続きです!

 

※相櫻

※BL

※学パロ

 

自己責任でお願いします🙇🏻‍♀️

 

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無事にテストも終わり、今日から衣替えだ。

足の治りも良好で潤と久しぶりにバスで登校することにした。

 

 

「足、痛い?」

 

 

潤が心配そうに聞く。

座りたくて混み合う時間を避けたため、いつもより2つ早いバスに乗った。

 

 

「大丈夫。てか、ごめんな。早起きさせて。」

 

「いいよ。俺も座れてラッキーだし。」

 

 

と言った直後にあくびをする潤。

 

 

「明日は別で行こうな。」

 

「大丈夫だって、一緒に行く。」

 

「でも潤、眠いだろ?」

 

「眠いけど…最近翔くんといれること少ないから貴重だもん。」

 

 

目を擦りながら潤が言う。

 

友達もできて俺がいなくても楽しそうだなと思って少し寂しかったが、潤も寂しがっていてくれたことが嬉しい。

いつまで経っても可愛い弟だなと思った。

 

コツンと肩に重みを感じてみると、潤が頭をもたれさせてうとうとと眠っている。

 

 

「フフッ…」

 

 

テストも終わって落ち着いたし、潤にも相葉くんとのこと言わないとな。

 

そう思って相葉くんの顔が頭の中に浮かぶと頬がだんだんと熱くなる。

昨日のキスを思い出して、急に喉が渇いたような感覚になった。

 

 

俺、相葉くんと…キス、したんだよな…。

 

 

昨日の夜からずっとこの言葉が脳内を反復している。

あの後、帰り道は少し気まずさがあったが悪い気はしなかった。

胸がいっぱいで横を歩く相葉くんの横顔を覗き見ては顔が熱くなる。

もっと一緒にいたい、そんな思いでいっぱいで家の玄関を開けるまでテストのことをすっかり忘れてしまっていた。

 

 

今日からテスト返ってくるよな。

塾通えって言われそうだな…。

 

 

そんなことを考えていたら降りるバス停の名前がアナウンスされ、慌てて降車ボタンを押した。

 

 

 

 

 

昇降口で潤にリュックを持ってもらい、上履きに履き替えていると周囲でコソコソと話声と視線を感じて、顔を上げると周りで女子生徒が潤を見て頬を赤らめている。

 

 

「ブレザー1枚脱いだだけで噂の的なんて、お前すごいよな。」

 

「え?」

 

 

本人は気づいていないらしくキョトンとして俺を見る。

 

 

「なんでもないよ。」

 

「?…なんか、翔くん夏服だと撫で肩際立つね〜」

 

 

昔と変わらぬ笑顔で言ってくるのは、悪気がないからで余計にタチが悪い。

俺がジト目で見ると、ん?と首を傾げた。

 

 

「はぁ、いくぞ。」

 

 

今日は早めに来たから生徒の数が少なかったからこんなもんで済んだが、いつもの時間だったらもっとキャーキャーなってたのかな。

 

弟のような存在だが、横を歩く潤は顔つきも男らしく肩もしっかりしていて身長も俺より高い。

肌も程よく焼けていて、ブレザーがなくなり余計にシャツの下の腕に筋肉を感じる。

 

 

「潤ってなんか鍛えたりしてんの?」

 

「え?う〜ん、まあたまに草野球とかするからそれなりに?」

 

 

高校に入るまでは野球少年だった潤は基礎筋力が違うのだろう。

俺はサッカーをしていたから足の速さと体力には自信があるが筋力は全くだ。

腕相撲で潤に勝てた試しがない。

 

 

「俺も鍛えよっかな?」

 

「どこを?」

 

 

具体的に聞かれると答えに詰まった。

体の鍛え方も分からなければ、テストが散々だった自分は運動に割ける時間もない。

 

そうだ、今1番重要な問題はテストの結果だった。

 

 

「…頭、かな?」

 

「翔くん…いよいよだね。」

 

 

潤がかわいそうなものを見るような目で見てくるが、これは悪気と悪意しかないので思いっきりその肩を殴った。

 

 

 

 

 

 

そして次は俺が頭を殴られた気分だった。

 

