私: 失礼致します。●●室●●番です。

主査: お座りください。

私: よろしくお願いいたします。

主査: それではこれから事案を説明しますので聞いてください。Aは、妻であるBに死にたいと頼まれ、毒薬を渡しました。Bはそれを飲んで死亡しました。この場合、Bに犯罪は成立しますか?

私: 成立しません。

主査: その理由はどうなりますか?

私: はい、生命は自らに処分が許されると解します。それにそもそも刑法に自殺は罪と規定されていません。

主査: 構成要件に該当しないと考えますか?違法性を阻却すると考えますか?

私: はい、殺人罪の構成要件である「人を殺した」の「人」には本人は含まれないので構成要件に該当しないと思います

主査:  この場合違法性が阻却されると考えるべきでしょうね

私: はい、正直今まで考えたことがありませんでしたが、お話をうかがって違法性を阻却すると考えます。

主査: ではAには犯罪は成立しますか?

私: はい、自殺関与罪・・・自殺幇助罪が成立します

主査:  自殺が犯罪とならないのに自殺関与が犯罪となるのはどうしてでしょうか?

私: はい、他人の生命という保護法益が侵害されるに及んで、それを幇助することは犯罪として罰するべきだと考えます

主査: では、事案が進んで、Bの娘である3歳のCが「お母さんが死ぬなら私も一緒に死にたい」とAに言いました。そこでAはCにも毒を渡しました(首をしめただったかも?)この場合犯罪は成立しますか?

私:  はい、殺人罪が成立すると思います

主査: それはどうしてでしょう?

私: はい、確かにCは自殺することを希望しているようにも思えますが、Cは3歳ですので未だ事理弁識能力が欠如していると考えられます。そのような者の自殺の希望は瑕疵ある意思にすぎず、瑕疵ある意思に基づいて自殺を幇助することは殺人と同視できるからです。

主査: はい、では事案は変わりまして、Aは、恋人であるBが邪魔になり、追死を装い自殺を承諾させ、毒を渡しました。BはAが追死してくれるものと信じて毒を飲んで死亡しました。この場合、Aに犯罪は成立しますか?

私: はい、殺人罪となります

主査: その理由は?

私: はい、Aの心中の提案は偽装であり、それに基づくBの自殺の意思決定は瑕疵あるものと評価できます。そのような瑕疵ある意思を利用してAはBを死亡させたのですから殺人罪となります

主査:  何か判例はありましたか?

私: はい、あったと思います

主査: 何と言っているか知っていますか?

私: はい・・・同様のことをおっしゃっていたと考えます

主査: 判例は・・・(判旨を少し読んでくれる)と言っていますね

私: はい

主査: では事案は変わります。医者であるAは、患者であるBに、あと数か月の命である末期の病気であると虚偽の告知をし、さらに今後は激しい痛みが伴うだろうと告げました。そして絶望したBに毒を渡し、Bはそれを飲んで死亡しました。Aに犯罪は成立しますか?

私: はい・・・殺人罪が成立します

主査: それはどうしてでしょうか?

私: はい、Aの言葉は医者という立場からBにとって高度の信用性があったと考えられます。そのようなAの告知によってBは残り数か月での死亡を覚悟し、更に激痛を伴うということから生きることに絶望し、その上で自殺を決意したのですが、そのような意思決定は瑕疵ある意思と評価できます。そしてその瑕疵を利用してAはBを死亡に至らせたのですから殺人罪と評価できます

主査: はい、では刑事訴訟法の質問に移ります。まったく別の事例だと考えて下さい。公判手続ではまず冒頭手続としてまず人定質問が行われ次に起訴状が朗読されますね。

私: はい。

主査: では起訴状の全部を朗読する必要はありますか?

私: 全部は必要ありません

主査:  何を朗読すればよいでしょうか?

私: はい、罪名と公訴事実と考えます。

主査:  それと罰条ですね。

私: はい、罰条です。

主査: では訴因という概念があると思いますが、訴因の目的は何でしょうか?

私: はい、裁判所の審判対象の画定が目的となります

主査: それだけですか?

私: もう一つ、被告人の防御の範囲を明確にすることです

主査: はい、では起訴状をなぜ朗読する必要があるのでしょうか?

私: ・・・はい、訴訟当事者には明らかであっても、裁判は憲法で公開されることが原則ですので傍聴人などの他の者に知らせる必要があるからです。

主査: はい、口頭主義と公開主義ということですね。

私: はい。

主査: 被害者特定事項というのはご存じですか?

私: はい。

主査: 条文はありますか?

私: はい。

主査: 何条かわかりますか?

私: はい・・・291条か292条の枝番だったかと・・・(ここで微動だにしなかった副査が紙に○を付けたのが見える。やった!)

主査: 290条の2ですね。後で確認しておいてください

私: はい。(どんぴしゃではなかったが、ほぼほぼ当たったといえ、かなり印象良かった模様)

主査: では被害者特定事項の制度を利用するためにはどのような手続が行われますか?

私: はい・・・検察官に申立て、検察官から裁判所に申し立てるのだと思います・・・

主査: 被害者特定事項の制度では起訴状朗読ではどのようなことが行われるかわかりますか?

私:  はい・・・実際は見たことがなく知らないのですが、おそらく起訴状上の被害者特定事項を伏字か仮名にするのでしょうか。

主査: 被告人は被害者特定事項を知らなくてもよいでしょうか?

私:  いえ、被告人に知らされないのは許されないと思います。

主査: ではこの場合どのように知らされるでしょうか?

私:  はい・・・弁護人などを経由して後程知らされることになるのでしょうか。

主査: 起訴状を示すのですよね

私:  あっ、わかりました

主査: その後黙秘権の告知が行われますが、黙秘権ではどの程度の範囲まで黙秘することが許されますか?

私:  あらゆることを黙秘することが許されると考えます。

主査:   条文はわかりますか?

私:  ・・・290条台だったかと・・・

主査:   では六法みてみましょうかね。

私:  はい、ありがとうございます(290条台を見るがみつからない・・・)

主査:  もう少し後ろですね・・・

私:  (なかなか見つからない)

主査:  311条ですね。後で確認しておいてください。では、証人には証言を拒否することが許される場合があると思いますが、その範囲は黙秘権と同じと考えられますか?

私:  はい・・・証人には正当な理由があるときのみ証言拒絶権が与えられると思いますので、黙秘権とは異なります。

主査: はい、証言拒絶というか証言拒否権と黙秘権では範囲が異なりますね。ではその違いはどこからくるのでしょうか?

私:  はい・・・えーそうですね・・・

主査:  制度趣旨などから考えられませんかね?

私:  はい、被告人の黙秘権は憲法上の保障として与えられていますのであらゆる事項を黙秘することができますが、証人にはそのような憲法上の保障は与えられておりません。

主査:  証人は原則的に国民の義務として証言が義務づけられており、正当な理由があるときのみ例外的に拒否ができるということができますかね。

私:  はい

主査:  では終わります。お疲れ様でした。

私: ありがとうございました。失礼します。

 

(以上 ぴったり20分)