異端の文学、アンリ・ド・レニエ「生きている過去」・・・Gary Scruggs | 洋楽と脳の不思議ワールド

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函。

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カバー。

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奥付。

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巻末広告。

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「異端の文学」とか「異端の美術」とか、「異端」と言う言葉そのものが今では陳腐だと思うが、初めて澁澤龍彦氏を知った高校時代、なんとも言えず、蠱惑(こわく)的でエロティックで秘密の香りがしたものだ。

桃源社刊行の「世界異端の文学」はその澁澤先生が企画した。

昭和41年と言うから、ボクが中学に入った頃の刊行だ。

リアルタイムでは当然知る由もなく、後に(学生時代)古本屋で手に入れた。

シェーアバルトの「小遊星物語」も読みたかったが手に入れそびれたのでまだ読んでない。

読んだ人がいたら、読むべき必読書かどうか、教えてくれ。

今ならネットで探せば簡単に見つかるからだ。


マラルメの火曜会の常連でもあったアンリ・ド・レニエは、詩人としてだけでなく、小説家としても戦前の日本では有名だったらしい。

小説「過去に生きる」は永井荷風が激賞したことで知られていたという。

早くも大正15年に鈴木斐子という人の翻訳で紹介されたそうだが、日本では長く忘れられていた。

「世界異端の文学」を編むに際して、澁澤先生はこの本を取り上げ、窪田般弥先生が翻訳を手がけた。

窪田先生は後に「カザノヴァ回想録」を翻訳するので、カザノヴィスムに生きる主要な人物が登場してくる書の翻訳に白羽の矢が立ったのだと推察する。


前置きが長くなったが、今回再読したので物語を簡単に紹介すると、時代は19世紀末から20世紀初め。

大革命以前の古く美しい館を所有する没落貴族の若者と、平民出ながらカザノヴィストで18世紀にしか興味のない友人、同じくカザノヴィストながら、魂を奪われてしまったために1人の女性だけを25年もの間愛し続けるイタリア人貴族が主要な3人だ。

3人が3人とも自分たちの生きている時代を毛嫌いし、150年前の過去を夢見ながら生きている。

主人公の従兄弟は、貴族ながら、平民同様実業界に打って出て着々と成功しつつある。

その従兄弟が、主人公のかつての領地の隣に住んでいた、現在は没落した貴族の娘と結婚する。


主人公と友人は、カザノヴァの足跡を辿りながらイタリア旅行をする。

このとき、主人公と全く同じ名前の4代前のご先祖様の墓を発見する(この地で戦死した)。

フランスへ戻って来、友人は従兄弟の嫁さんになった家から出てきた古机を手に入れる。

引き出しを開けると、従兄弟の嫁さんと同じ名前の3代前の祖母と主人公と同じ名前の4代前のご先祖様同士の熱烈な恋文を発見する。

今は2人とも家庭があるので身をまかせるわけには行かないが、戦地から帰ってきたら、すべてをあなたに捧げますという告白だった。

もちろん18世紀の2人は、彼が戦死したので結ばれないままに終わったが、主人公は、自分が今生きているのは、天国にいる過去の2人の恋を成就させるためだと信じて疑わなくなる。

そして悲劇が訪れるのだけど、ここは書かないほうがいいだろう。

現在、岩波文庫で読めるそうなので興を殺(そ)いだらつまらないからだ。

付け足しておくと、1人の女に束縛されるのをあれほど恐怖していた友人はカザノヴィスムを捨てて結婚を決意し、25年間、愛人関係のままで1人の女性に縛られていたイタリア人貴族は彼女と正式な婚姻を決意して様々な事務処理のためにローマを訪れた際、カザノヴィスムを発揮するというオチがついている。

皮肉でもあるし、滑稽でもあるし、人間の本質をついてもいて、ニヤリとさせられる。

澁澤さんがピックアップした作品だけに、澁澤さん経由で知った色んな人物が登場するのも楽しい。

なんとピラネージの墓地まで登場するのだ。

建築家で画家でもあるピラネージも「異端」を漁った人なら、奇怪な銅版画「牢獄シリーズ」に一度は鷲づかみされたことがあるはずだ。










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「ジャン(主人公)は死を少しも恐れていなかった。われわれは自分自身のなかに生きて、やがて次々と死んでいくわけだけれども、その前に、祖先の一人ひとりのなかで、すでに何回となく死んできたのではないか? われわれは、現にこうして生きている以上に、もっと生きるのではないだろうか?」


「自分の独立を守り、自由を保障するために古い世紀のなかに閉じこもり、過去の中に生きたロオブロー(友人の名)の生活は、いま終わりを告げたのだ。これからの彼は、成功と金を追い求めて・・・」

















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おフランスの話なのにアメリカの音楽で申し訳ない。

ブルーグラスの世界に Earl Scruggs という大スターがいるそうだが、息子たちもブルーグラスやカントリーの世界の有名人なんだそうだ。

長兄の Gary が67年にリリースした Gentle when you say the word はブルーグラスともカントリーとも関係ない。

どっからどう聴いてもロックでサイケでしょう。


















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