「仕事とは何ぞや?」

6月6日は期せずして仕事観に向き合う一日になりました。「命をつむぐ映画祭」というドキュメンタリー映画3本を一気に鑑賞するイベントに参加したからです。

午前は鈴木七沖監督の映画「何のために」を観賞。手元には榎本英剛さん著「本当の仕事」をかばんに入れて、移動や昼休みに読んでいました。




午後はさらに映画二本。
岩崎靖子監督「日本一幸せな従業員をつくる!ホテルアソシア名古屋ターミナルの挑戦」
榛葉健監督「with・・・若き女性美術作家の生涯」を鑑賞しました。

まず「何のために」。中村文昭という人がいます。三重県伊勢市で育ち、高校卒業後、単身上京。商売で成功して現在は全国で講演活動(年間300回以上行なう年も)を行なっている人物です。映画はこの中村さんに影響を受けた5人の人物のエピソードが中心です。

映画の中心的なメッセージはタイトルの通り「何のために」。中村さんが上京後、ある実業家と出会ったときに問われたそうです。「東京に何しに来たの?早くお金をもうけたいのか。それで何でお金が欲しいの?」と。それで、服、靴、車、時計など良いモノが欲しいと答えた中村さんに、その実業家はこう答えたそうです。「全部、食べるためのものなんやね」と。じゃあなたはどうなのか?と問い返すと、そこから1時間、あれがしたい、これがしたいと沢山の話しが出たそうですが、そこで中村さんは衝撃を受けたそうです。なぜならその内容は全て「人(他者)のため」だったからです。

この映画で問うているのは、生きる目的なのですね。何のために生きるのか?何のために働くの?映画は、自分の内側に問いかけを起こさせるものでした。ちなみにこれは戯れ言ですが、5人の一人、氷室優さんという建設会社の社長、36歳だとのことですが、とてもその年齢に見えない貫禄十分のおっさんです(笑)年下かよ!って内心ツッコミまくりでした^^

午前中は会場が空いていて、ゆったりと気持ち良く鑑賞できました。

次に「日本一幸せな従業員をつくる!~ホテルアソシア名古屋ターミナルの挑戦~」ですが、この映画は良いですねぇ!めっちゃ感動します。ずっと涙腺うるうるしっぱなしでした。私だけでなく、周りの女性達もハンカチで目頭をずっと押さえておられました。この映画はいい。良すぎて、じゃどういいのか?という分析ができません(苦笑)

映画の中で、2回、登場人物達が拍手するシーンがあります。1回目は耳の聞こえない従業員がスピートするシーン。この従業員さんは、ホテルのカフェレストランでウェイトレスをしています。耳が聞こえない状態でウェイトレスをするのは、それこそハンディキャップがあり苦労もされていましたが、他の従業員のカバーや指導もあって、無事に6年間務められました。その感謝の気持ちをスピーチしているシーンです。スピーチの後は、聞いている人達が拍手するのですが、映画の観客である私も拍手したくなりましてねぇ。

そういうシーンがもう1回ありました。この映画の主人公である柴田秋雄さんがスピーチする場面です。名古屋駅前にあったホテルアソシア名古屋ターミナルを、7期連続の赤字から7期連続の黒字に転換させた立役者であるホテル総支配人です。カリスマホテル経営者といったところですが、経歴が異色なのですよ。国鉄に就職して、そして鉄道労働組合の専従役員になった方なのですよ。で、ずっと組合の役員をやられて、52歳で、名古屋ターミナルホテルの販売促進部次長になったのがホテルマンとしてのスタート。このホテル、JR(旧・国鉄)の系列なのですね。

そんな柴田さんが総支配人(GM:ジーエムと従業員からは呼ばれている)になって、従業員と一緒になってつくった経営コンセプトが「おれたち日本一幸せな従業員になろう!」

柴田さんは映画の冒頭で、撮影に訪れたスタッフに言います。「この子達が楽しくて、朝出勤するのが楽しいっていう風に出てくるようになればいいの、僕は。」お客さんは浮気性だから、と(笑)

