どこにでもいるカップルだった。

熱くなったり、少し飽きてみたり、寒いと身を寄せるし、暑いと距離を置く。


そんな風にして一年が経ち、私は苗字を変え、父母が2人ずつになり、妹がもう1人増えた。


更に1年後、家族が増えた。

息子誕生。


「いいパパになりそう」

「子供の扱い上手そうだもんね」

「イクメン確定」

子供嫌いを公言していた私に反して、彼の評価はすこぶる高かった。

子供好き、なんて一言も言っていないのに、ただ雰囲気だけで、周りはそう断言した。


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奴について話そう。

何が好きかと問われれば「睡眠」。ただそれだけ。

怠け癖があるから家では動かない。ただし、家族以外の誰かが近くにいる場合は別。

見てくれとは相反し、DIYなんて一つもしない。ただし、周りからは「めっちゃやってくれそう〜」と、見たこともないのに評価は高い。

いかに他人に良く思われるかばかりを念頭に生きているため、家族を蔑ろにする。

とはいえ、どれだけ擦っても取れない鍋底のコゲのごとく、しっかりこびりついた怠け癖のために、仕事への評価は低い。


本性をしっているのは、603号室に住む我々家族のみ。

603号室では、テレビ以外では笑わない、無口でコミュ障で、スマホにしか目を合わせない、他人より他人な共同生活人である。


一番腹が立つのは、いつものこれ。

自分を卑下する発言をしつつ(但し自虐とは違う)、自分に向けた過大評価を意識する発言も最後にしっかり添えるところ。


例えばこうだ。

子育てに関する(自発的に動かないことへの不満)激しい喧嘩の末、実の両親の前で私が愚痴るとする。すると、

「僕が悪いんです。僕が至らなかったんです。

冴子の言い分も理解してるからこそ協力してるんですが、きっと自分が足りてないんでしょう」

とこういった具合に下手に出る。

すると、生粋の口の悪さと過剰な発言力を併せ持つ私に不利に働くわけで、両親とも

「いやあ、それは冴子が全面的に悪い。

気が強い女でごめんな、信雄くん」

と完全に奴の肩を持つ。

毎回そうだ。

毎回毎回毎回毎回そう。

実の両親にすら味方についてくれない。

いわんや義両親においてをや。