私は経済学部出身ということもあって、たまに経済統計を眺めることもあるのですが、ここ2~3年で日本経済は随分と転換をしているのですよね。


戦後日本といえばモノづくりの国で、海外から原材料を仕入れて、それを加工して良いモノをつくり、海外に輸出することで繁栄してきたというのは常識だと思います。貿易立国であり、モノづくり大国であり、すなわち加工貿易で繁栄した国だったわけです。


ところが2008年のリーマンショック、そして2011年の震災を機に、貿易赤字の国になりました。原発停止により、代わりのエネルギーとして年間3兆円程度の燃料輸入が増えていることはよく知られていますが、どうもそれだけが原因では無いようです。


ところが貿易収支は赤字だけれども、所得収支なるものは14兆円ほど黒字で、こいつが近年かなり黒字を伸ばしたのですね。所得収支というのは、海外への直接投資や証券投資です。日本というのは世界一の金持ち国でして、21年連続対外純資産世界最大なんですね。その豊富な資産を生かして、投資で繁栄する国になったというわけです。


戦後の日本は資産なんてありませんから、汗水たらして一生けん命働いてきたわけですが、そのうち資産も増えてきて、賃金も高くなりました。某自動車工場を調査した時もしみじみ思いましたが、賃金が日本より数倍安い外国とモノづくりで勝負するのは非常に厳しいです。


ですから現在の日本は、もうけて蓄積してきた資産を活用する、個人で言えば、富裕層のようなビジネスをする経済構造になったようです。


加工貿易立国から投資立国へ。経済の発展にともなう自然な変化ですが、加工貿易で食べていくのと投資で食べていくのは、その人材像に大いに違いがあります。加工貿易で食べる場合、基本は日本国内の工場でモノを作ることです。が、海外投資で食べていくとなると、外国でビジネスをおこして、外国でもうけていく必要があるわけですね。華僑のごとく、外国に根をはってどんどん入りこんでいくスタイルです。


総合商社が近年絶好調なのは、日本が投資立国化したことと関係していると思われます。商社マンって、外国にどっぷりつかっていますからね。今後の日本の生きる道を示している、日本特有のビジネススタイルだと感じます。


語学でいえば、英語力が必要というよりは、多言語対応・多地域対応していくことでしょうね。外国語では英語ばかりがクローズアップされますが、それはちょっと違うかなと。


まぁ日本が「でかいシンガポール」のような国になれるのかどうか、わからないですけどね。わからないですけど、そうした国に変換していかなければいけない状況にあることが、リーマンショックそして3.11によって、数値としてあらわになってきているということです。


パナソニック、SONY、シャープという優れたモノづくり企業がそろってピンチなのは偶然ではありません。同じ家電系モノづくり企業でも、日立や東芝、三菱電機は、発電所や鉄道などの社会インフラ系に力点を置くようになったので、ピンチにおちっていないということです。社会インフラの整備は、アジア諸国など海外の非先進国では重要な分野ですからねぇ。つまり日立や東芝などは、投資立国日本に対応できている企業ということです。