◆はじめに



この作品は大微笑劇場・第41話「ミッション」の外伝版です。

ですので、始めに本編を見ていただきたく思います。

この外伝は、本編の背景にあるものを描いた作品です。

本編にコメントをいただいた、ブログ友達のまこさんへの

コメントの返信をしている最中に

頭の中に浮かんで膨らんだストーリーです。

こちらを読んだ後に、また本編へ戻って見てみると、

その言葉の重みがまるっきり違って感じられます。

それでは、お楽しみください。



◆外伝「ミッション ~サイドストーリー~」




彼としてはそろそろ稼業を辞めたい。

しかも、今やっているバイト先の店長から

正社員にならないかという誘いも来ている。

だから、彼はバイトを優先した。



そもそも、稼業の方で依頼が来るのは、

昔の栄光のおかげ。

それはそれで副収入として良い額だし、

バイト一本では生活できないので

たまに受けるようにはしているが、

内心はいつまでもこんな裏の仕事は

やれないと思っている。

もうすぐ30だ。親ももう若くない。

いい加減、浮草のような生活から抜けて、

まともな生活がしたい。

そして、結婚して孫の顔でも見せて

今まで苦労を掛けた分、

うんと親孝行がしたい。



それに好きな人もできた。

彼女と一緒になるためにも

自分が変わらなければいけない。

彼女は彼が生活のために

無理して稼業を続けていると知り、

昼の仕事に加え、夜の仕事を始めた。

そのおかげで二人が生活できる程度の

収入は確保できるようになった。

そうして彼は稼業から完全に足を洗った。



しかし、すべてが順調に進み始めていた

二人の前に悲劇はやって来る。

彼のバイト先に警察が現われたのだ。

殺人容疑でパトカーに乗せられる彼。

皮肉にも彼の上着のポケットにはその日に

渡そうと思っていた婚約指輪が入っていた。



刑務所の面会の時間。

ガラス越しに二人は対面する。

「罪は罪だ。償うよ。あと、俺とはもう

関わらないでくれ。関わらない方が良い」

「イヤ、そんなのイヤ。

私ずっと待ってるから」

「お願いだから別れてくれ。

君みたいな素敵な人を

殺人犯の妻にしたくないんだ」

「・・・いい?刑務所を出たら、

真っ先に私の元に来ること。

約束して?わかった?」

「・・・・・・」



稼業をやっていた頃、

彼は受けた依頼は必ず成功させてきた。

しかし、このミッションは初めて

成功させられそうになかった。



彼女が帰った後、独房に戻った彼は、

刑務所中に響き渡るほどに泣いたという。(完)



◆おわりに



この作品を作るきっかけを与えてくれた

ブログ友達のまこさんに感謝します。

ありがとうございます。