こんにちは!!

 

昨日は、一日お休みをいただきました。

 

今後ともはりきって頑張っていきます!!

 

今回は、「生存権」です。

 

「健康で文化的な最低限度の生活」という言葉は、

このブログでは「ケンカツ」と省略します。

 

数年前に吉岡里穂さん主演の「健康で・・・」のドラマがありましたが、

その略称がケンカツだったので、

それを使わせていただきました。

 

それでは参りましょう!!

 

 

 

生存権

 

1 意義と法的性格
(1)意義
憲25-1 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」

(2)法的性格
  ・プログラム規定説 ⇒ 国民に対して法的権利を保障したものではない。
  ・抽象的規定説 ⇒ 生存権を法的権利として、立法によって具体的権利となる。
  ・具体的権利説 ⇒ 生存権を具体的な法的権利と解するが、立法不作為の違憲確認訴訟や、行政事件訴訟における無名抗告訴訟ができるにとどまる。
    ⇒ 実質的に、差異はない。
 

2 判例の展開
食糧管理令違反事件判決
「憲法25―1は、ケンカツを営み得るように国政を運営することを国の責務として宣言したものにとどまり、個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。」
 ⇒ この判例は、プログラム規定説にたつと解釈される。

生存権の性格 - 朝日訴訟

(憲法判例百選Ⅱ―131)
 原告(朝日茂)は、実兄の仕送りにより生活保護について減額され、不服申し立てを行い、受給額がケンカツの水準を満たしていないと主張した。
 生存権の性格について、「憲法25―1は、ケンカツを営み得るように国政を運営することを国の責務として宣言したものにとどまり、個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」の上記「食糧管理令違反事件判決」を引用しつつ、生存権の具体的権利としては、憲法25―1の趣旨を実現するために制定された生活保護法によってはじめて与えられているというべきであるとした。
 即ち、憲法25―1の具体的権利性は否定され、憲法のみを根拠として直接保護を求める権利はなく、あくまで個別の法律によってはじめて具体化する権利とした。
 生活保護法の保護基準は、憲法25-1のケンカツを満たすものでなくてはならない。
 しかし、ケンカツというのは、経済事情や国の財政事情などにより左右される抽象的・相対的な概念であって、それゆえ、生活保護法における厚生大臣の保護基準は、合目的的な裁量にゆだねられており、その判断の当不当は政府の政治責任を問われることはあっても、直ちに違法とはならない。
 しかし、著しく低い基準を設定し、あるいは法律によってあたえられた裁量の限界をこえた場合に、違法行為として司法審査の対象となる。(司法審査が及ぶ場合があるとすることから、純粋なプログラム規定説に立っているとは考えられない。)
 なお、訴訟自体は、原告の死亡により、訴訟終了。受給権は一身専属であり、相続の対象とならないとした。
 本件の生活保護の受給額は極めて低かったことが背景にあると考えられる。本判決後、受給額が増額される成果があった。


牧野訴訟
 国民年金法の、老齢年金の夫婦受給権制限規定(夫婦ともに老齢年金を受ける場合に年金額が減額される規定)は、憲法14―1に違反する。その後、当該規定が撤廃された。


障害福祉年金と児童扶養手当との併給禁止

堀木訴訟(憲法判例百選Ⅱ―132)
 障害福祉年金を受給する全盲の原告(堀木フミ子)が、扶養する次男の児童福祉手当を申請したが、児童扶養手当法の併給禁止規定に基づき、兵庫県知事に請求を却下された。原告が併給禁止規定は憲法14、25、13に違反するとして処分取消を求めて出訴した。
 最高裁は、朝日訴訟と同様、憲法25―1の規定は、個々の国民に対する具体的・現実的な義務を意味するものではなく、国権の作用に対する綱領的性格を有するものであり、「ケンカツは抽象的・相対的概念」であるとしつつ、具体的な基準は立法府の広範な裁量にゆだねられており、著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるをえない場合を除き、司法審査の対象とならない(合理性の基準)とし、原告の25-1違反の訴えを棄却した。
 また、14-1違反の訴えに対しても、広い立法裁量論を適用して訴えを棄却した。

