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ナタリー

「忍びの国」
大野智×石原さとみインタビュー


映画ナタリーは本作の公開を記念し、凄腕だが女房の尻に敷かれっぱなしの忍び・無門を演じた大野と、無門に厳しい視線を向ける妻・お国を演じた石原の2人にインタビュー。無理なく芝居に入り込めたという2人が、夫婦役を通して互いに抱いた思いを明かす。


──撮影は2016年の夏だと伺いましたが、お二人がそろうのは久々ですか?

大野智 あれ……あれだよね、歌番組。ドラマ(「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」)でゲスト出演していたときの。

石原さとみ え、それが最後でしたっけ? 映画の打ち上げもありませんでした?

大野 いや、それは歌番組より前だよ。確か。

石原 そうでしたか! ひさびさですね。いつもテレビでお見かけするから身近な存在に感じてました(笑)。

──思ったよりひさびさだったということで。役者としては今回が初共演だったお二人ですが、一緒にお芝居されていかがでしたか?

大野 バラエティ番組では何回か共演していたので、自然とできました。なんの違和感もなく、お互いスーッと役に入りましたね。

石原 大野さんはいつも自然体でいてくださるので、こちらも気負わずにいられました。一番初めの読み合わせのとき、私すごく緊張していたんです。でも大野さんがセリフを発した瞬間、無門だ!と思って。そうそう、これこれ!みたいな。ついに始まったんだなと実感したのを覚えています。

──大野さん演じる無門は妻のお国に頭が上がらないというキャラクターでした。

大野 (石原演じる)お国が無門をすごく叱るんですけど、芝居というよりリアルな感じでしたね。

石原 どういう意味ですか?(笑)

大野 リアルにグサッと来るんですよ。

石原 ああ、そっちですね!

大野 うん、怒られて家に入れてもらえないのとかさ。あと「侍になりなさい」って言うお国に、「いやだ、このままがいい」って返したときのあの目付き。(おびえるように)あーっ!となりました。芝居なのに、夫婦間のリアルさが常にありましたね。

石原 私も無門に対して、本当にこの人は……!という思いは常々ありました。「いやあ、のんびり暮らせたら」なんて言うから、えっ何を言っているの!?となったり(笑)。だから気持ちは入りやすかったです。もちろん、イラッとしたのは役柄に対してですよ(笑)。大野さんは演じるのに無理したところはありました?

大野 ないよ。(中村義洋)監督から「そのままやってくれ」と言われてたから。「真剣な顔はそんなに必要ない。へらへら笑っていてほしい」と。僕の場合、読み合わせで普通にセリフを発したとき、さとみちゃんが「無門だ!」と思ったっていう感覚がよくわからないかな(笑)。だから変に作ったりせず、そのままの自分でいました。僕に近いっちゃ近いですからね、無門は。基本何もしたくないという意味で(笑)。

──普段は怠け者の無門ですが、伊賀一の忍びという設定もあります。メリハリは意識しましたか?

大野 そんなにないです。真剣なアクションシーンもありますが、基本はのうのうと。無門は戦うのも面倒に思うほど何もしたくないけど、心の中に秘めているものがある。でもその感じはあまり表に出さない。監督と話していく中で、そういう無門像が自然とできた気がします。

──そんな「何もしたくない」無門が、お国に惚れて連れ帰ってきてしまいました。いったいどこに惹かれたのでしょう。

大野 単純に一目惚れじゃないですかね。美しさに完全にやられたんでしょう。術にもかからないし、これはもう土下座して、お願いします!と言うしかないなと。

石原 お国って武士の娘なので意思が強いし、おそらく計画的でもあるんです。ストーリー上は「無門にさらわれた」とありますが、私はお国が連れ去られるような人間ではないと思う。きっとこれまで土下座してすがってくるような人間に出会ったことがないですよね。そんな中で無門を見て、この人と一緒にいたらどうなるんだろう?という不安やワクワクがあったんじゃないでしょうか。

大野 確かに、それはあるかも。

石原 あとは母性な気がしますね。ほっとけないとか、しっかり手綱を握っておかなきゃみたいな気持ちは理解できました。お国を演じて、無門みたいにずっと追いかけてきたり、土下座するくらいの愛には母性が働くんだなと発見しました(笑)。

──無門にピシャリとぶつけるセリフは爽快さもありました?

石原 そうですね、同じ状況だったら私も言うだろうなと(笑)。台本読みながらワクワクしていたんですよ。どんなふうに言おうかなって。

──中村組の現場についてもお聞かせください。大野さんは主演作「映画 怪物くん」に続いて2回目の中村組になりました。

大野 6年ぶりですかね。基本は何も変わってなかったかな、監督の空気感も。いつも現場で、コント? 小芝居?みたいなことをされてるんですよね。

石原 小芝居って?

