こんにちは。

 

土日に実家に帰省していましたので、

3日ぶりの投稿になります。

 

実家の近くのアウトレットモールに行ってきました。

緊急事態宣言が解除されて最初の土日で、

人出が多いのかな・・・と思ったら、

そこそこの人出でした。

 

終息宣言までは「リベンジ消費」にはならないのでしょうか。

 

 

さて、今回は財産権の制約です。

財産権の制約と判例をみていきます。

 


憲法29-2 「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」
消極的な公共の福祉と、社会国家的な積極的・政策的な公共の福祉
しかし、判例は、目的二分論を採用していない。

従来の幅広い立法裁量論から脱して、裁判所による目的・手段等の審査が重視されている。

 

 

事後法による財産権の内容変更の合憲性(憲法判例百選Ⅰ-99)

   改正前農地法は、農林大臣が管理する土地が自作農の創設の目的に供しないことが相当であると認めたときは、これを旧所有者(元の地主)に売払うと定めていた。原告が農地改革前に所有していた農地が、土地区画整理事業で住宅地となり、上記の規定により売払いを申し込んだが、拒否された。しかし、別件事案による最高裁の判断による判断により、原告の申込みに対して売払いがなされることとなった。その売払い価格は、農地改革時の「買収の対価」であるタダ同然の価格であった。地価高騰のおり、安値での売払いに世論の批判が高まり、議員立法で売払い価格は時価の7割に引き上げられ、右法の施行の日より以降の売払いが行われる売払いに適用されるとした。つまり、旧法⇒申込み⇒議員立法⇒売払いという時系列で、議員立法により事後的に原告に不利な高額の負担となったのである。これに対し、タダ同然の「買収の対価」での売払いがなされるよう請求した事案である。
 最高裁は、憲法29-1の、財産権の公共の福祉の制限は、事後的な規制でも公共の福祉に適合する場合は合憲であるとした。その判断にあたっては、①いったん定められた法律に基づく財産権の性質、②その内容を変更する程度、及び③これを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その制約に合理性があるか審査するとした。(衡量審査・総合利益考慮説)
 そのうえで、売払いの価格設定を「買収の対価」ではなく、いかに定めるかは立法政策上の問題であるとし、その立法政策は合理的な制限であり公共の福祉に反するとはいえないとして、原告の訴えを退けた。「厳格な合理性の審査」より緩やかな審査を行っている。

 

 



共有林の分割制限と財産権の保障 - 森林法共有林事件
 (憲法判例百選Ⅰ-96)
 森林法は、民法256-1の持分分割請求権を排除していた。原告は被告と森林を共有していたが経営をめぐり対立し、原告が森林法の上記規定が憲法29に違反し無効であるとして民法256-1に基づき分割請求した。
 最高裁は、まず財産権の規制について、公共の福祉に適う規制を加えることができ、その内容は立法府の広範な裁量に委ねられていて、裁判所は、その裁量を尊重する。しかし、規制目的が公共の福祉に合致しない場合、または、規制目的が公共の福祉に合致していても規制手段が必要性・合理性を欠くことが明らかで立法府の裁量を超える場合に違憲と判断するとした。(比例原則)これは薬事法判例と同趣旨である。
 その上で、森林法の規定は森林細分化の防止による森林経営安定などの社会経済政策的な積極的規制であると考えられる認定を行った。その上で、規制目的は公共の福祉に合致しないとはいえないとした。(目的は〇)
 しかし、その規制手段の審査においては、積極的規制であるが「明白の原理」を用いず、「立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれも肯定することができない」として、立法目的に踏み込んだ「厳格な合理性の基準」を用いて、森林法の規定を違憲と断じた。
 以上のように、手段審査で比較的厳しい審査をしているが、これは財産権の核心である単独所有に対し、森林法の規定が乖離していたという事情から事案に特殊性があり、財産権規制の先例としては引用されていない。

 

 

証券取引法164条1項の合憲性(憲法判例百選Ⅰ-97)
 原告X社(東証2部上場)は、同社の主要株主である被告Yに対し、証券取引法164-1に基づき、X社株のインサイダー取引による売買差益を請求した。Yは、インサイダー取引の事実はなく、また、証券取引法164は憲法29に違反すると主張した。
 最高裁は、目的審査・手段審査について森林法判例と同様に説示し、証券取引法164は、その規制目的において正当であり、また規制手段において必要性・合理性に欠けることが明らかであるとはいえないとして、合憲の判断をした。
 最高裁の判旨で注目すべき点は、消極目的・積極目的の言及がなくなっていることである。職業選択の自由で採用された目的二分論は、財産権では適用しないという意図と考えられる。上記森林法判例ではなく、本判例が先例として使用されている。
 

農地法許可制
農地転用に都道府県知事の許可が必要とする規制の合憲性について、目的は正当で、規制手段も目的達成のために合理性を欠くとはいえないとし、合憲とした。
 

建物区分所有法合憲判決
区分所有法70にもとづき、一括して建て替えの決議に賛成した区分所有者らから区分所有権を継承したX社が居住中の被告に明渡しを請求した事件。最高裁はここでも目的二分論を採用せず、目的・手段の比較衡量から区分所有法70は憲法29に違反しないとした。

 

 

整理すると、営業の自由でも財産権の制限でも、

消極目的・積極目的の目的二分論はもはや採用されていない、ということです。

前回でも書きましたが、学説でも目的二分論は急速に支持を失っているということです。

 

 

それでは、今回はここまでです。

 

次回は、財産権のうち「正当な補償」をとりあげます。