『毒と命と愛と』
命は有限。
時間も有限。
自分の限られた時間を、
誰かのために使うとは、
自分の命をその人に与えること。
夫婦や家族が支え合う。
夫婦や家族が愛し合う。
それは、お互いが命を与え合うこと。
私にもそういう存在があるんだと、
ずっと信じていたけど、
それら全てが、まがいものだと知った。
彼らは自分たちの思い通りになるよう、
私に毒入りの命を与え続けた。
私の命を麻痺させて、
それが愛だと信じ込ませた。
毒は私を激しく苦しめ、
私は愛を見失った。
そこから逃れようとすると、
今度は搾取する者たちが現れた。
彼らは善の仮面をまとって近づき、
私はこれが愛なのだと、受け入れた。
しかし、彼らから注がれる命は、
どこまでも自己の利益のためでしかなかった。
彼らは私の前で、その仮面を外し、
正体をあらわにした。
私を鞭打ち、私を遠ざけ、
存在を否定した。
そして世界に向かい、声高に叫んだ。
見よ、我は愛を注ぐ者なり。
世界はその声を聞き、その声に味方して、
私に感謝することを求めた。
彼らは世界に向けて仮面を身に付け、
人々を欺き、真実は隠され続けた。
毒は私を侵し、命は濁り、異臭を放った。
愛はどこにあるのか。
命はどこにあるのか。
彼女は飛び込んだ。
私を助けるために、自らの命を投げ出した。
彼女の愛は嵐となって私を襲い、
周囲をも巻き込んだ。
突風は仮面を打ち砕き、
脅かす者たち、毒を盛る者たちを巻き上げ、
連れ去っていった。
彼らが消え去ると、
世界は突然、まるで違うものになった。
私を覆い尽くしていた影は消え去り、
陽の光が私を世界へと導いた。
そして世界は私を見い出し、
私は世界を知った。
そこには水源が広がり、
無条件に私の中へと流れ込んだ。
優しく、温かく、柔らかく、心地良く。
濁った命は押し流され、
新しい命が満たされていった。
彼女は言った。
これが本当の愛なのだと。
世界を知る彼女は、
私を世界へ導くため、嵐を呼んだ。
そして私は愛を知った。
互いに命を注ぎ合う愛を知った。
命は私の中で強く脈打ち、
私の心を、空へと押し上げる。
私は高く、天高く押し上げられ、
遮るものがなくなった光は、
私を包み込んで離さない。