守りたい人を守る。白川道「海は涸(かわ)いていた」・・・The Odds & Ends | 洋楽と脳の不思議ワールド

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ボクはとても忙しい。

昼間は野球を観なければいけないからだ。

合間に庭掃除をしなければならない。

 

今年のワールドシリーズはロサンゼルス・ドジャースとヒューストン・アストロズの戦いだと思っていたら、伏兵が現れた。

なんとアメリカンリーグの決勝戦はサンディエゴ・パドレスとフィラデルフィア・フィリーズの争いになったのだ。

パドレスには昔大好きだったダルビッシュ有がいる。

フィリーズには大谷君と仲の良かったマーシュが夏にトレードされて在籍している。

どっちを応援したらいいんだろう??

悩む。

悩んで悩んで男は大きくなるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白川道(とおる)という作家は「流星たちの宴」で登場したときからファンだった。

株の世界に飛び込んで、バブル期に栄光と挫折を味わった体験小説だ。

たしかな筆力と構成力に、多くの人が虜になった。

そこに、はちゃめちゃな人物像(本人の)が加わるのだから、抗しがたい魅力を放っていた。

 

彼の小説は全部読んだつもりでいたが、見慣れない文庫本が出てきた。

多分、買ってそのまま忘れていたみたいだ。

夜、500ページを超す本を2日かけて読んだが、頭の隅にひっかかる箇所がどこにもない。

 

子供の頃の異常な記憶力は年とともに失われて行ったので不思議はないが、それでも、一度読んだ本なら記憶の断片がどこかにわずかながら残っている。

そのかすかなひっかりがないのだ。

 

「天国への階段」もそうだが、この作家は純愛が好きだ。

主人公はたいてい中年男性だが、若い時に情熱を傾けて好きになった女性を忘れることが出来ない。

余儀なく別れざるを得なかった事情が未練を引きずっているのかもしれない。

何十年も経っているというのに女性も彼を待ち続けている。

 

「海は涸(かわ)いていた」もそうで、純愛に弱いボクはついほろりとしてしまうのだ。

そしてたいていの主人公のように彼も過去に罪を犯している。

ある意味では正当防衛のような犯罪なので、彼に罪の意識はない。

それどころか、読者は、こんな腐った人間に天誅を下すのは当然だとさえ思えてくる。

 

彼が犯行に使った銃が、20年も経ってから再び使われ、迷宮入り事件とのかかわりに捜査を絞る刑事が現れる。

使ったのは彼ではなくて、彼が弟のように可愛がっていた人物。

殺されたのはやはり人間のくず。

 

その屑が主人公の秘密を握り、命を賭しても守りたいと思っている異父妹を不幸にしようとしているのを知ったせいだ。

刑事の執念は核心に近づき、2つの事件の全貌を知ることとなる。

 

主人公を犯罪者として挙げるのは、間違っているのではないか~と義憤に駆られるところだが、作者は用意周到な逃げ道を用意している。

「被疑者死亡」となれば、事件は幕引きされて終わり。

異父妹や施設で育った弟妹のような2人の人物にもスキャンダルの嵐が襲い掛かることはない。

主人公は銃が再び使われたと知った後、いろいろ考えた末に守りたい人を守るにはこうするしかない、と結論にたどり着くのだが、真相を知った刑事の方も、同じ結論にたどり着kき、自分は待っていると主人公に伝える。

刑事の立場としては、犯罪そのものを封印できないからだ。

 

殺された2人の人間は屑の悪人だが、犯罪を犯した主人公もそのまわりの人間たちも、事件の真相を暴く刑事も、「善人」として扱われているので、読後に不快なものは何も残らない。

残るのは柄にもなく涙の跡だけだ。

 

白川道の小説が好きな理由でもある。

 

 

 

 

 

 

2度目になるがこの曲を。