私の名前は小林由依。狼だ。
人間どもは穢れた血を生まれながらにして持っている私は幼少期そう父から教えられた。
そして今私は17歳高校生だ、私はその言葉を胸に人間としてこの人間界に潜んでいる。
私は今学校の寮で人間として人間達と共に過ごしている。私の行っている学校は女子学校だ。女子たちと共に2年間いるがいろいろとわかることがあった。
女子たち同士で恋愛に発展することがあるらしい。
私はそのことをここに来て初めて知った。
最初はただ仲の良い友人同士なのかと思ったがある日トイレに目覚め起きてその後自分の共同部屋に戻ったとき、自分のベッド以外にもう2つあるうちの一つのベッドが妙にモゾモゾ動いていた。不思議に思いながら自分の隣のベッドを見るとそこにいたはずの女子がいなくなっておりそのもう一つ横のベッドを辛抱強く見ていると二人が抱き合って寝ているのが見えた。私は思わずえ、と声を出してしまった。すると布団をファサッとめくり二人でこちらを見つめてきた。二人もまさか私にこの状況を見られているとは思っていなかったらしくとても驚いた顔をしていた。40秒ほど見つめあっただろうころに二人のうちの一人が口を開いた。
女子A:ごめんね、起こしちゃった?
由依:いや、私はただトイレに行っただけだけど、二人は何してるの?
女子A:あの、その、これは、、
女子B:私達実は付き合ってるの!
由依:え、付き合ってる?の
女子A:いきなりそんなこと言われてもびっくりだよね
ごめん、でも誤解をうまないようにと思ってはっきり言ったんだ。
女子B:とりあえず騒がしくしてごめんね。
由依:え、いや別に謝らなくていいよ。私こそ邪魔しちゃってごめんね。と、とりあえずおやすみ。
女子A:あ、そうだね寝よおやすみ
女子B:う、うん寝よおやすみ
こうしてとりあえず事なきを得たが、私は女子同士の恋愛が人間界ではあるということを知り、徐々に付き合ってるか付き合ってないかの判断ができるまでになった。それから1年して私は高校2年生になり新しく1年生が入学してきた。学校の雰囲気というものはどんな奴らが入るかによって本当にガラッと変わるなぁと思った。
それから一週間ぐらいした頃1、2年生同士の交流会とか言うのが開かれ1年生と2年生でそれぞれ二人ペアを自分達で作り学校を2年生がリードする形で二人で各々自由に回るというとてもコミュ力が試される本当に地獄のようなイベントが開かれた。正直みんなおどおどしてペアなんてそう簡単にはできないだろうなんて呑気に考えていたが、いざイベントが開かれると2年生が自ら1年生にズンズン話しかけていきあっという間にペアが出来上がっていき、残っている人がひと目でわかる状況にまでなってしまった。
私はこれまでにないほどおどおどしていたことだろう。そんななか一人の子が私に駆け寄ってきて話しかけてきた。
?:あ、あの私とペアになりませんか?
由依:え、あよろしくお願いします。
?:ありがとうございます。よろしくお願いします。
30秒ほど間があって
由依:えーっと、私の名前は小林由依です。由依って呼んでください。
?:あ、私の名前は的野美青です。的野って呼んでください。
由依:わかりました。的野さん。
的野:敬語じゃなくていいです!由依さん先輩なので、あと名前も呼び捨てでお願いします!
由依:あ、うん、わかった。的野、よろしく!
的野:はい!由依さん!
それから私たちはぎこちない会話を挟みながらも順調に学校周っていた。そして学校を大体半分くらい回ってきたころに的野が私に不意の質問をしてきた。
的野:あの、、由依さん質問してもいいですか?
由依:もちろんどこか気になる点があった?
的野:いや、あのそうじゃなくて単純に質問したくて、
由依:ほ〜?
的野:いいですか?
由依:う、うんいいよ
的野:(深く息を吸って)由依さんって付き合ってる人っているんですか?
あまりの唐突の質問に私は思わず【えっ?!】と大声を出してしまった。咄嗟に口を手で封じた。
由依:ちょっと、、まってねそれが的野の聞きたかったことなの?
的野:はい。
つぶらな瞳で私をまっすぐ見つめてくるあたりからして嘘ではないんだなと私はわかった。
由依:付き合ってる人はいないよ。
そう私が答えると的野の顔はうっすら笑みを浮かべた。
的野:そうですか。
的野はただその一言だけつぶやいた。でもその一言でもわかるほどなぜだか嬉しそうな感情が伝わってきた。私は少し怒りを覚えその感情のまま的野に話しかけた。
由依:なに?そんなに私に付き合ってる人がいなくて嬉しいの?モテなくてざまぁとか思ってんの?
