感覚で生きている魔王の生活日誌

感覚で生きている魔王の生活日誌

魔王さんは勇者がいない世界で、社会と会社、そういったモノと迎合しながら生きていく暮らしを選びました。
魔王さんは日々の生活でいろんなことを考えています。
それでもそれなりに魔王っぽく生きようとする魔王さんの生活記録です。

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魔王さんは住んでいないアパートがあります。

二年前、平成24年の出来事です。

すごく、好きな女性がいました。
愛していた、と、思います。
今思えば、愛ではなく違う感情だったとも思います。
けど、当時の魔王さんはとても彼女を慕っていたんです。
一緒になるつもりでいました。
彼女も、そのつもりがあったようでした。
けど、実際、今は魔王さんの隣にはいません。

魔王さんは、彼女との生活を夢見ていました。
一番やりたくなかった、料理人という仕事も、彼女との将来を見据えて、選びました。
魔王さんの祖母...皇后さまが十年ほど下町の小料理屋を経営していまして、
その跡継ぎみたいなものをやる、やらないみたいな話で。
魔王さんは、嫌でした。
飲食店が、嫌でした。
頭が悪そうで、
人間性もよくなくて、
カスみたいな人間がふんぞり返って威張り散らしているような社会にはいきたくありません。

それは、今でも変わってないようです。
どんなに言葉を取り繕っても、違う人間はいると思っていても、
どうしても払拭しきれない。
魔王さんは、魚屋と寿司屋にいたことがあります。
いずれも、半年ともたずにやめました。
反りが合わなかった。
反りが合わない人間に、辱しめられるのも我慢ならなかった。
能力社会だから、仕方ない。
実際、当時の魔王さんはついていけませんでした。 
何故、今やマグロすら軽く卸せるのに当時出来ないのかさっぱりです。
いや、わかってるんです。
単調で飽きるし、
興味ないし、
周りは面白くないし、
休みないし、
朝早いし怒鳴られるし。
なんも良いことない。
興味ないけど、怒られたくないから勉強はする。
けど、腕がついていかないし、頭も回らない。悪循環ですっかり自信なくしてドロップアウト。

それから飲食店をずっと避けてたのに、
今はそれを続けている。
平成24年10月から、
面接に受かってもやりたくなくて、行かなくて、
お酒に逃げて泣いて、
彼女に迷惑をかけ、失望させ、
知り合いの工場で一ヶ月働いて、人間が面白くなくて、辞めて。
お世話になった先輩に声をかけてもらって、今一緒に働いている。
その間に、彼女は別の人と歩んでいくことを決めて、離れていきました。
一番辛いときに、見限られた。
人間的魅力なんか何もないって去っていった。
彼女がいなくなって、
それでも立たないと行けなくて、
同時期くらいに母親も倒れて、
周囲の暖かさに支えられながら立ち上がって、
歩いてこれたと思っていたのに。

『君はなにも変わっていない。相変わらず、ダメ人間だね』

そう、烙印を捺された。
その彼女にも、
昨晩、

『何もない、無能なんだから、生き方なんて選んでなんていられないでしょう』

祖母にも。



平成26年、ようやく吹っ切れたと思って、ナアナアにしていたアパートの契約を切って、次のステージに進もうと思っていたときだった。

そして、アパート解約の書類には
平成24年、12月10日に解約します。と、ペンを走らせている自分がいた。

時が、止まっていた。
その時初めて、あの別れから時間が進んでいなかったのを知った。
仕事の面では、出来ることも増えた。
けど、私生活では、自分の時計は何一つ動いていなかったのだ。

自分の懐中時計が止まっていることに気づかなくても、
電波時計は均等に時刻を合わせる。
肉体は新生し、死に近づく。
ただ、老けただけ。
仕事をしていないときの、
料理人でない時の魔王さんは、
うずくまっていたのだ。 

二年もの間、眼を逸らされ続けた。
 
傷ついたままの、化膿した傷の痛みに耐えているのに、糾弾され、眼を逸らされ、虚ろな目で何も信じられずに。
自分の力だけではどうしようもできない状態で、ずっと放っておかれた。
そんな“彼"を、
助けにいかなければならない。
自分の足で立てるように、
他でもない。
二年経った私が。