海野十三「深夜の市長」桃源社版・・・The Artwoods | 洋楽と脳の不思議ワールド

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探偵小説家であり日本SF界の先駆者とも言われる海野十三を復活させたのも桃源社だった。

ボクが買ったのは最初の1巻だけで、続編の「火星兵団」は買いそびれてしまった。

桃源社は後に(多分70年代後半)もう3冊出しているようだが。

(この2冊に+1冊を加えた3冊かもしれないが??)・・・この時代、70年代後半にはボクの興味は桃源社からそれてしまったので、確認できない。



幸いなことに88年から93年にかけて三一書房が全13巻、別巻2冊の計15冊の全集本を出してくれたので、この全集で手に入りやすいはずなんだけど、まだ手に入れてない。

もっともボクはこの全集は1冊だけしか持っていないが。


三一書房は、例の夢野久作や久生十蘭の全集本を70年代初めに出版してくれたので、少しばかり思い入れがあるのだけど。




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先に探偵小説と書いたけれど、怪奇幻想風味の濃い作品群で、謎解きに興味のある読者には退屈なだけだろう。




「深夜の市長」は初の長編小説で、昭和11年の発表。

舞台設定は昭和初期だと思えばいい。

だからモガ(モダンガール)が点景に登場してくる。

人々が寝静まった深夜のT市(帝都だろうね)を支配する怪人物が登場する。

勤め人としての昼の顔と、新人探偵小説家としての夜の顔を持つ主人公が、深夜の散歩中に殺人事件に巻き込まれ、深夜の市長とその仲間たちによって窮地を脱する物語だ。

深夜の市長は昼間は不在だが、夜になると都心の穴倉に姿を現す。

そして、夜に働く人々からは絶大な信頼を得ているのだ。


東雅夫氏は「深夜の市長」について、「都会の夜の世界を賛美しながら、それが次第に崩壊に向かう姿をはからずも描き出している」と評している。

発表年の昭和11年と言えば、2・26事件のあった年で、日本が軍国主義に向かう色彩の濃くなった年。

国粋主義が強まると、こうした幻想怪奇文学は個人的趣味(個人主義)として排斥される運命にあるので、少なくとも、このころまでは検閲に引っかからなかったんだな~と認識できる。



検閲にひっかからなかったな~と言えば、次の文章。

男が女に抱く嗜好を写し取った妖しくも耽美な心理だ。


「そのとき、彼女の毛皮の外套の合わせ目のところから、プーンと香りのいい化粧の匂いが流れてきた。僕は思わずその襟の合わせ目を覗き込んだが、温かそうな毛皮の奥に、クリームのような真っ白な肌がすこしばかり見えて、その下に緑色のドレスがふっくらした襞続目(ひだめ)をつくって、下に悩ましい曲線を隠していることを囁いていた。」


















音楽は問答用で Artwoods の Big City だな。