92点

 

1時限目の授業は数学だった。

返されたテストの点数に頭を殴られた。

 

1番の得意な教科でこの点数はやばい、というかかなりやばい。

自分の席で頭を抱え、解答用紙を睨みつけても当然点数は変わるはずない。

 

幸先悪すぎるテスト返却が立て続いた午前中は先生の解説をBGMに親への言い訳を考えていた。

賑やかになった教室の雰囲気を感じ、昼休みになったことに気がついた。

 

特に相葉くんと約束もしていないし、テストも終わったから今日からはまた潤と中庭で食べることにした。

中庭空いてるかな〜と考えながら、お弁当を取り出そうとリュックを開けて絶望した。

 

 

「弁当忘れた…」

 

 

今日はついてない。テストの結果は今日の運に関係ないが、気持ちが落ちるのは仕方ない。

ため息をつきながら潤に"先に食べてて"とメールを入れ、財布を持って購買に向かった。

 

 

 

 

昼休みの購買の混み方は異常だ。

まさに争奪戦という名の通りに殺伐としている。

運動部の猛者たちがおしくらまんじゅうだ。

 

 

「あれ?翔さん!」

 

 

後ろの方から様子を伺っていると横から名前を呼ばれた。

 

 

「あ、錦戸くん!」

 

「昨日はどうもっす。」

 

 

錦戸くんがひょいっと手を挙げる。

シャツの袖が肘まで捲られて、露わになっている腕の筋肉に目がいってしまう。

 

 

やっぱり、バスケ部だから鍛えられてるな…

 

 

なんだか情けなくて捲っていた自分の袖をおろした。

 

 

「昨日なんか雅紀さん珍しく機嫌悪そうでしたけど、大丈夫でした?」

 

「え?あ、あぁ、大丈夫!」

 

 

相葉くんのヤキモチだよ、なんて言えないし、昨日のことを思い出すと顔がにやけてしまうからできるだけ避けたい。

 

 

「それより、やっぱすごいね、筋肉。」

 

「え?あぁ、まあ一応バスケ部なんで。鍛えてはいます。」

 

 

さりげなく右腕をグーパーするだけでグッと浮き上がる筋肉がかっこいいなと思った。

 

 

「具体的にはどんな筋トレを?」

 

「え?…あぁ、えっと腕立てと腹筋は毎日家でやってて、あとは学校のトレーニングルームで練習終わりにベンチプレスしたり、っすかね。」

 

「なるほど…腕立てと腹筋くらいなら家でもできるもんな…」

 

 

いや、でも勉強もしないといけない。

テストの結果を思い出すと自分には筋トレなんてしている時間は1分だって取れない。

 

 

筋肉 勉強 筋肉 勉強

 

 

この二つが頭をぐるぐると回る。

 

 

「翔さん?翔さん?」

 

「え、あ、ごめん…。ありがとう参考にするよ!」

 

「は、はあ…。」

 

 

不思議そうな顔をする錦戸の肩をポンと叩いて横を通り過ぎた。

 

 

 

 

 

「あれ、それだけ?」

 

 

結局、自動販売機で売っているビスケットの軽食を買って中庭に行くと潤はお弁当を半分ほど食べ終わっていた。

 

 

「購買は殺伐としすぎててリタイアした。」

 

「あぁ、足も完全じゃないし、あれは危ないね。」

 

「うん。」

 

「テストどうだった?」

 

「聞くな。」

 

「俺はね〜、結構よかったよ。」

 

「良かったな。」

 

「相葉先輩はどうだったかな?」

 

「さあな。」

 

「冷たくない?教えてあげてたんでしょ?勉強。」

 

「は?」

 

「え、違うの?」

 

「うん、教えてない…あ、参考書は何冊かおすすめしたけど。」

 

「え?じゃあテスト期間中あんなに一緒にいたのはなんだったの?なにしてたの?」

 

 

何してたって…。実は付き合うことになって、

毎日 昼休みという名のランチデートと

下校という名の放課後デートしてました、

なんて言えない。

 

 

「えっと…介護?ほら、足怪我してたし、」

 

