ここでは、あえて消費税の増税を自らも主張している経済学者の伊藤元重氏の発言から引用しましょう。
財政問題には三つの論点があります。
第1の論点は。「今、積み上がっている借金をどうするか」です。日本では1990年にバブルが崩壊してから30年近く、財政赤字が続いてきました。それが膨大な金額に達しています。金額の査定方法は複数あるので、ここではおよそ1000兆円と考えます。日本のGDPが約500兆円ですから、GDP比で200%もの規模になります。私はこの債務を財政問題における「前門の虎」と呼んでいます。
第2の論点は、プライマリーバランスの赤字の問題です。プライマリーバランスは基礎的財政収支と
もいわれます。国債の償還と利払いに充てる費用を除いた歳出(すなわち政策的な経常支出)と、歳入(税収と新規発行された国債)の差額です。プライマリーバランスがゼロであれば、社会保障や文教・科学振興費、公共事業といった政策的な経常支出が、税収などでちょうど賄われていることになります。
現在、プライマリーバランスは15.8兆円の赤字(2015年度、国・地方の合計)となっています。毎年このような規模の出血が続いている状況なのです。ここではそれを「当面の出血」と呼ぶことにします。
第3の論点は「2025年問題」とよくいわれますが、2025年あたりを節目として社会保障負担が一段と増大することにどう対応していくか、という問題です。
2025年には団塊の世代あたりの人たちが75歳を超えます。そのくらいの年齢になると医療費がかさむため、2025年ごろには国の医療費が一気に膨らむと予想されています。
(中略)
そうしたことから、今後の社会保障負担の増大は必至です。私はこれを「後門の狼」と呼んでいます。
財政問題への対応を考えるとき、前門の虎、当面の出血、後門の狼という三つに同時に気にしながら、しかも経済を失速させないことが求められます。もし経済を失速させたら税収が減り、事態がますます悪化してしまいます。
(『伊藤元重が警告する日本の未来』P346~347より抜粋)
→お分かりいただけたでしょうか?
「経済を失速させたら」、財政再建もへったくれもなくなるんです。
仮に消費税の増税を主張する立場を支持するのだとしても、それはあくまでも経済成長をこれからもしていくのだという前提に立つのでなければ意味はありません。
であるなら、もし現時点で消費税増税による「大幅な経済失速」が高い確率で予測されるなら、それは行うぺきではないはずなんです。
が、それはおきます。
伊藤元重氏はこうも言っています。
三つの論点の中で、どれに優先的に取り組むべきでしょうか。私は「前門の虎」ではないと思います。積み上がった債務の解消は重要な課題ですが、今どんなに力んだところで急速に減らすことはできません。
また、少し専門的になりますが、経済全体のお金の流れからいっても、それを最優先にしなくてもよいと思われます。財政赤字化だという場合、政府部門の赤字を家計・企業という民間部門の貯蓄が、あるいは外国のお金で吸収していることになります。今の日本は経常黒字なので、財政赤字を民間の貯蓄で支えている格好です。つまり国債のほとんどを保有しているのは日本の投資家であり、彼らは好んで国債に投資する傾向を持っているため、国債の金利が低い水準に落ち着いているというのが現実です。近年、日銀が政策的に国債を大量購入していることも、この傾向に拍車をかけています。
逆に、もし日本が経常赤字であれば、民間のお金が海外に流出している、つまり民間の貯蓄も赤字であり、財政赤字が各国のお金で賄われている状態といえます。そうした構図の下では、海外投資家の厳しい選別に遭い、国債の金利は高騰を余儀なくされるだろうと予想されます。そうなると国債発行が困難になってきますから、債務自体を無理にでも減らさなくては立ち行かなくなります。
話を戻すと、今の日本では財政赤字が民間貯蓄で賄われているので、国債金利が急激に上昇する可能性は小さく、人々の生活が不自由になるような債務の大幅圧縮までは考えなくてよいだろうということです。もちろん、後に述べる社会保障改革は債務削減につながるものですが、「とにかく債務を減らさないと日本は大変なことになる」と煽るような発言は冷静さを欠いていますし、現実的な提案になっていません。そういう議論に対しては、ちょっと待ってほしい、といいたいのです。
(上掲書P347~348)
私自身の個人的な見解はさておき、ここまでの話であるなら多くの人にとっても異存はないところだと思うのですけど、いかがでしょうか?