的野:え、あ、いやそういうことじゃなくて、、、
由依:じゃあどういうことなの?
的野:えっと、それは、、えっと、、、
由依:答えられないの?答えられないってことはそういうことでしょ?
的野:ち、違うんです!そうじゃなくて、私由依さんのことがその?!&#%+なんです。
由依:え?
的野:由依さんのことが好きなんです!
由依:うん、え?好き?
的野:はい!好きです!大好きです!
由依:うん、それはわかったんだけど私達今日初めて喋ったんじゃん?
的野:はい
由依:てことは今日初めて会ったわけだよね?
的野:はいそうです
由依:え?好きになる要素がまずなくない?
的野:いや、私は由依さんを見た瞬間に好きってなりました!
由依:一目惚れってこと?!
的野:そうです!一目惚れです!
由依:えーっと、なんて言えばいいのかなこういう告白っていうのをされるのが初めてだからちょっとびっくりしてる。
いや、ちょっとどころの話ではない。狼として普通に生きていた時もこんな経験はない。なのに一目惚れ、しかも父に穢れた血が流れていると教えられた人間にしかもしかも女子に、いろいろと情報量が多すぎて頭がおかしくなりそうだ。
的野:えっ!それ本当ですか?由依さんかわいいからたくさん付き合ったことがあるのかと思ってました!
的野が純粋すぎて私が狼ではなく人間として偽りをもって生きていることが哀れに思えた。
由依:本当だよってかモテたことなんて一度もないからそう言われるとなんか不思議な気持ちになるよ。
的野:うふふん♪
私が話し終わってもずっと的野はこちらをちらちら見ながら微笑みかけてくる。そんな姿に私の胸がぐっと苦しくなった。なんだろこの気持ち。
由依:ふふそんなに嬉しかったんだね
的野:はい!あのこれから由依さんに会いにいってもいいですか?
由依:いいよ、おいで
的野:ヤッタ!!(バンザイのポーズをしながら)
由依:的野は本当に明るくて元気だね、ちっちゃい子みたいw
私がそう言うと的野は顔を赤らめ少し拗ねたような顔をしながら見つめてくる。その顔を見て私はまた胸がぐっと苦しくなった。でもこの苦しさは嫌な苦しさではない気がした。そして心臓の鼓動も胸の苦しさと同様に早くなる。
私はこのとき初めて恋をした。きっとそうだそれ以外に理由はない。父も昔言っていた。【好きな人ができるとその人の近くにいるだけで胸が苦しくなり、心臓の鼓動も早くなる、それが恋というものなんだ。】と言っていた。そしてそれと同時に【絶対に人間とだけは恋をしてはならない、人間には私達とは違う穢れた血が流れている、そんな奴らに少しでも触れてしまえば私達狼に一瞬にして滅びる未来がやってきてしまう。母さんがその一人だった。母さんは人間に恋をして私のもとを離れその人間とくっついてから、おかしくなってしまったんだ。急にベッドに寝込んでどんどん衰弱していきそのまま逝ってしまった。原因はあの人間以外にあり得ない。あいつが母さんを殺したんだ俺は絶対にあいつを許さない。恨み続ける。だからお前にはそんなふうになってほしくないだから人間に恋をしてはならないわかったな。】
そんなことを考えていたせいで的野の話を全く聞けていなかった。
的野:由依さん?聞いてますか?
由依:あ、ごめんごめんw
的野:も〜、ご飯ですよご飯今日一緒に食べませんか?
由依:うん、食べよ
的野:やった!じゃあ帰りのホームルーム終わったら屋上来てください!
由依:屋上?先生にバレたらやばくない?
的野:いやでも私今日朝行ったらバレずに行けたんでいけますよ!
由依:はぁなるほど、じゃあ頑張っていくね
的野:はい!じゃあまた後で!
由依:うん、またね〜!
すごいな屋上にしかも一人で行くなんてなかなか度胸がある子だなと思った。私でさえも一度も足を踏み入れたことがないところだ。意外と人間にも危ない橋を渡る奴もいるんだなと思い少し嬉しかった。
それから教室に戻り30分ほどして帰りのホームルームが終わり私は誰にもバレないようにそそくさと教室を後にした。
重いドアをなるべく音がならないようにゆっくり開け初めての屋上の地に足を踏み入れる。少しドキドキしながらもワクワクした感情で屋上をスタスタと歩く。隅っこのちょっとした出っ張りのところに的野はちょこんと座って待っていた。私の胸がまた高鳴る。抑えようにも抑えられない。この時初めて的野に触れたいという哀れな感情さえも芽生えてしまった。だがそんな私の考えも的野にわかるわけもなく、無邪気に私のもとに駆け寄り抱きついて頭を私の胸に当てた。やばい、この鼓動がもし的野に聞かれてしまったらどうしよう、そればかり私の頭の中をぐるぐると回っていた。
的野:由依さん心臓がドクドクいってる、もしかして走ってきましたか?
