元政府税調会長で財政学を専門とされていた石弘光氏の訃報がネットでも流れました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180828-00000594-san-bus_all
石弘光氏が死去、元政府税調会長、81歳
8/28(火) 18:27配信
202
産経新聞
一橋大学長や政府税制調査会会長を務めた石弘光(いし・ひろみつ)氏が25日、膵臓(すいぞう)がんのため死去した。81歳。葬儀・告別式は近親者で27日に行った。喪主は妻、真美子さん。お別れの会を10月2日午後2時、東京都千代田区一ツ橋2の1の1、如水会館で開く。
東京都出身。昭和36年一橋大経済卒。52年、経済学博士。同大講師、助教授、教授を経て、平成10年に同大学長。19年に放送大学長。
専門は財政学。12年から18年まで会長を務めるなど、政府税調で24年間活動した。17年には「個人所得課税に関する論点整理」を公表。給与所得控除や配偶者控除など各種控除の縮小・廃止を打ち出すとともに、明快な語り口で負担増への協力を求めたことが「サラリーマン増税」と批判された。しかし、消費税などの増税を回避せずに、厳しい状況にある国家財政の健全化を進めることをいちずに訴え続けた。
放送大学長に就任してからは生涯教育の普及に向け、同大学の改革・知名度向上に取り組んだ。
「現代税制改革史」など著書多数。「財政改革の論理」で昭和58年のサントリー学芸賞を受賞した。
→言うまでもなく、消費税制度の導入、立ち上げに大きく貢献された方です。
私自身は現在の「消費税制度」について否定的見解を持ち、制度見直しの必要を強く感じるものではありますが、国家のことを憂い、国家財政改革の必要性を訴え続けた石氏の真摯な姿勢についてなら、これは素直に頭が下がる思いです。
この場でもお悔やみ申し上げます。
が、この石弘光氏もまた、現在の消費税制度がインボイスを使用しない帳簿方式だったことは重大な欠陥だと考えていたことは、あまり知られていません。
以前他の記事などで取り上げた小室直樹氏や野口悠紀雄氏に限らず、現行消費税制度がインボイスを使用しない帳簿方式であることを問題視していた論者というのは、石弘光氏もまたそうだったわけです。
そうした論者は、実際のところ他にもいらっしゃるんですが、ここでは石氏の著書『消費税の政治経済学』(日本経済新聞出版社)から、その主張の一部を引用させていただくことにしましょう。
この反面、消費税はいくつもの重大な欠陥を持っている。たとえば、次の四点が特に重要である。
1 インボイスを使用しない帳簿方式
2 あまりにも適用範囲の広すぎる簡易課税制度
3 非常に高い非課税水準つまり免税点
4 限界控除制度
このような諸措置はすべて、法定納税義務者になる業者を懐柔するために設けられた特例であり、消費税の性格を著しく歪めてしまったといわざるを得ない。この結果、次のような二つの問題が生じてくる。
a 誰が最終的に消費税を負担するのかが非常に不明確である。
b 価格付けが混乱する
第一に、インボイス方式をとらないというのは、当時の世界では日本の消費税くらいのものであった。諸外国の付加価値税において、まずこうしたケースは存在しない。これまで発展してきた付加価値税の制度の中でインボイスを導入すればすべてが完全だというわけではないが、連鎖的に発生する売上、仕入をできるだけ把握するために必要なものといえる。課税当局に提出義務はなくても、インボイスの保存は税務調査に有用だし、何よりも課税業者自身の仕入の算定を容易にするであろう。
(『消費税の政治経済学』P167、169)
なお同書には、その後
1989年の「実施状況フォローアップ小委員会」による議論の中でインボイス導入についても議論があり、この点に関しては現行の「帳簿方式」の維持が提言されたこと
また政府税調による「平成16年度の税制改正に関する答申」の中でも
「将来、消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率になった場合には、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題となる。しかしながら、消費税の税率構造のあり方については、制度の簡素化、経済活動に対する中立性の確保、事業者の事務負担、税執行コストといった観点からは極力単一税率が望ましい。……また、将来、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書の保存を求める『インボイス方式』の採用が検討課題となる。これらについては、今後の消費税率の水準に関する議論も踏まえ、高い税率水準の下で複数税率を採用している欧州諸国の例も参考にしつつ、引き続き検討を深めていくべきである」(政府税調[二〇〇四年])
などについてもふれられています。
Yahoo!知恵袋あたりでは
https://blog.goo.ne.jp/shpfive/e/efb36d69fa353c34e66abda0287bb3ca
>これもメチャクチャですね。
「インボイス方式」は軽減税率適用の場合に必要とするのです。
日本は過去、軽減税率を採用していないので 「インボイス方式」など議論にならなかっただけです。
などと根拠もなしに一方的な断定をする投稿者を見かけますけど
例えば、実際にも政府税調による「平成16年度の税制改正に関する答申」の中では「極力単一税率が望ましい」としつつも、インボイスについては「また、将来、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書の保存を求める『インボイス方式』の採用が検討課題となる」とされています。
然り
両者は切り離し可能な議論なんです。
ただ、欧州諸国などでは関連付けられてきたから、あたかも
軽減税率の導入=インボイスの導入
みたいなイメージとなっているだけの話です。
また、実際には消費税制度におけるインボイス導入は何度も議論されているということは、ここでも明らかでしょう。
