純の家から大学までは徒歩10分ほど。登校する途中、純は大きな公園を斜めに突っ切ることにしていた。それはもちろん大学まで行く近道になるからであるが、それだけでなく公園の木々が季節ごとにその姿を少しずつ変える様や、ランニングする老人を見るのが好きだったからである。
公園を抜けるところで、
「純、おはよう。勉強したか?」と声をかけられた。
振り返るとそこには、洒落た花柄のズボンと清潔感のある青いシャツを身に付けた亮(りょう)がいた。
「あぁ、おはよう。勉強はいつも通りだよ。」
やっぱり洒落た服装には身長が必要だよな。と純は思う。
亮は身長181cmあり、バスケで鍛えた体は、引き締まってはいるがしなやかだ。
地味な俺は、できる範囲でやればいい。
人にはそれぞれの場所があるんだ。暑くもなく寒くもない温度があるように。
そして、心地よい場所から離れることは大抵の場合すばらしい結果を生まない。
安全な小屋から抜け出して、凍てつくような雪の降る中歩いて、そうしてマンモスを捕えることができるやつなんてそうそういないだろう。
危険を冒さず、ほどほどに生きる、というのが今後の課題だな。
純は心の奥がギュッと締まる思いがしたが、気にしないようにした。