私の想像していた斜め上の質問が飛んできて少し驚いたが、私は安堵した。
由依:うんちょっとだけ走ってきた。先生たちにバレたらやばいと思ったからさ、
的野:なるほど、すいませんこんなところにしちゃって、
と申し訳無さそうにしながら上目遣いで私を見上げる。今まででこんなに胸がドキドキしたことはない。
由依:そんな謝らないでいいよ、屋上になんて来ることなんて的野に誘われなかったら多分来なかっただろうからいい経験ができたよ。
的野:ならよかったです!
と的野は嬉しそうに笑った。それから私達は弁当を食べまたここで食べようと約束をして二人で屋上を後にして午後の授業に向かった。
1時間後、、、、
退屈なおじさんの社会の授業を終え、帰りのホームルームも終えみんなとじゃあね、なんて言って一人で学校を出た。
私の家は学校からさほど遠くなく歩きで20分ほどで着く。私は家に着くまでの20分間ずっと的野のことを考えていた。今まで私は生まれてからずっと父に言われ続けてきた【人間の血は穢れている】このフレーズをなんの疑問もなく聞き入れて来たが今は違う、そうじゃない気がする。本当に父の言葉は合っているのかと父の言葉を疑い始めた。だってこんなにも人間と関わっているのにも関わらずまったく血の穢れが感じられない、むしろ私のほうが穢れた血が流れているのではないか、人間はあんなにも無邪気に笑う、でも私達狼達はほぼ感情を表に出さない、穢れているのは私達狼だ。父はきっとそれが自分の癪にさわると感じて私に嘘を教えたに違いない。今すぐにでも父に聞きたいところだがいきなりそんなことを聞けばすぐに父に勘付かれそうなためなにか良い策はないものかと考えているといつの間にか家についていた。部屋に行ってよく考えようと思い、手を洗いに洗面所に向かう途中父とすれ違った、と父が歩みを止める。
父:由依、
私は不意に名前を呼ばれ冷や汗をかいた。
由依:なに?
父:お前なにかあったのか?
由依:え?な、なんで?
父:妙に目が泳いでるじゃないか、私に隠し事など通用しないぞ、
由依:隠し事なんてしてないよ!
私はあまりの焦りに声を荒げてしまった。
すると父はどこか嬉しそうにニヤついた。
父:わかったぞ、恋だないい狼と出会ったのか?
父の質問に私は口を積む。すると父は何を悟ったのか急に真顔になる。
父:まさかお前、人間に、、、
由依:そうだよ!人間だよ!私はあなたに何と言われようと貫いてみせる!もう私はあなたの言う事は一切聞かない、私の意志で行動する!
父:ほ〜、そうかそうか哀れな人間に心を奪われたか
由依:哀れなのはあなたよ
父:な、何だと!私に向かって!
そう言うと父は私の胸ぐらを掴み壁に押し付けた。
由依:うっ、、図星じゃん!
父:違う!俺は哀れではない!
由依:じゃあこの手は何!認めたくないからこうやって力でねじ伏せようとしてるんでしょ!
父:黙れ、黙れ、黙れ!!
父は右手を振り上げ私を殴ろうとした瞬間悲鳴が聞こえた。
召使い:ご主人様お辞めください!お嬢様に手を挙げるなんて!
