドもスタッフも、他の州からくる人は、全員まずファイトウィークの前の週に、PCR・抗体検査を受けないといけません。陰性であることが確認された人しか、ベガス行きの飛行機には乗れないんです。
 そして選手たちは、ファイトウィークの火曜日午後3時前に着く飛行機で、必ずベガスに入らないといけません。
 到着後すぐにまた検査を受け、結果の出る水曜日の朝まで部屋で隔離となります。
 ちなみにホテルはUFCが一軒貸し切りで、至る所にセキュリティー・スタッフが配置されているので、外部の人と接触することは、普通ならあり得ないという環境です。

 セコンドは、遅くとも木曜日の午後3時までにベガスに着き、同じようにすぐに検査を受け、結果の出る次の日の朝まで部屋で隔離となります。
 水曜日に陰性が確認された選手は、そこから金曜日の夕方の検査までは、外出OKとなります。
 次の検査は金曜日の夕方なので、それまではUFC PIで練習したり、最寄りのスーパーで買い出しに行ったり、遊びたければ有名カジノホテルが軒を連れねるメインストリップに繰り出すこともできます。
 金曜日の夕方の検査後からは、会場入りするまではホテルを出るのは不可。再び隔離となります。
 つまり選手もセコンドもスタッフも、ファイトウィークの前の週、到着日、試合前日の金曜日とPCR・抗体検査を受ける回数はトータルで3回。

 ということは、陽性反応が出た!他の選手(またはセコンド)を探さないと!という事態になる一番初めのタイミングは、ファイトウィークの前の週。そしてその次が、水曜日の朝となります。
 ここまでなら、まだ替わりのセコンドを探すことはそれなりに可能ですけど、選手となると、少し話が違ってくるんです。
 まず減量のことがあります。ちゃんと計量パスできる選手を見つけないといけません。
 次の関門はメディカル・テストです。
 この時点で、検査を受けて結果を待つというのは時間的に無理ですから、既に必要な検査をすべて受けているだけでなく、検査日が期間的に有効だと、ネバダ州のコミッションが認める選手でないといけません。
 そして、すぐに飛行機に乗れる状態の選手。

 佐藤天選手とジェイソン・ウィット選手との試合が成立したのは、あれ、ほぼ奇跡に近いケースだったんです。
 元々対戦予定だったラミズ・ビラヒメジ選手のセコンドに陽性反応が出たと判明したのは、水曜日の朝でしたから。

 ただ先週は遅すぎました。
 知っている方もいると思いますけど、佐藤選手のセコンドの一人に陽性反応が出ちゃったんです。
 それを知らされたのは試合当日、土曜日の朝でした。
 このセコンドは木曜日にベガスに着いて検査を受け、この時は問題なかったのに、金曜日の夕方の検査で陽性反応が出てしまったんです。
 もうこうなるとお手上げです。
 例えば、これが木曜日の検査で陽性反応が出ていたとしても、それが分かるのは金曜日の朝になります。
 それから代替えのセコンドを探すとなると、ネバダ州のセコンド・ライセンスを既に持っていて、すぐに車に飛び乗り空港に向かえる人でないといけません。しかも夕方の検査まで間に合わせる。そうなると実質上、不可能に近いものがあると思うんです。

 さて、陽性反応の出た選手やセコンドは、どうなるのかというと、この人たちは、ベガスでの14日隔離を余儀なくされます。
 もちろんホテルにいる訳にはいかないので、UFCの手配するAirBnBのアパートでの隔離となります。
 または自らレンタカーで自宅まで直接戻り、そこで隔離、という選択肢もあります。
 お隣のアリゾナやカリフォルニアとかに住んでいるのならこの選択肢もありでしょう。でも佐藤選手のセコンドみたいに、その行き先がフロリダとなると、ぶっ続けで運転しても3日ぐらい掛かると思いますから、そんなのはどう考えても無理なんです。
 例えばスーパーマン的な体力の持ち主が、俺は運転する!と言い出したとしても、その経費はバカになりません。(安全という観点から、道中、他の人たちに感染させてしまう可能性を考慮したら、これは現実的な選択肢ではないです)

 経費といえば、ベガスで14日間隔離する場合も、食費などは掛かる訳ですし、ほとんどの場合は、帰りのフライトは買い直しとなります。
 そのあたりも、選手が負担せざるを得ないケースが多いと思うんです。

 14日もの間、家に戻れない。家族に会えない。仕事にも行けない。コーチならジムに行けない。
 ということは、教えないといけないクラスは、他の人に任せないといけないですし、それなりの収入源になっているプライベート・レッスンもキャンセルを余儀なくされる。

 こうなってくると、選手にとって、そしてセコンドにとっても、このCOVID-19時代に試合をするということは、こういったエキストラのリスクも伴い、臨まないといけない、ということだと思うんです。