織田作之助「蛍」・・・Swamp Rats と Arondies | 洋楽と脳の不思議ワールド

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織田作之助に「蛍」という小品がある。

幕末史に名を残す「寺田屋」のご寮はん「登勢(とせ)」を描いた作品だ。

寺田屋といえば、島津久光が兵を率いて上洛したとき、過激派が武力討伐だと騒いだのに久光のほうは公武合体論者で、寺田屋に集合していた80人あまりの薩摩の過激派(他藩士を含む)を、同じ薩摩藩士に討ち取らせた事件が有名だ。

このとき過激派の薩摩藩士有馬新七が「おいごと刺せ~」と叫んだのは誰もが書いているのでその通りなんだろう。すさまじい話だ。

 

普通の作家ならこの事件や4年後の坂本竜馬襲撃事件を描くところだが、織田作はそんなことはしない。

 

寺田屋は伏見の船宿。

この時代、往還に当たっていたので繁盛していた。

時代がきな臭くなり、寺田屋事件が起きたとき、必死で逃げたが、その背中に「おいごと刺せ~」という悲痛な声が追いかけてきた~と書くのみだ。

 

お良(龍)という養女をもらって大切に育てる。

薩摩藩から頼まれて坂本竜馬という人物を預かると、年頃になったお良がいそいそと坂本の世話をする。

奉行所が踏み込んだとき(慶応2年の事件)、風呂につかっていたお良は素っ裸のまま坂本の部屋に急を知らせる。

それを見たお登勢は、「あんたはんもしこの娘を不仕合わせにおしやしたらあてが怖おっせと、ついぞない強い眼でじっと坂本を見つめた。」

庶民のまなざしで描く幕末史なんて、織田作以外には書けまい。

 

「けれどもお良と坂本を乗せた30石の夜船が京橋を離れて、とまの灯が蘆(あし)の落かげを縫うて下るのを見送った時の登勢は、灯が見えなくなると、ふと視線を落として、暗がりの中をしずかに流れて行く水にはや速い諦めをうつした。果して翌る年の暮近いある夜、登勢は坂本遭難の噂を聞いた。(中略)登勢は淀の水車のようにくりかえす自分の不幸を噛みしめた。

 ところが、翌る日には・・・登勢の声は命ある限りの蛍火のように精一杯の明るさにまるで燃えていた。」(昭和19年10月発表)

 

敗戦後の復興を信じた文章だなあ~と後追い読者のボクなんかつい深読みしてしまう。

好きな小品だ。

ボクが読んだ収録されている「旺文社文庫」(78年刊)、懐かしい人には懐かしい文庫だ。

 

 

 

 

 

昨日 Fantastic DeeーJays と Terry Lee を採り上げたので続きをやろう。

Fantastic DeeーJays は66年6月26日ストーンズ公演のオープニングアクトを努めた後、ギタリストが徴兵されたので解散したが、すぐにベースとテリーが他のメンバーを集めて Swamp Rats というバンドを作る。

爽やかな Fantastic Dee-Jays とは正反対のプロトパンクバンドだ。

ソニックスのカバー Psycho が最高傑作といわれているので聴いて見ましょう。

映像が悪趣味だが音がいいのでこちらを。

https://youtu.be/OZ2zfDRoRB8

 

 

このテリー・リーという人物、他のバンドにも興味を示していて、それが Arondies 。

同じペンシルヴェニアといってもピッツバーグからはちょっと離れたクレイトンのバンドだが、結局ピッツバーグで働くことになった。

1枚目のA面はインスト。

B面はドゥーワップ風のキャッチーな曲。

好みが分かれるところなので2曲ともいきましょう。

 

’69

https://youtu.be/ea9zAdMdUWw

 

All My Love

https://youtu.be/QrWG-SGRXXk

 

 

 

 

 

 

カボチャの花が咲いたけど雄花ばかり。

今年はカボチャの収穫は無し。