6月3日(月)13時~14時30分 福岡大学商学部のクリエイティブ・マネジメント・プログラムにおいて特別講義「ボードゲームのデザイン」を行いました。学生9名が受講。福岡大学で私が講義を行うのは昨年10月に続き、2回目になります。





福岡大学商学部は、ゲームなどクリエイティブ産業のディレクターやプロデューサーの育成を目的とした教育プログラムを2018年4月から開始。プログラムの通称は「福大MaCOP(マコップ)」です。
プログラムには、各分野の専門家を講師に招いた講義も組み込まれており、私はゲームデザインの専門家として担当の篠原巨司馬准教授に呼んでいただきました。




〇講義レポート

まず自己紹介代わりに私が小6の時(1996年)に作った「福岡市大すごろく」を披露。書き込みの量に驚きの声が上がりました。



続いて、2011年発売のオリジナルボードゲーム「Amen」をプレイ。見た目のオシャレさや運と戦略のバランスを評価している学生が多かったように思います。また、ゲームのためのオリジナルBGMも流しながら遊んだのですが、音楽付き=プレイ環境まで作ることが刺激的であったようです。(「福岡市大すごろく」「Amen」は福岡市博物館1Fみたいけんラボにて体験ができます)







その後、私の作成した資料(全10P)をもとに座学へ入りました。



「ゲームデザインの基礎」と題し、今日のゲームデザイナーの地位の底上げに尽力した巨匠アレックス・ランドルフ氏の紹介や、これまで600作以上のゲームを世に送り出してきたライナー・クニツィア氏のゲームデザイン論の解説を始め、ゲームの着想法、偶然と必然の要素がゲームにどう影響を与えるのか、ゲームを面白くする要素とは何か、ゲームデザインで心掛ける5つのポイントなどを講義しました。その際、学生に実体験からの具体的な学びが得られるよう、先ほど体験した「Amen」ではどう発想し、どんなことに気を付け、工夫したかも話しました。



座学の後は、私がゲームデザインし、4月に発売したばかりの新作「さくらの大冒険」(つみきや)をプレイ。協力ゲームなのですが、チームでわいわい言いながら楽しんでプレイしているようでした。その後、着想から商品化までどのような試行錯誤があったのか、そのプロセスも話しました。





それから、マネジメントという視点で、2000円のカードゲームを1000個作る場合を例に販売計画をシミュレーション。初期費用がいくらかかって、それをいつ回収できるか、どのようにして販売計画を立てるか、それがいかに経営において大事なことかを解説。今回初めて導入しましたが、これはゲームを作ることと決して切り離すことができない、すごく大切なことだと私は思います。なぜなら、クリエイティブとマネジメントは背中合わせに常に存在しているからです。


〇オリジナリティとは何か?

講義の最後は、質疑応答の時間。学生からこんな質問が出ました。
「作っていると何かに似てきたりすると思うのですが、オリジナリティって何なのでしょうか?」と。これは創作において必ず出てくる悩みです。
もちろん故意にアイデアを盗むのはいけませんが、作ったものが似てくるのは仕方ないことじゃないかと思います。どれとも重ならないものを作ろうと考えても、毎年1000を超える膨大な数のゲームが生まれる中、一つ一つのゲームをチェックすることは不可能に近いでしょう。
例えば、音楽でもあの曲とあの曲は似てるということがありますが、人が心地よいと思うメロディやコード進行はある程度限られています。それと同じように、人が面白いと思う要素も限られていて、全くのオリジナルの「面白い」を作るのはたいへん難しいことです。そこを追究することは確かに素晴らしい行為ですが、それだけがオリジナリティとして認められるというのはあまりに酷です。既存の「面白い」要素の組み合わせ方や調合がオリジナリティである、それくらいの定義で良いのだと私は考えます。
オリジナリティについて聞かれた時、私がよく話すのが「ミックスジュース理論」です。りんご、バナナ、メロン、ぶどうなど、好きと思えるもの、面白いと思えるものがあったら、それを自分の中で混ぜてしまう。そうして完成したミックスジュースは、あなただけのオリジナリティになるという理論です。
私はこの考え方をするようになって楽になりました。これはゲームに限らず、創作全てにおいて言えることだと思います。


〇最後に

これまでの私の知見をゲーム体験を通して駆け足で行った講義ですが、ゲームデザインの世界は知れば知るほど深い海のような「ゲーム学」と呼んでも過言ではない学問ですから、一筋縄には行きません。それでも、少しはゲームを作ろうとしている学生の役に立てたかなと思っています。

今回、このような貴重な機会をいただけたことにとても感謝しています。講義を行なうことで私自身が大きな学びを得ています。今後も学びを深めて、新しいゲームを開発したり、こうして講義に生かしたり、社会の役に立っていきたいです。


〇受講生のブログ

受講生のブログを下記に紹介します。
https://oomi.hatenadiary.com/entry/2019/06/03/235728

当日は私の講義の前にFAAVO博多の代表・武耕太郎さんによるクラウドファンディングの講義も行われました。
受講していない人にもどんな内容だったかがよく伝わる、再現性の高いレポートです。受講したその日にここまでのレポートを作成することに学生の熱量を感じ、感心しました。

現在、3チームに分かれてボードゲームの開発に取り組んでいるようです。どんなものが出来上がるのか、楽しみです。期待しています。