いずれにしても、現行消費税制度の立ち上げに大きく貢献されながら、その欠点もまた知悉されていた石弘光氏はお亡くなりになられました。
ご冥福をお祈りいたします。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180828-00000594-san-bus_all
石弘光氏が死去、元政府税調会長、81歳
8/28(火) 18:27配信
202
産経新聞
一橋大学長や政府税制調査会会長を務めた石弘光(いし・ひろみつ)氏が25日、膵臓(すいぞう)がんのため死去した。81歳。葬儀・告別式は近親者で27日に行った。喪主は妻、真美子さん。お別れの会を10月2日午後2時、東京都千代田区一ツ橋2の1の1、如水会館で開く。
東京都出身。昭和36年一橋大経済卒。52年、経済学博士。同大講師、助教授、教授を経て、平成10年に同大学長。19年に放送大学長。
専門は財政学。12年から18年まで会長を務めるなど、政府税調で24年間活動した。17年には「個人所得課税に関する論点整理」を公表。給与所得控除や配偶者控除など各種控除の縮小・廃止を打ち出すとともに、明快な語り口で負担増への協力を求めたことが「サラリーマン増税」と批判された。しかし、消費税などの増税を回避せずに、厳しい状況にある国家財政の健全化を進めることをいちずに訴え続けた。
放送大学長に就任してからは生涯教育の普及に向け、同大学の改革・知名度向上に取り組んだ。
「現代税制改革史」など著書多数。「財政改革の論理」で昭和58年のサントリー学芸賞を受賞した。
→言うまでもなく、消費税制度の導入、立ち上げに大きく貢献された方です。
私自身は現在の「消費税制度」について否定的見解を持ち、制度見直しの必要を強く感じるものではありますが、国家のことを憂い、国家財政改革の必要性を訴え続けた石氏の真摯な姿勢についてなら、これは素直に頭が下がる思いです。
この場でもお悔やみ申し上げます。
が、この石弘光氏もまた、現在の消費税制度がインボイスを使用しない帳簿方式だったことは重大な欠陥だと考えていたことは、あまり知られていません。
以前他の記事などで取り上げた小室直樹氏や野口悠紀雄氏に限らず、現行消費税制度がインボイスを使用しない帳簿方式であることを問題視していた論者というのは、石弘光氏もまたそうだったわけです。
そうした論者は、実際のところ他にもいらっしゃるんですが、ここでは石氏の著書『消費税の政治経済学』(日本経済新聞出版社)から、その主張の一部を引用させていただくことにしましょう。
この反面、消費税はいくつもの重大な欠陥を持っている。たとえば、次の四点が特に重要である。
1 インボイスを使用しない帳簿方式
2 あまりにも適用範囲の広すぎる簡易課税制度
3 非常に高い非課税水準つまり免税点
4 限界控除制度
このような諸措置はすべて、法定納税義務者になる業者を懐柔するために設けられた特例であり、消費税の性格を著しく歪めてしまったといわざるを得ない。この結果、次のような二つの問題が生じてくる。
a 誰が最終的に消費税を負担するのかが非常に不明確である。
b 価格付けが混乱する
第一に、インボイス方式をとらないというのは、当時の世界では日本の消費税くらいのものであった。諸外国の付加価値税において、まずこうしたケースは存在しない。これまで発展してきた付加価値税の制度の中でインボイスを導入すればすべてが完全だというわけではないが、連鎖的に発生する売上、仕入をできるだけ把握するために必要なものといえる。課税当局に提出義務はなくても、インボイスの保存は税務調査に有用だし、何よりも課税業者自身の仕入の算定を容易にするであろう。
(『消費税の政治経済学』P167、169)
なお同書には、その後
1989年の「実施状況フォローアップ小委員会」による議論の中でインボイス導入についても議論があり、この点に関しては現行の「帳簿方式」の維持が提言されたこと
また政府税調による「平成16年度の税制改正に関する答申」の中でも
「将来、消費税率の水準が欧州諸国並みである二桁税率になった場合には、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題となる。しかしながら、消費税の税率構造のあり方については、制度の簡素化、経済活動に対する中立性の確保、事業者の事務負担、税執行コストといった観点からは極力単一税率が望ましい。……また、将来、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書の保存を求める『インボイス方式』の採用が検討課題となる。これらについては、今後の消費税率の水準に関する議論も踏まえ、高い税率水準の下で複数税率を採用している欧州諸国の例も参考にしつつ、引き続き検討を深めていくべきである」(政府税調[二〇〇四年])
などについてもふれられています。
Yahoo!知恵袋あたりでは
https://blog.goo.ne.jp/shpfive/e/efb36d69fa353c34e66abda0287bb3ca
>これもメチャクチャですね。
「インボイス方式」は軽減税率適用の場合に必要とするのです。
日本は過去、軽減税率を採用していないので 「インボイス方式」など議論にならなかっただけです。
などと根拠もなしに一方的な断定をする投稿者を見かけますけど
例えば、実際にも政府税調による「平成16年度の税制改正に関する答申」の中では「極力単一税率が望ましい」としつつも、インボイスについては「また、将来、仕入税額控除の際に税額を明記した請求書の保存を求める『インボイス方式』の採用が検討課題となる」とされています。
然り
両者は切り離し可能な議論なんです。
ただ、欧州諸国などでは関連付けられてきたから、あたかも
軽減税率の導入=インボイスの導入
みたいなイメージとなっているだけの話です。
また、実際には消費税制度におけるインボイス導入は何度も議論されているということは、ここでも明らかでしょう。
いずれにしても、現行消費税制度の立ち上げに大きく貢献されながら、その欠点もまた知悉されていた石弘光氏はお亡くなりになられました。
ご冥福をお祈りいたします。