「そんなん俺がやったのに。」

 

「いや、だって潤は勉強しなきゃだろ?」

 

「相葉先輩の方が俺よりバカそうだけどね。」

 

「えっと、それは…」

 

「何隠してんの?」

 

「え!?」

 

 

潤が真っ直ぐに見つめる。

子供の頃から変わらない目で見られると嘘をつくことへの罪悪感がより重くなる。

 

 

「え、と…」

 

 

つい口籠ってしまう。

 

男と付き合ってるって伝えて、軽蔑するような奴じゃないと分かっていてもどうしても躊躇してしまう。

 

 

「…言いたくないならいいけど。」

 

 

潤が拗ねた顔でお弁当の続きを食べ始めた。

その姿に胸が痛んだ。

恥ずかしいとか言いたくないとか思うような人と付き合ってるつもりはない。むしろ、恋人なのが誇らしいくらい素敵な人なんだから。

 

 

よし。

 

 

「実は相葉くんと…お付き合いしてる…」

 

「え?」

 

 

潤が大きな目をさらに見開いて見る。

 

 

「相葉くんって…相葉先輩?」

 

「うん…。」

 

「ま、まじで!!」

 

 

コクリと頷く。

潤は俺の顔を見てパチパチと瞬きをするだけで、何も言わない。

 

 

「な、なんだよ…なんか言えよ。」

 

「…翔くんって面食いだったんだね。」

 

「え?」

 

「まじか〜。学校中の女の子が付き合いたいと思うような人の恋人が翔くん…」

 

 

潤は箸で白米を掴み上げて止める。

俺は軽食のビスケットをやけになって食べる。

 

 

「文句あるかよ…」

 

「いや、むしろ納得。どんな可愛い人に告られてもオッケーしないわけだ。」

 

「…やっぱ、モテるよね。」

 

「そりゃね。てか、球技大会で翔くんのこと助けてから余計じゃない?あれで、1年の女子にも見つかったんじゃん?」

 

「まじか…」

 

 

確かにあの試合の相手チームは1年のクラスだった。

グラウンドの真ん中で男1人軽々お姫様抱っこするなんて王子様でしかない。

 

俺が逆の立場だったら、

駆け寄ったとしても相葉くんをお姫様抱っこで持ち上げるなんて不可能に近いよな…。

やっぱ鍛えなきゃな…。

 

 

「良かったね。かっこいい彼氏で。」

 

「ああ…。あ?彼氏?」

 

 

弾かれたように潤を見ると、身を引いて驚かれた。

 

 

「え、彼氏でしょ?」

 

「じゃあ、俺が彼女だって言いてぇのかよ!」

 

「いや、2人とも彼氏じゃん?」

 

「…あ、おぉ、そっか…」

 

 

自分が男らしくないことがいつの間にかコンプレックスになっていたのか過剰に反応してしまったことが恥ずかしい。

 

 

相葉くんはよく俺のことを可愛いという。

それは褒め言葉なんだろうけど、正直複雑だ。

俺だって男なんだから好きな人にかっこいいと言われたい。

でも、相葉くん相手にそれは不可能な気がする。

なぜなら相葉くんがかっこよすぎるから。

 

 

 

 

 

 

「あ…次、英語か…」

 

 

午後1番目の授業は音楽で、テストが返ってこないため気が緩んでいた。

次の英語は予想が合っていれば、恐らく酷い点数だろう。

音楽室から教室へ向かう廊下を歩く足が重くなる。

 

パタパタと前から走る音が聞こえ顔を上げると、前から3人の女子生徒が走ってくる。

廊下の真ん中から窓側に避け、道を開ける。

 

 

「相葉先輩が中庭でサッカーしてるってまじ!?」

 

「体育!?」

 

「ううん!自習で遊んでるみたい!急ご!」

 

 

通りすがりに聞こえた女子生徒たちの会話に思わず、二度見した。

 

 

今…相葉くんって言った?