こうした型破りな経営方針で黒字化したホテルですが、個人的に最も驚いたのは、労働組合側から「給料を10%下げれば黒字化できる」と提案があったこと。労使交渉は、給料を下げたく無い経営側と、10%下げて黒字化すべしとする組合側との対立という、前代未聞の事態です。で、黒字化が実現したわけですね。柴田さんが労働組合のプロだった事も関係していると思われます。

ところが7期連続黒字なのに、ホテルは駅前再開発のために消滅してしまうのですね。JR東海系列だからJR東海がそう決めてしまえばどうにもならないのでしょうけど、「そんなのありなの???」と思いましたねぇ。だって正社員も契約社員もバイトも勿論経営陣も、従業員全員クビですから。とはいえ放ったらかしというわけでも無かったようで、柴田GMは正社員だけでなく、契約社員や学生以外の生活費を稼ぐ事情のあるバイトまで含めて再就職に奔走されたようです。

そしてホテル最後の日。柴田GMのスピーチがあります。そこで従業員が拍手。私も拍手したくしょうがなかったです。柴田さんは今でもご活躍のようで、全国で講演活動をされているようです。書籍も出版されていますよ。

これも戯れ言ですが、柴田さんは私と共同研究した大学の先生に似ています。仮にK先生としますと、K先生を弾けさせたような人ですね。顔立ちや声が似ていますが、K先生のようなインテリでは無く、人と裸でぶつかり合うアナログな現場力の高い人です。キャラクターは違えど、どこか魂レベルでも似たものを感じました。この年齢になると、ふと「あ、この人とあの人似ている。顔や声もそうだけど、性格も含めて存在が似ている。。。」と感じることがしばしばあります。

最後に「with・・・若き女性美術作家の生涯」。紹介が難しい映画です。主人公の佐野由美さんは私と同じ年に神戸市長田区に生まれ、芸大に進学。阪神淡路大震災で最も被害の大きかった地域のひとつである長田ですが、そこで被災地のボランティアをしながら絵を描き、そして大学卒業後にネパールに1年間旅立ち、現地の小学校でボランティア教師をしながら絵を描き、それぞれ1冊の本になっています。

映画は、この阪神淡路大震災、およびネパールでの1年を、彼女はどう生きたのか、描いたのかが描かれています。大学は首席卒業だそうですが、確かに才能の息づかいを感じる人でした。

こんな事をうら若き女性(映像は二十歳から二十三歳)に言うのも失礼ですが、顔立ちはちょっと不細工です(失礼、失礼)。ですが、誰にでも愛される人だなと。たまにこういう魂の型を持った女性がいます。自ら進んですっごい苦労をしていくのですが、それは純粋な意欲から出ているもので、はい、男性にもめっちゃもてます。老若男女子ども、全ての人達にもてると言ってもいいです。

また余談ですが、以前某帝国データバンク(某じゃねーし!)に勤務する人とこんなエピソードがありました。

「リュウさん!オレ、ある女性にプロポーズしました!会って次の日にです!断られましたけどね」
「ほう!それはすごいね。一体どんな人?」
「リュウさんに貸してもらった本のSさんような女性です!顔は不美人だけど、人の輪の中心になるような人です」
「あー、Sさんね(社会起業家。今もう42歳か!)。そうかー、それは滅多に出会える人じゃないねぇ」
「そうなんですよ!」

Sさんと同じ魂の型を佐野さんから感じました。すごい素敵な女性、貴重な人物なので映画になったのは分かるし、2000年に公開されて以来、国内外で数々の賞を受賞しています。ただ・・・うーん、この映画監督、私嫌いです。決して後味の良い映画ではありません。だからオススメはしません。ほんと、ご縁があれば見てください。

最後に、何のために仕事をするの?という自分の答え。そもそも仕事って何?も含めてどう思ったのか。それは、赤々とわき上がる「命の燃焼」だと私は感じました。