殺し屋稼業(その2)・・・日野皓正/ジミヘン | 洋楽と脳の不思議ワールド

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殺し屋ってのは派手に見えるが、実際は地味な職業だ。

獲物を確実に仕留めるには目立っちゃいけないからだ。

 

ロックならジミヘンを聴かなくちゃいけないし、レゲエならジミー・クリフと決まっている。

あの日、俺が迂闊にも女をマンションまで送り届けたのは、店でア~♪ ハ~♪ (a-ha) が流れていたからだ。

あんなクソみたいなバンドのクソみたいな曲のせいで俺の頭がいかれちまったのだ。

 

 

 
 
一般国民は知らないかもしれないが、殺し屋になるには「殺しの免許証」が必要だ。
運転免許証とは違い、とても難しい国家試験だ。
偏差値90以上なので、合格率は受験者の1%未満だと言われている。
昔と違い、すべてが国家の管理下に置かれた現代社会では、この「殺しの免許証」なしに殺(や)ったらたちまち犯罪者になる。
俺が今日まで安全に暮らしてこれたのは、免許所持者だからだ。
 
 
 
前回の失敗に懲りたので、今夜はジミヘンの「ヘイ・ジョー」を聴きながら飲める店へと足を運んでいた。
 
Hey Joe,where you goin' with that gun of your hand?
 
 
頭の中にメロディがが浮かんでくる。
いいねえ~こうでなくっちゃ。
 
 
と、
 
お願い~助けて~
 
前回と同じシチュエーションで若い女が俺の腕に飛び込んでくる。
この間は若い姉ちゃんと逃げたのが失敗の元だったので、チンピラを叩きのめしてさっさとおさらばしようと決断した。
ところがだ。
目の前に立っていたのはチンピラなんかじゃねえ。
あの伝説の殺し屋「エースのジョー」じゃありませんか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
とてもじゃないが俺なんかがかなう相手じゃねえ。
なにしろ「抜き打ちの竜」とハジキ日本一を争った早撃ちだし、そのころは「コルトのジョー」と名乗っていたが、流し目をくれただけで女が一発で胸を打ち抜かれるというので、「女殺し」の異名まで手に入れて「エースのジョー」となったこの業界のスーパースターだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
おいサンピン。女を渡しな。
 
ジョーにそう言われたので、
「へいへい~どうぞお持ち帰りください」と丁寧に応対した。
 
その時だ。
女が突然豹変して片肌脱いだのだ。
よごんすか、と。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺よりも慌てたのはエースのジョーだ。
「あっ、緋牡丹のお竜さんじゃござんせんか。これはとんだ失礼をいたしました。どうぞよしなに」
と、ぺこぺこ頭を下げる。
 
「ほな、お先に~」
 
悠々と去っていく女を見て、ポカンとした俺はジョーの兄貴に尋ねた。
「今の御婦人(おひと)はどなたさんですか? 俺にゃあ寺島しのぶのお母さんにしか見えませんでしたが・・・」
 
馬鹿野郎~!
それでもてめえは業界人の端くれか~この映画を観て勉強してこい。
 
そう言ってエースのジョーがくれたのは「緋牡丹博徒 お命戴きます」の映画切符だった。
昭和46年公開、とあるけどまだ使えるのかなあ??
 
 
 
 
 
 
東宝映画にハードボイルドのイメージはない。
が、西村潔監督のハードボイルド映画「白昼の襲撃」は大好きだった。
USに移住する直前の日野皓正が音楽を演っていて、実にかっこよかったからだ。
シングル発売されたので速攻で買った。
もう持っていないけど。
 
 
 
 
 
あんまり気に入ったのでアルバムも買い、ライヴにも行った。
体を揺らしながらエビぞりになって演奏する姿にすっかり憬れたが、長いこと忘れていた。