 

 

どうしても聞き流すことができず、その3人を追って中庭の見える渡り廊下へ向かった。

 

渡り廊下には窓に面白いくらい女子生徒が張り付いて、窓の外を見られるスペースがなかった。

すると、同じクラスと思われる女子生徒が何やら声をかけている。

 

 

「雅紀〜! 1点も取れなかったらジュースちょうだいね〜?」

 

 

その言葉に相葉くんの声が返す。

 

 

「え〜!じゃあ逆に1点取ったら奢ってよ!?」

 

 

親しい雰囲気の会話につい顔がムッとする。

近くの窓から身を乗り出して見ている1年生らしき女子生徒がこそこそ話しているのが聞こえた。

 

 

「なんか今のマウントっぽくない?」

 

「分かる。同じクラスで仲良いです自慢?」

 

「相葉先輩、彼女いないんだよね?あの女の先輩絶対狙ってるよ。」

 

「絶対そう。…あっ、やばい!私、次のやつ板書当たってた!」

 

 

1人が慌ててその場から立ち去る。

空いたスペースに近づいて窓の外を覗く。

目に飛び込んできた相葉くんはシャツを肘まで捲り、ネクタイを揺らしてボールを蹴っていた。

 

 

「あ…そっか、衣替え。」

 

 

そんな当たり前な感想しか出てこないほど、目を奪われた。

かっこいい。何を着ていても何をしていても様になる。

そんな相葉くんを見ていると思考が止まる。ただキラキラと笑う相葉くんを見ることに身体の全てが集中してしまう。

 

そんな俺を我に返す横の女子生徒の声。

 

 

「「せーの!相葉せんぱ〜い!頑張って〜!」」

 

 

横の1年生が声援を送る。

その声にピクッと反応した相葉くんは顔を上げ、こちらを見た。

 

 

あ、目が合った…?なわけないか。

 

 

横の1年生たちを見ただけと分かっていても、気づいてくれたのか?と自惚れてしまった。

時計を見ると次の授業の5分前で、そろそろ教室に戻ろうと窓から離れようとした時、

 

 

「翔ちゃんっ!」

 

 

相葉くんが呼ぶ声がして、窓から顔を出し下を見ると、相葉くんが片手を大袈裟に振っている。

俺も小さく振り返す。

横から女子生徒の視線が大量に刺さる。

 

 

「あ!翔ちゃん!喉乾いてない?!」

 

「え?」

 

 

相葉くんは近くのベンチに置いてあった何かを取り、窓の下へと駆け寄ってきた。

 

 

「これあげるっ!」

 

 

相葉くんが俺のいる二階の渡り廊下へ向けて手に持っていたそれを投げた。

 

 

「えっ!?お、おっと。」

 

 

なんとか落とさないようにキャッチしたそれは四角い紙パックのリンゴジュースだった。

 

 

「え、あ、ありがとうっ…」

 

「ちょっと!雅紀!それ私のでしょ〜?」

 

 

横から女子生徒が叫ぶ。

 

 

「ごめんごめん!後で買うから!…あ、翔ちゃん!今度の土曜日って暇?」

 

「えっと、ひ、暇っ!」

 

「俺、午前中は練習試合で午後からは何もないからどっか行こ!」

 

 

相葉くんがそう言い終わったと同時に始業のチャイムが鳴った。

渡り廊下から女子生徒が教室へと焦りながら戻っていく。

 

相葉くんはヒラヒラと手を振って笑顔で見送る。

俺は窓から身を乗り出して叫んだ。

 

 

「い、行くっ!!練習試合も応援に行く!!じゃ、じゃあね!」

 

 

言い捨てるように教室へ走った。

胸が弾むのは走ったせいだろうか…

 

視界の端に捉えた相葉くんの周りにいた男子生徒の視線を思い出すと、すごく恥ずかしかったのに何故か俺は達成感に満ち溢れていた。

 

 

…今度の土曜日。

 

 

手帳を開いて、その日のスペースに"相葉くん"と書いた。

 

 

これって…デート、だよな?

 

 

今度の土曜日まであと2日。きっとこの2日間はすごく長いんだろう。

早く土曜日にならないかな…

 

胸がいっぱいで頬が緩むのを抑えるのがやっとだった。

 

その5分後、ゾクゾクと震えるほど酷い点数の英語のテストが返ってきたのは予想の範疇だった。