スプートニクの恋人・・・村上春樹とガレージバンド | 洋楽と脳の不思議ワールド

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村上春樹が92年に発表した「国境の南、太陽の西」と99年に発表した「スプートニクの恋人は双子の関係になる。

 

そのことを踏まえたうえで、突然失踪する前者の島本さんと後者のすみれについて私見を述べたい。

 

村上春樹の小説では、失踪する女性は珍しくない。

最初は「羊をめぐる冒険」の耳専門のモデルだった。

主人公の「ボク」を「いるかホテル」に導く役割を果たして消えた。

この時までは「プシュコーポンポス」(Psychopompsー 死の世界に魂を運ぶ神(ヘルメスのこと)の呼び名でユングが使い始めた)の役割が濃厚だ。

「ダンス・ダンス・ダンス」の娼婦「キキ」ははっきりとそのように位置づけられている。

 

しかし上記2作の女性は違う。

「異界」へスリップして消える。

 

「異界」は村上春樹作品のキーワードのようなもので、魂の在処(ありど)としてテーマをなしているが、

この2作では文字通りの「異界」だ。

 

最先端の物理学では、数学的結論として世界は10次元まであるが、4次元から先は、素粒子の大きさでこの3次元世界にくるまっていると考える人が多いそうだ。

 

いや、この3次元世界のほかに4次元以上の世界が存在していると考える人たちもいて、昔、リサ・ランドール先生が著した「ワープする宇宙・・・5次元時空の謎を解く」という本を読んだが、ボクには難しすぎてちんぷんかんぷんだった。

4次元世界(時間を加えると5次元)がたまたま3次元世界に触れたとき、その影が見えることがあって、それが幽霊の正体だ、と言っている人たちもいるようだ。

 

なぜこんな話をするかと云うと、20年前、あんまりバカなので信州から取り寄せた上等な脳みそに詰め替えてもらう手術をしたことがある。

そのとき、上等な脳味噌ってどんな味がするんだろうと思ったのか、担当医が味見をしたので、その分脳みそが足りなくなった。

だからやっぱりバカのままだ。

 

退院後のことだが、世界がこれまでとは違って見えることに気づいた。

世界と自分が一致していないと感じたのだ。

喩えて云うなら、ガラス一枚を隔ててこっち側とあっち側に仕切られているような感覚に陥ったのだ。

3次元世界の中で、皮膚一枚を隔てたボクは4次元世界に存在しているような感覚だった。

 

採りあげた2作品の2人の女性は同じように別の次元にワープしたのかもしれない、と思うのだ。

 

 

「スプートニクの恋人」の冒頭は、村上春樹の文章としては異色だろう。

「白髪三千丈」式の大陸的比喩の連発で驚かせる。

その冒頭部分を抽(ぬ)き出すので楽しんでくれ。

 

「22歳の春にスミレは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることなく、大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼き尽くし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手は・・・・・、女性だった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Trash Box の Disc2 は文字通りのベスト盤で、ガレージバンドの名曲がめじろおしだ。

もう何度採りあげたか分からないが、Choir の It's Cold Outside。

66年クリーブランドのバンドだけどNYのローカルレーベルから発売され、翌67年大手の Roulette が再発したので全米ヒットになった。

ビルボードのチャートに入ったせいだろうが、驚いたことにリアルタイムで邦盤が発売されている。

邦題は「冷たい初恋」。

日本の洋楽輸入事情は奥が深いので驚くことが多い。

解散後、エリック・カルメンのラズベリーズにメンバーの3人が加わったことでも知られている。

一応貼っておくけど、ボクのブログの常連さんならさすがに聞き飽きたよという人がいるかもしれないので、適当に。

 

 

 

 

Brogues の I ain't no miracle worker も常連さんにはお馴染みのはず。

カリフォルニアのバンドで、64年~65年の短い活動期間中、2枚目となる最後のシングルがガレージクラシックとしてマニアの間では有名だ。

ボクがブログを始めた2007年当時まで、こうしたバンドを採りあげる日本語メディアはなかったので(相変わらずメジャー一辺倒だった)、それならボクが~という意気込みで始めたのだが、ここ10数年で音楽マスコミの状況も随分変わったようなので、拍子抜けしている。

82年にこの世界のマニアになって以来、情報や音源を求めて東奔西走した苦労はなんだったのだと、哀しくなるのだ。

 

 

 

 

前2者ほどは知られてないが、Randy Alvey & The Green Fuzz の Green Fuzz はテキサスのバンドで、これぞガレージ・パンク、と思っている。

テキサスはUSの中でも保守的な土地柄として有名だが、60年代半ばから後半にかけて、10代の少年たちに当時最も先端的なブリティッシュ・ロック(ビート・ミュージック)の信奉者が多かったは面白い現象だと思う。

ちなみに 13th Floor Elevators もテキサスです。