スタグフレーションという経済用語があります。それは景気が悪いのに物価が上昇するという現象を指します。景気が悪いとは、給与が下がる(上がらない)、失業率が増える(下がらない)という意味です。

最近アナリストの間で、「悪い円安」という言葉が出回り始め、日本に住む人は資産を少し海外に移した方がいいねというアドバイスがなされ出しています。この悪い円安が起こっている状態と、スタグフレーションは、同じと思ってもらってよいでしょう。

先日、長野で大きな地震がありました。こうした自然災害に備える、という意識は、かなり多くの人に浸透していますが、金融災害とも言うべき事態に備える意識は、まだまだ広がっていないのではないでしょうか。もちろん自然災害と異なり、家が破壊され命を取られるわけではありません。せいぜい持っているお金が紙切れになって、失業するだけです。

通貨危機の懸念を持つ専門家も、実は静かに増え出しています。通貨危機とは、通貨の価値が大幅に減ることで、例えば隣国の韓国でもありました。この時、韓国がIMFの管理下に一時的に入ったのは記憶に新しいです。

円が通貨危機におちいるというのは、これまでの常識では考えにくい状態なのですが、今、常識がひっくり返ってきてまして、可能性として考慮できるようになってきました。もし今の日本の株式市場の半分以上を占める外国人投資家がなだれを打って株や円を売却し出したら、その時は通貨危機になります。

通貨価値の暴落は、日銀がいくら無尽蔵にお金を使っても防げないのが難しいところです。防衛策は唯一、金利を上げることなのですが、これをやると今度は日本政府の借金問題が爆発してしまうので、どうにもならない状況なのです。

大地震も、地震多発国であれば、いつか起こるかもしれないと可能性が考慮されます。円の通貨危機も、ひょっとしたら・・・という想定シナリオに組み込み出されているのは、現実の動きとしてあります。

勿論、心の中で思っていた人は以前から一定数いたと思いますが、今は金融機関のレポートで、公然と指摘され出しています。嵐が来るかもしれないよ、と。