論点は
三つの「出血」に同時に気にしながら、しかも経済を失速させないことが求められ、もし経済を失速させたら税収が減り、事態がますます悪化してしまう
山のように積み上がった債務の解消は重要な課題ですが、今どんなに力んだところで急速に減らすことはできないし、そのために無理をすべきではない
先々の問題は考えなければいけないとしても、現在の我が国では財政赤字が民間貯蓄で賄われているので、国債金利が急激に上昇する可能性は小さく、人々の生活が不自由になるような債務の大幅圧縮までは考えなくてもいいし、それよりも「今、出来ることを優先させ、先にやれることをやる」べきである
ということであると認識しています。
財政問題には三つの論点があります。
第1の論点は。「今、積み上がっている借金をどうするか」です。日本では1990年にバブルが崩壊してから30年近く、財政赤字が続いてきました。それが膨大な金額に達しています。金額の査定方法は複数あるので、ここではおよそ1000兆円と考えます。日本のGDPが約500兆円ですから、GDP比で200%もの規模になります。私はこの債務を財政問題における「前門の虎」と呼んでいます。
第2の論点は、プライマリーバランスの赤字の問題です。プライマリーバランスは基礎的財政収支と
もいわれます。国債の償還と利払いに充てる費用を除いた歳出(すなわち政策的な経常支出)と、歳入(税収と新規発行された国債)の差額です。プライマリーバランスがゼロであれば、社会保障や文教・科学振興費、公共事業といった政策的な経常支出が、税収などでちょうど賄われていることになります。
現在、プライマリーバランスは15.8兆円の赤字(2015年度、国・地方の合計)となっています。毎年このような規模の出血が続いている状況なのです。ここではそれを「当面の出血」と呼ぶことにします。
第3の論点は「2025年問題」とよくいわれますが、2025年あたりを節目として社会保障負担が一段と増大することにどう対応していくか、という問題です。
2025年には団塊の世代あたりの人たちが75歳を超えます。そのくらいの年齢になると医療費がかさむため、2025年ごろには国の医療費が一気に膨らむと予想されています。
(中略)
そうしたことから、今後の社会保障負担の増大は必至です。私はこれを「後門の狼」と呼んでいます。
財政問題への対応を考えるとき、前門の虎、当面の出血、後門の狼という三つに同時に気にしながら、しかも経済を失速させないことが求められます。もし経済を失速させたら税収が減り、事態がますます悪化してしまいます。
(『伊藤元重が警告する日本の未来』P346~347より抜粋)
→お分かりいただけたでしょうか?
「経済を失速させたら」、財政再建もへったくれもなくなるんです。
仮に消費税の増税を主張する立場を支持するのだとしても、それはあくまでも経済成長をこれからもしていくのだという前提に立つのでなければ意味はありません。
であるなら、もし現時点で消費税増税による「大幅な経済失速」が高い確率で予測されるなら、それは行うぺきではないはずなんです。
が、それはおきます。
伊藤元重氏はこうも言っています。
三つの論点の中で、どれに優先的に取り組むべきでしょうか。私は「前門の虎」ではないと思います。積み上がった債務の解消は重要な課題ですが、今どんなに力んだところで急速に減らすことはできません。
また、少し専門的になりますが、経済全体のお金の流れからいっても、それを最優先にしなくてもよいと思われます。財政赤字化だという場合、政府部門の赤字を家計・企業という民間部門の貯蓄が、あるいは外国のお金で吸収していることになります。今の日本は経常黒字なので、財政赤字を民間の貯蓄で支えている格好です。つまり国債のほとんどを保有しているのは日本の投資家であり、彼らは好んで国債に投資する傾向を持っているため、国債の金利が低い水準に落ち着いているというのが現実です。近年、日銀が政策的に国債を大量購入していることも、この傾向に拍車をかけています。
逆に、もし日本が経常赤字であれば、民間のお金が海外に流出している、つまり民間の貯蓄も赤字であり、財政赤字が各国のお金で賄われている状態といえます。そうした構図の下では、海外投資家の厳しい選別に遭い、国債の金利は高騰を余儀なくされるだろうと予想されます。そうなると国債発行が困難になってきますから、債務自体を無理にでも減らさなくては立ち行かなくなります。
話を戻すと、今の日本では財政赤字が民間貯蓄で賄われているので、国債金利が急激に上昇する可能性は小さく、人々の生活が不自由になるような債務の大幅圧縮までは考えなくてよいだろうということです。もちろん、後に述べる社会保障改革は債務削減につながるものですが、「とにかく債務を減らさないと日本は大変なことになる」と煽るような発言は冷静さを欠いていますし、現実的な提案になっていません。そういう議論に対しては、ちょっと待ってほしい、といいたいのです。
(上掲書P347~348)
私自身の個人的な見解はさておき、ここまでの話であるなら多くの人にとっても異存はないところだと思うのですけど、いかがでしょうか?
論点は
三つの「出血」に同時に気にしながら、しかも経済を失速させないことが求められ、もし経済を失速させたら税収が減り、事態がますます悪化してしまう
山のように積み上がった債務の解消は重要な課題ですが、今どんなに力んだところで急速に減らすことはできないし、そのために無理をすべきではない
先々の問題は考えなければいけないとしても、現在の我が国では財政赤字が民間貯蓄で賄われているので、国債金利が急激に上昇する可能性は小さく、人々の生活が不自由になるような債務の大幅圧縮までは考えなくてもいいし、それよりも「今、出来ることを優先させ、先にやれることをやる」べきである
ということであると認識しています。