障害基礎年金と受給資格
学生無年金障害者訴訟

(憲法判例百選Ⅱ―139)
 事件当時の国民年金法では、20歳未満の障害者の学生には障害福祉年金を支給する規定はあったが、20歳後に障害を負った学生に対する規定はなかった。
 大学在学中に障害を負った原告が支給の申請をしたが、年金未加入により知事によって不支給処分をうけた。そこで原告は、不支給処分の取消しを求めて訴え出た。
 最高裁は、堀木訴訟の合理性の基準を引用し、上記の立法不作為は著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるをえない場合とはいえないとして、原告の訴えを棄却した。
 なお、生存権が法律によって具体的な権利となった場合、合理的な理由のない不当な差別的扱いは憲法14―1の問題を生じうるが、本件における無拠出制の年金の20歳前後の取り扱いの区別は、合理的な理由のない不当な差別的扱いとはいえないとした。

旭川介護保険料訴訟
 旭川市の介護保険条例では、生活保護法の要保護者について保険料減免の措置がなく、更に介護保険料が老齢年金等から天引きされていた。この規定が憲法25に違反するかについて争われた訴訟で、合理性の基準により、本条例を合憲とした。

老齢加算廃止違憲訴訟
 厚生労働大臣が生活保護法の保護基準を改定し、老齢加算制度を廃止する決定をした。この決定の憲法25に違反するかが争われ、福岡高裁は原告の請求を認容したことが注目されたが、本件の保護基準改定に対する他の多くの訴訟では、原告が敗訴している。

生活保護基準改定による老齢加算廃止

(憲法判例百選Ⅱ-135)
 平成16年から3年間にわたり、厚生労働大臣が生活保護法の委任により生活保護基準の改定が行われ、老齢加算が段階的に廃止された。
 東京都に居住する被保護者Xらは、本件改定により生活扶助の減額する変更決定をうけ、この決定の取消しを求めて出訴した。Xらは、本件改定の憲法25-1違反などを主張した。
 最高裁は、ケンカツは抽象的・相対的な概念であり、その時々における経済的・社会的状況、一般国民の生活の状況等を鑑みて判断決定されるものであると判示し、保護基準において具体化する場合は高度に専門技術的考察と政策的判断によるとした。生活保護中の老齢加算の廃止については、厚生労働大臣に裁量権がある。(以上は、上記「堀木訴訟判決を引用。」
 また、廃止のプロセス(激変緩和措置の要否)についても厚生労働大臣に裁量権がある。
 これらの判断に裁量権の濫用がある場合に、当該判断は違法となる。本件判断は、専門家による判断も含めて、その判断の過程、手続に過誤があるとはいえない。(判断過程審査)
 本件改定が生活保護法に違反しない以上、これが憲法25に違反することはない。

所得税の課税最低限と生存権

(総評サラリーマン訴訟)

(憲法判例百選Ⅱ―133)
 子ども一人を有する共働き夫婦が、昭和46年中に得た賃金に対して所得税として源泉徴収された。夫婦は、ケンカツの維持に必要な所得に課税するのは憲法25に違反すると主張して、国に対して所得税返還請求訴訟をおこした。
 原告は、自身の所得が「総評理論生計費」を下回ることを主張したが、最高裁は、この判例でも、ケンカツは極めて抽象的・相対的な概念で、その実現には立法府に広範な裁量が与えられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き裁判所の審査判断には適しないとした。(合理性の基準)
 原告が主張する「総評理論生計費」は総評が主張する望ましい生活水準・将来の達成目標にすぎず、これを下回るからといってケンカツ費を下回るとはいえないとした。(「総評理論生計費」 ノットイコール ケンカツ費)
 原告は立法府の裁量の逸脱・濫用があるとの主張はしていないとし、原告の訴えを棄却した。
 なお、学説では、所得税法上の裁定生活費の基準について憲法25-1を具体化した基準を策定すべきであるとの主張が有力になされている。

 

 

今回は以上です!!

 

次回は、「新しい人権」の環境権です。

 

お楽しみに!!