続きです!
※相櫻
※BL
※学パロ
自己責任でお願いします🙇🏻♀️
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商店街を抜けて少し行ったところに自転車屋さんはあった。
お客さんどころか店員さんもいなくて、キョロキョロと店内を見渡していると、
「井ノ原さーん!いるー?」
相葉くんが店の奥に向かって叫んだ。
「おー、まさきか。何?また女のチャリ壊れたの?」
店の奥から出てきたその人は優しそうな顔立ちでタバコを咥えながら気怠げだった。
「ちげーよ。俺の原付が壊れたからチャリ買うの!」
「まさきにそんな金あんの?またバイトするか?」
「今回は大丈夫。夏休みで智さんとこ毎日出てるし。」
「おーおー、智も遠慮なく未成年働かせてんね〜。」
「働かせてもらってんの。」
「お母さんは?具合どうだ?」
「変わんないよ。そんなことよりチャリ!1番やすいやつどれ?」
はいはい、と言って店に並ぶ自転車を確認し始めた井ノ原さん。
俺は2人の会話に胸をざわつかせている。
"女のチャリ…?智さんって何か聞いたことある…。お母さんの具合良くないのかな…?"
また知らない相葉くんが増えた。
井ノ原さんと自転車を見ている相葉くんの横顔はまた遠くに感じてしまう。
「で、そこの可愛い僕はまさきの友達?」
1番安いママチャリに決めた相葉くんが会計をしてる時、井ノ原さんが相葉くんの横に立つ俺を指差して聞いた。
「え、あ、えっと俺は」
「前に持ってきた壊れたチャリの持ち主。」
しどろもどろの俺を制して相葉くんが答えた。
「あー!そうなの!俺、てっきり雅紀の女のチャリかと…いやー、君のだったか〜」
あっけらかんとした井ノ原さんに相葉くんが間髪入れず答えた。
「女じゃないけど、意味合いは一緒。」
「え。」「え。」
井ノ原さんと俺の声がハモる。
相葉くんが俺を見て、フッと鼻で笑って、
「なんであんたも驚いてんの?」
と言った。
「だっ、て…」
女のチャリの正体が俺だったことが嬉しいのに、相葉くんがもっと嬉しいことを言ってくれたから、上手く言葉が出てこない。
「えーっと、まさきはこの子と付き合ってんの?」
驚いた顔の井ノ原さんが相葉くんに聞く。
「うん。」
「え、それ二宮知ってんの?」
「うん。」
「大丈夫なのか?」
「今は荒れてるけど、そのうち落ち着くっしょ。」
「お前なぁ」
「あ、井ノ原さんからも言っといてよ。俺の特別はこの人だからって。」
相葉くんが俺の腕を引き寄せ、井ノ原さんに見せるようにして言った。
「あ、相葉くん?」
「お待たせ。チャリも買えたし、行くか。」
いつもより無邪気にみえる笑顔で言った相葉くんが、店の出入り口まで俺の手を引く。
「あ!まさき!」
「じゃあ、井ノ原さん!残りはまたバイト代入ったら払うわー!」
買ったばかりの自転車に跨って、店内にいる井ノ原さんに手を振った相葉くん。
「ほら、乗りなよ。」
首をクイッと動かして、自転車の後ろの荷台に俺が乗るよう指示を送る。
「え、いいの?」
「じゃあ、あんたは走る?」
「…乗ります。」
自転車の後ろに跨り、平然を装いながらも心臓ドキドキさせて相葉くんの腰に手を回した。
「手放したら振り落とすかんね?」
「しっ、しっかり掴まってるし!」
「フッ、じゃ行きますか。」
ペダルを踏み込んだ相葉くん。
風を切る自転車はモクモクと膨らむ入道雲の方へと進んでいった。