※相櫻

※BL

 

 

 

自己責任でお願いします🙇🏻‍♀️

 

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仕事が終わって家に帰るとポストに不在票が入っていた。

 

「櫻井翔…ってまた間違えてる…」

 

もう4日連続で俺の方のポストに入っていて、いつも翔ちゃんの方に入れ直していたが、翔ちゃんはポストを開けていないのか未だ受け取られていない。

 

さすがに教えた方がいいと思ったが、あれから会うのが気まずい。

 

メールにしようかな…

でも、俺からだったら開かないかもな…

会うのは気まずいし…

よし、電話で言おう。要件だけ伝えたら切る。

 

そう決めて部屋に戻り、洗濯物を取り込んでから深呼吸をして電話をかけた。

 

鳴り続ける着信音。

 

出ないかな…

 

そう思って諦めようとしたとき電話が繋がった。

 

「あ、もしもし、翔ちゃん?」

 

『翔!出てきなさい。翔っ!』

 

翔ちゃんではない人の荒い声とドンドンと何かを叩く音がした。

 

「翔ちゃん?誰かいるの?」

 

タイミング悪かったかな?

 

『…助けて、相葉、くん…』

 

消え入りそうな涙混じりの翔ちゃんの声。

血が沸きたって胸がざわつく。

 

『翔ちゃん?今どこ?!翔ちゃん?!』

 

ドンドンとなる音と誰かの荒げた声が遠くに聞こえているだけで、翔ちゃんの名前を呼んでも返事がない。

 

気づいたら家を飛び出していた。

車に乗り、翔ちゃんが行きそうなところを考えた。

 

ほとんど勘だった。

とにかく心当たりを周るしか俺にはなかった。

 

二人でお酒が飲めるようになって初めて行ったバー。

 

店内を見渡しても翔ちゃんの姿はない。

カウンターにいるマスターに駆け寄る。

 

「ねぇ。マスター。今日翔ちゃんきてない?」

 

「おぉ、雅紀くん!来てるよ。ほら、あそこの席、に…いたんだけどな?スーツの人と2人で。」

 

マスターが首を傾げる。

 

「あー、あそこのお二人でしたらトイレですよ。お客さまが体調が悪いみたいで、お連れ様が介抱しておられます。」

 

若い男のウェイターさんの話を聞いて、一目散にトイレに向かった。

 

「翔ちゃん!」

 

そこには壁に押しつけられた翔ちゃんが涙を流して無理矢理にされている姿。

 

「相葉?…なんでここに。」

 

狼狽えている男が翔ちゃんの元恋人の先輩だと気づいたのは、翔ちゃんから引き剥がした後だった。

座り込んでしまった翔ちゃんを支える。

 

「先輩。もう二度と翔ちゃんに関わらないって約束してもらえます?」

 

「は?お前…」

 

「約束してもらえないのなら警察呼びますけど。」

 

先輩は何も言わずに、舌打ちをして出て行った。

 

「ん…」

 

腕の中の翔ちゃんが苦悶の表情で身じろぐ。

 

「翔ちゃん?!大丈夫??」

 

翔ちゃんはぐったりとしていて、かなり酔いが回っているようだった。

目の下の隈がすごい。少し痩せた気がする。

 

「ん…相葉、くん…」

 

「うん、なに?翔ちゃん。」

 

「…ん。」

 

 

 

意識を手放した翔ちゃんをおんぶしてトイレを出る。

テーブルの荷物を若い男のウェイターさんが手渡してくれた。

 

「あ、これもお客様のものでしょうか?」

 

「え?」

 

備え付けに置いてあるバーのメモに翔ちゃんの字で"相葉雅紀"と書かれていた。

 

「…はい。もらいます。」

 

もう気持ちは抑えなくてもいいんじゃないかと都合良く思ってしまう。

 

助手席を全部倒して翔ちゃんを寝かせる。

家へ帰る間、涙を流しながら何度も戯言を言う翔ちゃん。

 

「相葉くん…行かないで」

 

いつもどこか行っちゃうのはあなたでしょ?

 

「相葉くん…会いたい…」

 

 

部屋までおんぶで運んでソファに寝かせる。

穏やかな寝顔だが、少し苦しそうな寝息。

 

電話で助けてと言われた時、生きた心地がしなかった。

変な意地を張り自分が傷つかないようにしていたことを許せなくなった。

1番守りたいのは翔ちゃんなのに。

失うかもしれない予感がリミッターを振り切らせた。

 

「翔ちゃん…好きだよ。」

 

口に出した言葉は驚くほど溶け込んだ。

こんな簡単なことだったんだ。

 

窮屈そうな翔ちゃんのスーツを脱がせ、スウェットに着替えさせる。

スーツをハンガーに掛けて、翔ちゃんを見ると横向きに寝て、スウェットの肌触りに気持ちよさそうだ。

 

「ふふ。もう、それ翔ちゃんにあげよっかな。」

 

ソファの下に座り翔ちゃんを眺める。

目がお酒と涙で赤く腫れている。

蒸して温めたタオルを翔ちゃんの目元に当ててやると、首の位置が定まらないためかすぐに落ちてしまう。

 

「う〜ん。よし、」

 

膝枕をすると翔ちゃんが安心したように息をついた。

目の下の隈から何日も寝られていないことがわかる。

 

「翔ちゃん。ゆっくり休んで。」

 

 

目を覚ましたら翔ちゃんに伝えよう。

もう、迷路で彷徨うのは終わり。

行き止まった壁は壊して進む。

1番大切なものを見失わないように。

 

片想いを終わらせるんだ。

 

 

 

涙を目尻に溜めながら翔ちゃんが真っ直ぐに僕を見る。

 

「相葉くん…消毒、してよ。」

 

「うん。」

 

唇から首に滑らせ口付ける。

スウェットの裾から手を這わせると一瞬ビクッと肩が揺れた。

 

バーで涙を流しながら抵抗する翔ちゃんが思い浮かんだ。

 

「ごめん。」

 

スルッと手を抜こうとすると、その手を掴まれる。

翔ちゃんはフルフルと首を横に振る。

 

「やめんなよ…消毒、してくれんだろ?」

 

「でも…」

 

嫌でも思い出すだろう。

まだあれからそんなに時間も経っていないし、酔いが覚めて少しずつ記憶が繋がる頃だ。

 

「いいから。」

 

翔ちゃんは俺の首に腕を回し、深く口付けた。

後ろに倒れる翔ちゃんに引っ張られ、ソファに押し倒す形になる。

 

できるだけ優しくゆっくりと手を這わせる。

胸の先端を捉え、親指で掠めると翔ちゃんが腕に力が入る。

 

「嫌だったら跳ね除けて。」

 

耳元で囁くと翔ちゃんはコクっと頷いた。

ゆっくりと翔ちゃんを確かめるように手を動かす。

 

「相葉くん。ずっと言いたかった…」

 

「ん?」

 

「相葉くん、大好き…」

 

 

どうしてこんなにも拗れてしまったのかなんて、もうどうでもいい。

ただ翔ちゃんといられればいい。

 

これからはずっと一緒に。