そう言われ父は我にかえった。
父:す、すまない
父はその一言を言うとまるで別人のように弱々しくなった。そして父は、
父:これからはお前の行きたいように生きなさい。今まで苦しめてしまってすまなかった。
と言ってそのままスタスタと部屋に入っていった。
私は生まれて初めてあんなにも弱々しい父を見た。
きっと父は強がっていたのかもしれないと思った。そして私はこれから自分の気持ちを大事に生きていくと誓った。
次の日
今日も学校に向かった。とはいえいつもより格段と早く起きてしまいそのまま学校に来たため約40分ほど早く学校に着いた。教室に誰かしらいるだろうといったが誰もおらず鍵も施錠されている。それもそうだ40分も早く来ているわけがない、鍵を職員室に取りに行く面倒くささを観じながらも取りに行かなければ誰かが来るのを待たなければならないという両方の面倒くささが同時に襲ってくる。とりあえず教室に入れば自分の席に座って寝ることができるしそっちの方がいいと思い職員室に鍵を取りに行った。そして教室の鍵を開け鍵を教卓に置き、自分の席に座る。一気に静けさがましたように感じた。自分の息遣いだけが静かに聞こえる。そんなこんなでぼーっとしていると徐々に眠気がきてそのまま私は机に突っ伏して眠りに着いた。
それから何分ほど寝たのだろう頃に、教室のドアが開いた。私は半分寝ぼけた状態で起きてドアの方向に目を向ける。そこには的野がこちらを凝視しながら立っていた。私は一瞬頭が混乱した。
由依:えっ?!ま、的野?なにしてんの?
的野:由依さんおはようございます!由依さんの教室に行ったらきっとあえるんじゃないかって思ってきました!でも、由依さんのこと起こしちゃったみたいで、、すいません。
由依:ううん、全然それはいいんだけど凄いね随分早いけど、まだホームルームまで40分くらいあるよw
的野:確かにwでもこうして早く来たことで由依さんに会えることができたし、私は嬉しいです!
本当に元気な子だ的野の声が教室中を駆け巡っているほんとメガホンみたいだ。
由依:おう!ならよかったよw
的野:由依さんはなんでこんなに早く学校に来てるんですか?
由依:実は早い時間に目が冷めてそれから寝れなくなっちゃったんだよね、だから今日は早めに来たんだよね。
的野:え、そうなんですか!由依さん体調とか大丈夫ですか?
由依:大丈夫だよありがとう、
そういうと的野は安心したのかにっこり笑顔を浮かべた。私は頭の中でその時かわいいなぁ~なんて思っていたがそんなことを的野に言えるわけもなく、的野と一緒に帰る約束をした。
放課後、、
的野と今日初めて一緒に帰る。ホームルームあたりからずっと胸がザワザワしていた。
私は放課後校門の前で的野を待っていた。
的野:由依さ〜ん!
由依:おぉ~的野!
よくわからないが二人で叫びながらハグをした。
こんなことをしたのも初めてでも意外とよく見かける光景でもある。やってみると意外と楽しいもんだ。
的野:由依さん久しぶりです!!
由依さん:久しぶりって今日の朝合ったでしょw
的野:たしカニwあっハッハッハッハッ!
強い風が一瞬吹き荒れた。
由依:アハアハアハアハ💦お、おもしろいねえ~!
的野:まじですいません!滑りました!反省してます!
由依:いや大丈夫だよ意外と上手いと思うし。
的野:絶対思ってないですよね〜!
由依:思ってるって!w
そんなたわいのない話をしていると私の家の前に着いた。すると的野がいきなり私の手を両手で包みこむようにして握り私の目を見て由依さんさようならと言って少し照れる仕草をしながら走って帰っていってしまった。
私はいつの間にか的野のことが好きになっていた。
この気持ちを伝えるべきなのかそれとも自分の胸の中にしまっておくべきなのか判断がまだできない。
でも自分に嘘はつきたくない。私は決意を決め自宅に帰る。
3年後、、
ピピピピピピピ!!!(アラーム音)
?:起きて、ねぇ起きろー!
由依:う〜ん、、、起きてる、、よ
?:起きてないー!今日お出かけするって約束したじゃん!
由依:起きました!ねむぃ、美青腕引っ張ってー
的野:もー!わかったよ!ぐぬぬぬぬ!って全体重かけたら起こせないよ!
由依:大丈夫だよ美青ならいけるぞー!
的野:いけないわ!
由依:バフッ
枕を私の顔に投げつける。
的野:もう私起こさないからー!
そういって美青は洗面台の方に行ってしまった。
寝起きの重い体をなんとか自力で起こす。寝起きはなんでこんなに辛いんだろうかと毎日のように考える。
だが今はそんなことを考えている暇はない!今日は二人でで書ける約束をしていたのだから。
今日は私達が付き合って3年の記念日、だから美青はいつも以上に可愛らしい格好をしている。私もいつもより少しだけ大人びた服を着た。美青はそういった細かな違いにすぐ気づくためなんだか嬉しくなる。
私はあの時美青に告白という判断をして本当によかったと思っている。あの時その判断をしていなかったらこんなにも幸せな日々はきっと過ごせていなかったかもしれない。そしてこれから何年何十年と美青と幸せな日々を過ごして行きたい。
小坂先生