平凡な夫婦のあらかたがそうであるように、我々の出会いも非常にありきたりなものだった。
社内恋愛。
‥とはまた異なるのだが、まあざっくりカテゴライズしたらそんな感じだ。
「オレは面白くない関西人やねん」
奴は常々そう言っていた。
学生時代を関西で過ごした私は、関西人にも色々なタイプがいるということくらい知っていたから、そんなことはどうでも良かった。
寧ろ「正直な人ね」と好意的な印象を持ったくらいだ。
日常の笑いに関して言えば、少しも笑えない笑い飯で抱腹絶倒するが、私のお気に入りのサンドイッチマンでニコリともしないこと以外は、取り立てて気になるところもなかった。
ただ付き合っているだけのときは。
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結婚とはユーモアで成り立っている。
たかだか14年しか共に生活をしていないが、これだけは断言できる。
人は、ユーモアがないと生きていけないのではないか。
私は、自虐ネタで人が笑ってくれるのを見るのが好きだ。
自分の失敗談ややらかしたことを語り、「冴子らしいわ!」と一笑に付してくれる空間が好きだ。
自慢できることなど一つもないのに、プライドだけはやたらに高い奴とは真逆である。
何も自虐的になって人を笑わせてほしい、などと言っているのではない。
身体張って人を笑わせろと言っているのではない。
「お父さんって、テレビ以外では笑わないよね」
と子供達に言われる父親にはなってくれるな、と言いたいだけである。