大野 監督がカメラマンさんたちと、急にコントみたいなことを始めるんだよ。なんて言えばいいんだろう。真面目に「ここはこうして」とか指示を出しているんだけど、そのまま監督がぐっと入り込んじゃうみたいな(笑)。それで周りのスタッフさんたちも乗っかり出して。とにかく監督が終始楽しみながらやっているのが伝わってくるんですよ。

──そういうとき、大野さんはどうされているんですか?

大野 眺めていました。(ニコニコしながら)あ、楽しそうだなー。よかったよかったって(笑)。

──石原さんは中村監督と初めて組んでみていかがでしたか?

石原 すごく的確に指示してくださるので、本当にわかりやすかったです。

──例えばどのような演出を?

石原 最初のほうのシーンで、お国が無門に「あなたこう言ったじゃない!」ってセリフをぶつけるシーンがあるんです。私はずっと無門を見たまま、追い詰めるように演じていたんですよ。そうしたら監督に「(目線を)外してみようか」と言われて。その通りにやってみたら、ちょっと柔らかさが出たんです。お国はただ気が強いだけじゃなくて、まったくもう!的な部分もある女性なんだって、そのときわかった気がして。

──たった一言でキャラクターに広がりを出せるのはすごいですね。

石原 「もっと柔らかくして」って言うだけの監督もいると思うんです。でも中村監督は、どうしたら柔らかく見えるかを具体的に表現して、気付かせてくれる。優しいですよね。そういう場面の積み重ねでした。

──中村監督の作品なだけあって、合戦シーンも小気味よさを感じさせる仕上がりになっていました。大野さんは立ち回りも多かったですがいかがでしたか?

大野 舞台では殺陣の経験があったのですが、今回もやっぱり難しかったです。相手と呼吸を合わせないといけないので、家で1人で練習というわけにもいかないですし。でもちょっと懐かしい感じもありましたね。舞台のときもこんな感じだったなと。

──無門は動きが多彩で面白かったです。

大野 ひょうひょうと相手をかわす動きは、楽ではないですが体に力が入っていないのでやりやすかったです。(鈴木亮平演じる)平兵衛との一騎打ちは、撮影中ずっと緊張感が続いていました。一手間違えると当たっちゃうので、常に気を張った状態で。そのときばかりは世間話をする余裕もなく、お互い一点を見つめながら頭の中でシミュレーションしていました。

石原 私はアクションシーンの撮影現場にはいなかったので、普通にお客さんとして映像で観ました。ずっとバチバチし合っているんじゃなくて、相手に対して無門がひょうひょうとしてるから和めるんです。あと冒頭の(満島真之介演じる)次郎兵衛との対決は、無門の残酷さが描かれていて、この映画の色を表すシーンになっていましたね。でも描き方によってはグロテスクになってしまうところを中村監督がポップに仕上げてくださったので、女性も十分観やすい作品だと思います。それでいてゲーム感覚なエンタメで終わらず、最後はしっかり伝わるものがありますし。

──今回、大野さんご自身で動きを付けたシーンもあると聞いたのですが?

大野 無門が鎧を脱いで戦う場面ですね。監督がいきなり「ちょっと動きを考えてくれ」って振るから、えー!?って。「普通によけるんじゃ面白くないからいろいろやってほしい」と言われたので、じゃあちょっと30分待ってくださいと。

石原 へー、すごい!! もう1回観てみます(笑)。

──ありがとうございます。それにしても、時代劇はあまり夏に撮影しないそうですね。暑くて相当苦労されたのでは?

大野 クランクインしてすぐお国と一緒のシーンの撮影があって、もうそのときから大変でしたよ。暑さが。ずっと汗かいていました。セットの小屋の中で日陰を探しながら、こっちのほうが涼しいかな?とちょこちょこ移動したり(笑)。

石原 私もずっと扇風機を探してさまよっていました(笑)。スッとしている役だから、汗をかきたくなかったので。

──山奥での撮影で、どのようにリフレッシュしていたんですか?

大野 空き時間にずっとしゃべっていたよね。僕たち地元が一緒なんですよ。

石原 そうそう! 同じ町っていうレベルじゃないくらいの近さ(笑)。

大野 「あそこ行ったことある?」「行ってた!」とかね。どんどん盛り上がっちゃって。

石原 習い事の教室とか、よく行っていたお店が同じだったり。あとバス停の話もしましたよね。

大野 「さとみちゃんそこにいたんだ、すれ違っていたかもね?」みたいな(笑)。近いのはなんとなく知っていたけど、ここまで同じだとは思わなかった。

石原 爆笑しながら話していましたよね!